可愛いけれどどのくらい大きくなるの? 野犬の子犬を預かり直面した問題
インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬2匹と生活をともにしています。第19回では、預かることが始まった野犬の子犬「ドー」と「シャー」のお話をお伝えしていきます。
野犬と買ってきた犬の違いって?
野犬の子犬といっても子犬は子犬です。野犬は飼い主がいない犬のことで、今、日本にはオオカミのような本当の野生の犬はほとんどいません。なぜなら、野犬のほとんどは人が捨てた犬だったり、迷い犬になって、その後に野生化しているものばかりだからです。もちろんその2世、3世もいると思いますが、元々は飼い犬だったことがほとんどです。
警戒心の強い野犬の母犬と一緒に育った成犬は、母犬から警戒することを教わって育てられるので、警戒心が強くなります。何もわからない無邪気な時期に母犬から離すと、無邪気なままに育てることができます。買ってきた子犬となんら変わらないのです。
うちに来た、ドーとシャーも母犬とすぐに離された子犬たちでした。警戒心が強すぎて人なれしないだろうと、かわいそうなことに母犬はすぐに殺処分されてしまいましたが、8匹の子犬たちはあちらこちらでもらわれていったそうです。そのうちの2匹がドーとシャーでした。
大きくなる犬はもらわれにくい?
ドーとシャーの写真をインスタグラムに載せたら、たちまち友人たちが「見たい」と言ってやってきました。犬を飼いたい人、ただ見たいだけの人、可愛がりたいだけの人など。
犬を飼いたい人のほとんどは、子犬から飼わないと慣れないと思い込んでいる人ばかりでした。本当は、子犬じゃなくても、新しい名前をつけても、新しい場所に行っても大丈夫なんです。順応性の高い子はすぐに慣れるし、臆病な子でもその家やその家族に少しずつ慣れていきます。
当然うちにきた子犬たちは、人が大好きな「ぐにゃぐにゃ」な子犬でした(「ぐにゃぐにゃ」というのは、人なれしている動物たちのことで、人が大好きで抱っこすればたちまちぐにゃぐにゃしてしまう動物たちのことを言っています)。人に会っても元気いっぱいで、テラスを走り回っていました。
「可愛いけれど、一体どのくらいの大きさになるの?」という質問が、やはり毎回ありました。
「手足も大きいので10キロは超えると言われてるよ」と答えると、みんな口をそろえて「そんな大きな犬を飼えるのかな?」と心配していました。
子犬の頃の社会化不足が大変なことに
毎日、ヨタヨタの老犬チョコの散歩に行くのが精いっぱいということもあり、子犬たちを抱っこまでして外に連れ出して社会化させていませんでした。
社会化というのは、まだワクチン接種をしていない頃には外を歩かせない方がいいけれど、抱っこなどして人や犬や環境に慣れさせることを言います。幼少期にそれをしないと、外に出した時に音に驚いたり、人に慣れなかったり、他犬と交流ができなくなってしまうことがあるという、子犬の頃のトレーニングのひとつです。「生後半年間で100匹と100人に会うといい」と言われています。
私の家は1階が事務所、2階が自宅という兼用の家です。犬は老犬のチョコが1階に1匹、猫はギルとマロンが2階に2匹。スタッフは4人が毎日事務所に通っていました。お客さまは仕事関係から休日のプライベートの友人たちを含めても、かなり出入りが多い方だと思っていました。だから、それで社会化になると思っていたのです。
ところがある日から、ドーの様子がおかしくなってしまいました。同じケージに入れていたドーとシャーが戯れて遊んでいるように見えるのですが、ドーがシャーを怖がっているように見えたのです。シャーは体が少し大きく元気で暴れん坊で、ドーはおっとりしていて戯れるのも苦手に見えました。
こんなに小さい頃から性格が全く違うことにも驚きました。その日からケージを分けるようにしたのです。
次回は「ごめんね。社会化が足りなかった」という話をしたいと思います。
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