「花の写真撮るなら僕も入ろうか」(小林写函撮影)
「花の写真撮るなら僕も入ろうか」(小林写函撮影)

愛猫「はち」の“同居猫”探しをスタート 条件をつくり、保護猫カフェを訪れた

「はち」を家に迎えて2年が過ぎた春、私は2匹目の猫を探すことにした。

 はちは猫免疫不全ウイルス感染症、通称「猫エイズ」のキャリアだ。かかりつけの動物病院の院長先生を含めて2名の獣医師からは「新たな猫の存在は、はちにとって大きなストレスになり、発症のリスクがないとも限らないのですすめられない」と言われた。

(末尾に写真特集があります)

2匹目の条件をつくった

 それでも決行することにしたのは、複数の猫と暮らしてみたいという欲求をおさえられなかったからだ。それに、猫エイズキャリアの猫同士が穏やかに暮らしている様子を、知り合いの家で見ていたこともあった。

 確かに、先住猫と新入り猫が、グルーミングし合ったり、くっついて眠るほど親密になったりする確率は、そう高くはないらしい。特に先住猫が成猫の場合は、難しいようだ。

 はちは推定8歳でシニアの入口だ。それでも、くったくがなく穏やかな性格のはちなら、新しい猫を受け入れてくれるのでは、という気がした。べったり仲良くならなくても、そこそこ気の合う「同居猫」がいれば気が紛れ、退屈せずに過ごせるのではという期待もあった。

「この家にさ、他の猫とか来ないよね」(小林写函撮影)

 とはいえ、はちの同居猫を選びは、慎重にならなければいけない。

 探すにあたり、私は3つ条件をつくった。

 1つめは、はちと同じように「猫エイズキャリア猫」であること。そうすれば、感染の心配がない。

 2つめは、年齢が近いこと。年が近いほうが行動や生活リズムが合いやすいと聞いたからだ。

 3つめ、これはできれば、程度の条件だが、メスであること。同性同士だとライバル意識が強まって相容れないことが多く、異性のほうが比較的いがみあうことが少ないらしい。

さっそく保護猫カフェを訪れた

 探す方法は、保護猫団体からの譲渡を考えることにした。

 先代猫「ぽんた」も、はちも、それぞれ近所で野良生活を送っているところを保護した。だが今回は条件もあるし、はちとの相性を探る必要がある。素性や性格がある程度わかっている猫がいい。

 可能ならば自宅近くの保護猫団体から引き取りたいと思ったので、インターネットで検索をした。すると自宅から車で10分程度の場所に、一軒家を改装した保護猫カフェがあることを知った。

 保護猫カフェは、一般的な猫カフェ同様、入店料を支払って猫とたわむれることができる店だ。保護猫を受け入れ、譲渡先を募集している点だけが異なる。

 猫カフェというものに足を踏み入れたことがなかったので、興味があった。新型コロナウイルス感染予防対策のため予約が必須とのことで、さっそく電話で予約をとり、次の日に足を運んだ。

「ひとりは平和でいいよ」(小林写函撮影)

 平日の昼間で、お客は私1人だった。受付の若いスタッフに入店料を払い、セルフサービスのドリンクを手に、猫たちが暮らしている日当たりのよい8畳程度の部屋に入る。床には猫ベッドや爪研ぎが点在し、8匹程度の子猫が走り回っていた。

 子猫たちを相手に、スタッフに渡されたじゃらし棒を振る。

 子猫と遊ぶのは人生初の経験だ。こんなにも活発なのかと驚く。棒を振っても振っても飽きることがなく、軽やかな動きで食いついてくる。こちらが疲れて棒を脇に置くと、棒の先にぶら下がっているおもちゃを蹴飛ばしたり、噛みついたりして勝手に遊んでいる。

「家族募集中」というボードに、猫たちの写真とプロフィールが書かれていた。しかし、猫エイズキャリア猫はいないようだった。いずれにせよ、生後数カ月の子猫ばかりで、はちの同居猫候補としては歳が離れてすぎている。

4歳の茶トラの男の子、心は動くも…

 子猫と遊ぶのに飽きた頃、外出中だったカフェのオーナーの女性が戻ってきた。

「2匹目の猫を探していて、猫エイズキャリア猫が希望です」と話す。すると「ちょうど4歳の茶トラの男の子がいるんですよ、人懐こくで甘えん坊で、性格も穏やかで」とのこと。

 だが、よく話を聞いてみると、すでに猫エイズを発症しているらしい。

 通院や自宅でのケアが必須であり、医療費はこの保護猫カフェでも一部負担し、さまざまなサポートもしてくれるという。

「野にいるときは逃げ足の速さも役立ったんだ」(小林写函撮影)

「普段は別の部屋に隔離しているので、興味がおありなら、別の日に会えるようにします」と言われ、写真を見せてもらった。きれいなトラ模様の小柄な猫で、はちより表情が幼く、愛くるしい顔をしている。

 興味がないわけではなかった。慢性腎臓病を患ったぽんたの介護と看取りをした経験から、病気の猫と聞くと人ごととは思えず、心が動く。

 だが今、病気の猫を引き取ったら、はちの世話がおろそかになってしまう。なんための同居猫なのかがわからなくなるし、まず、ツレアイが首を縦に振らないだろう。

 会うと情が湧きそうだったので「うちでは難しいかも……すみません」と断った。

 するとオーナーは、同じ区内に最近オープンした、保護猫シェルター併設のカフェを教えくれた。ここはカフェスペースと保護猫が暮らすシェルターが分かれており、カフェとして普通に飲食が楽しめるそうだ。興味があればシェルター内に入って猫たちの様子を見て、気に入った猫がいたら、譲渡の申込みができる仕組みだという。

 早速2日後、そのカフェを訪れた。

(次回は11月3日公開予定です)

【前の回】「はち」は猫エイズのキャリア猫 獣医師の反応は渋く否定的、それでも2匹目を考えた

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。
著書にsippo人気連載「猫はニャーとは鳴かない」を改題・加筆修正して一冊にまとめた『ハチワレ猫ぽんたと過ごした1114日』(河出書房新社)がある。

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この連載について
続・猫はニャーとは鳴かない
2018年から2年にわたり掲載された連載「猫はニャーとは鳴かない」の続編です。人生で初めて一緒に暮らした猫「ぽんた」を見送った著者は、その2カ月後に野良猫を保護し、家族に迎えます。再び始まった猫との日々をつづります。
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