動物の命や権利を大切にする社会は、きっと人にもあたたかい

(写真は本文と関係ありません)
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 ピースワンコ・ジャパンの本拠地がある広島県神石高原町に、「犬塚物語」という伝説が残っている。

 村を荒らす狸の化け物に長く苦しめられていた村人たちが、助けを求めて出雲の賢人を訪ねる。しかし、賢人は旅に出て留守。かわりに借りて帰ったのが、飼われていた「権の守」という大きな犬だった。

 ある日、村人と権の守は力を合わせ、化け狸の退治に乗り出す。勇猛果敢に噛みついていった権の守の活躍で、ようやく狸を仕留めたが、深手を負った犬も看病の甲斐なく息絶えてしまう。村人は嘆き悲しみ、権の守を手厚く葬った。

 私は、地元の人が作った巨大な紙芝居でこの話を知った。今も地域には、権の守の墓を建てた「犬塚」、訓練をした「犬の馬場」などの地名が残り、供養祭も行われている。人と犬が大昔から互いに助け合い、支え合って暮らしてきたことを、この伝説は今に語り継ぐ。

 そんな大切なパートナーであるはずの犬や猫が、人間の身勝手によって捨てられ、命を奪われている。そのことに対する「義憤」がピースワンコ事業の出発点だった。残酷な殺処分の現実を伝え、ドイツや北欧を手本に、助かる命をすべて救うことに全力を注いでいる。しかし、道のりは決して楽なものではない。

 この連載を始めた3年前、私たちの施設にいた保護犬の数は約200頭で、飼育スタッフも15人ほどしかいなかった。譲渡センターは2カ所。すべてが今と比べると小規模で、まだどことなくのんびりしていた。

 2016年4月、広島県の殺処分対象の犬をすべて引き取るようになってから、状況は様変わりした。毎週のように20-30頭が県の動物愛護センターなどから入ってきて、新しく建設した犬舎もすぐに埋まっていった。県内の犬の殺処分数は、2015年度には792頭と4年前の三分の一ほどにまで減っていたが、翌16年度に私たちが保護したのは1300頭以上。17年度はさらに大幅に増え、1800頭に迫る勢いである。今も犬舎の増築を続け、なんとか引き取りに対応している。

「殺処分ワースト県」の汚名を返上しようと奮闘してきたが、この間、社会は果たしてどう変わったのか。広島県の犬の「殺処分ゼロ」はもうすぐ3年目に入るが、県民の意識も、行政の本気度も、残念ながら理想にはほど遠いと言わざるを得ない。

 インド独立の指導者マハトマ・ガンジーは、動物と人間社会の関係について次のような言葉を残した。「国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で分かる」

 私の経験でも、動物の命や権利を大切にする社会は、人に対しても思いやりがあってやさしいと感じる。ひるがえって、広島県の現状を、また、犬猫の殺処分がまだ約5万6000頭(2016年度)にのぼる日本の現状を、ガンジーが見たらどう評するだろうか。

 この春、ピースワンコではまた新しい犬舎や譲渡センターができ、約20人の新人スタッフが加わる。困難を乗り越え、恥ずかしくない国になったと胸を張れる日まで、彼らと一緒に頑張り続けようと思う。

「ピースワンコ日記」はこれが最終回。長い間お読みいただき、ありがとうございました。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この特集について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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