戌年にあらためて誓う 1頭でも多くの保護犬に幸せな未来を
ピースワンコ・ジャパンが本拠を置く広島県神石高原町は、例年よりやや寒い年の瀬を迎えている。前年に続き1000頭以上の犬を受け入れた2017年は、ピースワンコにとって、登山でいえば上り坂にあえぎながら、歯を食いしばって「全国での殺処分ゼロ」という頂上へ歩を進める日々だった。この一年の出来事を簡単に振り返ってみたい。
目に見えて前進したのは、志を同じくする全国の保護団体との連携だ。2月に公募を始めた「殺処分ゼロ・チャレンジ推進助成」に、北海道から沖縄まで30以上の団体から応募があり、うち17団体とパートナーシップを組むことができた。引きこもりがちな若者を保護犬のトレーニングに参加させ、2つの課題を同時に解決しようという意欲的な取り組みあり、猫を保護する場所を整備して適正飼育の啓発をする地道な活動あり。それぞれの地域や団体の実情に応じたユニークな事業が進んでいる。
このほかに熊本地震の被災地などでも、被災犬猫の保護・譲渡活動に取り組む4つの団体と事業協力を進めた。また、11月には、SEKAI NO OWARIとの「ブレーメン」プロジェクトで、全国の保護団体に呼び掛けて幕張メッセで大譲渡会を開いた。39団体、340頭が参加し、1日で128件のトライアルが決まった。ピースワンコがプラットフォーム(土台)になり、殺処分ゼロの全国展開に向けて力を結集するきっかけが作れたことは、大きな成果だと思う。
目の前の課題である「広島県の犬の殺処分ゼロ」を継続するため、シェルターや譲渡の拠点の拡大にも努めた。神石高原町内などに約800頭分の犬舎が新たに完成し、となりの福山市には譲渡センターを開設。年明けには東京都あきる野市や、関西地方では初めて奈良県生駒市にも、相次いで譲渡センターをオープンさせる予定で準備を進めている。
それでも今年は保護頭数の増加ペースが予想を上回り、犬舎の増設が後手に回って犬たちに窮屈な思いをさせたことは反省点だ。来年は用地の確保など早め早めに手を打ち、余裕をもって犬舎を準備できるように努めなければならない。
農地を野生動物の被害から守る「里守り犬」、糖尿病患者に血糖値の異状を知らせる「低血糖アラート犬」を育成するプロジェクトもスタートした。少々時間がかかるだろうが、災害救助犬の夢之丞やセラピー犬たちとともに、人と犬との助け合いの大切さを象徴する存在になってほしい。
ピースワンコ事業を継続的に支えてくださるサポーターの数は、この1年で倍増した。ふるさと納税を活用した寄付も堅調だ。物資の寄贈や子犬の預かりボランティアなど、お金以外にもさまざまな形で多くの方に支えていただいており、本当に感謝にたえない。注目が高まる一方で中傷めいた批判を受けることもあったが、プロジェクトの屋台骨が揺るがなかったのは支援者のみなさんのおかげだ。
12月には、事業にかける私たちの思いや、日々の現場での活動をつづった本「ピースワンコ物語」が出版された。今後も積極的な情報発信によって理解者を広げ、なにより保護犬を家庭に迎えるという選択肢を一人でも多くの人に知ってもらえるよう努力したいと思う。
ピースワンコのシェルターでは、前年の2倍以上の保護犬たちが年を越す。戌年の2018年、この子たちや新たに迎える保護犬に1頭でも多く里親さんとの幸せな未来をプレゼントできるよう、スタッフ一同さらに粉骨砕身したい。
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