庭に現れた野良猫の親子 保護のため3匹同時捕獲を計画 ついに来た決行の日

犬と猫
最近の先住3匹さま。みんな元気

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元野良猫の「とも」「もえ」と暮らしています。今回は、自宅の庭に姿を現した子猫と母猫についてのお話、第3回です。

立ちはだかる3匹同時捕獲の難しさ

 前回からの続きです。

 今回の一番の難問は相手が3匹いるということ。1匹ならそんなに苦労はないのですが、3匹同時確保はかなり難易度が高いのです。

 例えば親を捕り逃がせば、その子はもうここには戻らず、またすぐに妊娠する可能性が高いといいます。また、逆に親を先に捕らえてしまうと子が散り散りになってもう見つけられないこともある。複数人で周りを囲めればいいのでしょうが、こちらは未経験の頼りないおじさんひとりです……。さてどうしたものやら。

 経験豊富な先輩諸氏に聞いても意見は分かれました。

「まずは親を!」
「いやいや、まずは子猫を」
「3匹同時に」
「3匹同時はリスクが高すぎて失敗したらもう2度と無理になるよ」

 ど、どないしたらええんや……。

捕獲器に慣らすところからスタート

 とーさんはこう見えてとても用心深くて、えいや!っと思い立ったらすぐ動くようでいて、頭の中でぐるぐるぐるぐるいろいろシミュレーションを重ねて、結局動かないタイプ(結局、動かんのかい!)。

 いろんなパターンを想定してみましたが、3匹同時捕獲は相当にハードルが高そうです。

 でも、うじうじと悩んでいても時間が過ぎていくばかり。夏が近づき、子猫たちが大きくなるとますます難易度は高まるばかりです。

 そこで計画を練りました。

  1. 捕獲器の中にごはんを置いて、そこで3匹一緒に安心して食べることに慣れさせる
  2. 見えないところから遠隔操作で捕獲器の扉を閉める
  3. そのまま動物病院へ直行する

 まずは捕獲器の中にうまうまのごはんを置くことからはじめました。そのとき鈴などをチリンと鳴らして、ごはんを持ってきましたよーとさりげなく伝えるようにします。するとどうでしょう、猫の親子はあっけないくらい捕獲器のごはんをおいしそうに食べるではありませんか。そして、なんならジャングルジムのようによじ登って、捕獲器で子猫たちが遊んでくれているではないですか!!これはいけるかもしれない……!とーさんは確信しました。

猫のTNR
捕獲器をジャングルジムのようにして遊ぶ子猫

 捕獲器の遠隔操作仕様は、いろいろと実験を重ね、捕獲器の様子をセットしたトレイルカメラで確認しながら、室内から操作できるようにカスタマイズ(すごい!)。

 そして病院については今回ちょうど、作家の山田あかねさんと女優の石田ゆり子さんが立ち上げた「ハナコプロジェクト」の仕組みを利用させてもらうことに。登録病院に相談し、捕獲後の段取りを相談させてもらいました。

無邪気な猫たちを見て揺れる思い

 それからは来る日も来る日もとーさんは捕獲器にうまうまのごはんを置いて、鈴をちりん。置いて、ちりん。置いて、ちりん。

 時間が経つにつれ、早朝ひと気のない時間にふらりと現れる猫たちの無防備で、無邪気にごはんをむさぼる幸せそうな姿をカメラで見ると、なんだか自分がこれからしようとしていることが正しいのかどうかさえも不確かになってきます。

 保護した後のこともまだなにも決まっていません。

 本当は外でこうやって自由にしていたいよな、君たち……と心は揺れます。

黒猫
無人カメラにむかって「シャーー!」。いっちょまえ

 一番、気持ちを後ずさりさせたのはやはり保護後のことでした。うちにはすでに犬1匹と猫2匹。来春には娘も家を出ていくことが決まっていますから、ひとりものの中年おじさんによる多頭飼いはリスクも大きく、先住犬猫との相性も心配です。新しい飼い主を探すにしても子猫2匹はともかく親猫はどうするのか?避妊手術後リリースするのか?根気強く人に慣れさせて新たな飼い主を探すのか。問題が山積みです。

野良猫の親子
まったく警戒心がないところに逆に心がちくりと痛んでしまう

 心が揺れる中、時間だけが過ぎていきました。猫親子はすっかり捕獲器に慣れてくれたものの、僕の仕事の都合や、天候、病院の先生の都合などいろいろな条件が合わないと保護できません。いざ今日こそは!という日に限ってまったく姿を見せなくなることもしばしばです。

 梅雨が本格的になり、そのうち子猫たちの巣立ちの日も近づいてくる焦り。

ついに来た捕獲の日

 しかしながら、いつまでも理由をつけて停滞させていても仕方ありません。保護猫活動の経験豊富な友人たちから「こばやしさん、しっかりして!!」と叱咤激励を受けつつ、腹を決めました。

 後のことは後で考えればいいか(後回しかい!!)。

 そしてある早朝。無人カメラに3匹の姿が確認されました。素早く焼カツオを設置した捕獲器を茂みに。大きく深呼吸したとーさんはできるだけすみやかにすべてを終え、猫たちを安心させたい、ただそれだけを考えました。

 すぐに子猫たちが焼きカツオに飛びつきました。その後ゆっくりと用心深く母猫が。

 息をのんで猫たちの様子を見守っている間、本当に心臓が飛び出しそうなくらいどきどきしました。まさにちむどんどん。

 今だ!!!っと捕獲器の扉を操作。

 パンっ!と扉が閉まると、一瞬何が起きたのかわからない猫たち。でも、すぐにまたカツオを食べ始めました(ここでまだ食べるんかい!)。

 急いで茂みに分入り布をかけて任務完了!!よくやったとーさん(自分を褒めてあげたい)。なお、3匹同時確保のための自作手動仕掛けは念のため悪用を防ぐために秘密です。

捕獲時の様子

 ミッションコンプリート!!

 次回へとさらに続きます。

(次回は10月15日公開予定です)

【前の回】姿を消すも再び現れた母猫と子猫 保護に向けて「ごはんでメロメロ」作戦スタート!

小林 孝延
福井県出身。編集者。月刊誌『天然生活』創刊編集長、『ESSE』編集長などを歴任。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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