運動量が多く負担かかる大型犬 「股関節形成不全」にも要注意

(写真は本文とは関係ありません)
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  • :大型犬を飼うのが夢です。
    :山根 よくわかります。大型犬はいいですよ。私も今年7歳になるセントバーナードを飼っていますが、おっとりした性格で、表情が豊かです。

     ただ、飼育はもちろん、それなりに大変です。まずは運動量が、小型犬と比べて圧倒的に多く必要です。屋内で飼う場合にはそれなりの広さがなければ、ストレスがたまってしまいます。そして朝晩の散歩は、健康体であれば1回あたり30分以上はしたほうがいいと思います。制御ができなければ大きな事故につながる可能性があります。最低限のしつけは必ずするようにしましょう。
  • :医療費がかさむとも聞きました。
    :山根 確かに、体重に応じて必要量が変わってくるフィラリア予防薬などは、小型犬の3、4倍はかかります。また手術などが必要になった時には、その費用も当然、大型犬のほうが高くなります。

     大型犬の飼い主が何より考えておかないといけないのは、股関節形成不全です。ジャーマン・シェパードやゴールデンレトリバーなどの大型犬で特によくみられる病気です。遺伝的要素があり、国によっては股関節形成不全と診断された場合、その犬の繁殖には厳しい制限がある。日本ではそういう犬も輸入してきた歴史があり、その後も繁殖させてきた。そのため少なくない大型犬がこの病気に苦しんでいます。
  • :どんな病気でしょうか?
    :山根 股関節の発育がうまくいかず、成長するにしたがって股関節の変形や炎症が進みます。腰をふるように歩いたり、坂道の途中で座り込んだり、運動するのを嫌がったりするようになり、症状が進むと起き上がるのが困難になることもあります。痛みも伴います。
  • :もし歩けなくなったら、大型犬だとなおさら困りますね。
    :山根 股関節形成不全であるかどうかにかかわらず、犬も年をとれば介護が必要になる場合もあります。小型犬であれば抱きかかえて外に連れて行ったり、寝たきりになっても容易に寝返りをさせたりできますが、大型犬だとそうはいきません。寝返りをさせるだけでも一苦労です。大型犬はいいものですが、飼う場合には、それなりの覚悟が必要だということです。

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年6月発行)掲載)


イヌ・ネコ ペットのためのQ&A

監修: 山根義久
編著: 公益財団法人動物臨床医学研究所
発行: パイ インターナショナル

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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