理想の飼い主像を追い求めすぎてはいけない? 犬にも個性があり好き嫌いだってある

悩んで学んだ犬のこと、雑種犬
デビルマンに似ていた富士丸

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤 賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

犬との暮らしに悩む日々

 ちまたには「犬の飼い方」とか「犬のしつけ」に関する情報があふれている。私もかつて富士丸と暮らし始めた頃、トイレはどう覚えてもらうのか、どうやったらリードをぐいぐい引っ張らなくなるのか、留守番時の破壊活動はどう止めさせるのか、なぜ言うことを聞いてくれないのかなど分からないことばかりで、色々調べまくっていた。

 だけど、どれもこれもうまくいかない。本や雑誌で見る犬と飼い主の関係は立派に見えるのに、自分のどこがいけないんだ、うちの犬はなぜ駄目なんだ、と苦悩する。

 初めて犬と暮らす人の中には、そんな悩みを抱えている方もいると思う。あんな飼い主と犬の関係になりたい。お互い顔を見ただけで意思疎通が出来る関係になりたい。たくさん愛情を注いでいるのに、なぜ分かってくれないのか。そう思っているのではないだろうか。かつての私がそうだったように。

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よく外を見ていた富士丸、北向きで目の前はビルだったのに

悩んだ日々を笑える日がくる

 結論から言うと、それは「時間」が解決してくれる。犬が言うことを聞かないのも、意思疎通が出来ないのも、種が違うからということもあるが、一番は人との暮らしに慣れていないのだ、幼い場合は特に。

 人間の子どもに置き換えれば分かると思う。幼い子どもが親の言うことを一度聞いただけで理解し、素直に従うことなどまずない。だいたい「それやっちゃ駄目だって何度言えば分かるの!」となる。

 それと同じことなのだ。そんな簡単なことなのに、頭で犬は従順なものだと思い込んでしまっているので「なぜ言うことを聞いてくれないんだ」と思い悩む(人間の場合も育児ノイローゼはあるが)。

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実は温厚で優しいやつだった

 もっと言えば、犬はトイレシートで用を足す習性などないし、ほえたら駄目なルールなんてない。子犬がうれしいときにオシッコをちびってしまう通称「うれション」をいくら叱っても、犬には何が悪いのかさっぱり分からない。遊びたくてかんでいるだけなのに叱られても分からない。 

 そういう中で、次第に犬は「これはやっちゃいけないんだな」と学んでいく。ようするに、犬に強引に人間社会のルールを押し付けているにすぎない。甘がみにしても、犬同士であれば幼い兄弟と遊ぶ中で学ぶはずだが、早くに引き離されているから知らない。それを学ぶのに多少時間がかかるだけなのだ。決して犬が馬鹿なわけではない。

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うれしいときの富士丸

けなげで賢い犬たち

 押し付けられたルールにもかかわらず、犬は時間と共にそれをひとつひとつちゃんと覚えていく。それに早くて1年、遅いと3年くらいかかるが、後は人間よりも空気を読むようになる。

 もうひとつは、飼い主側の意識も関係する。若い頃の富士丸が破壊活動でソファをぶち壊したのも、ただ体力が有り余っていたのだ。もっと歩きたいし遊びたいのに留守番ばかりさせやがってと、不満をぶちまけていたのだろう。後になってからそのことに気づき、深く反省したのを覚えている。

 犬は言葉を話せないので、何がしたいのか、どうして欲しいのか、よく観察してみることが重要だと思う。きっと何か言いたいことがあるはずだし、それが分かればお互いに黙っていても意思疎通が出来るようになると思う。

それぞれ違っていい

 そして、理想の飼い主像を追い求めすぎないこと。誰しも理想はあると思うが、それぞれ家族との距離や関係が違うように、犬と飼い主の関係も違っていいと思っている。理想の家族、理想の飼い主なんて個々の幻想にすぎない。そんなものを追いかけても仕方ない。

 やたら攻撃的だったり、まったく言うことを聞かないのは周囲が困るが、そういうこと以外で犬と飼い主がお互い心地いい関係なら、それでいいと思う。犬にもちゃんと個性があり、好き嫌いだってあるのだ。

 それに信じられないかもしれないが犬は話せばわかってくれる、ときがくる。だから犬にはたくさん話しかけた方がいい。言葉は理解出来なくても、こちらの感情は読み取れるし、単語は覚える(自分に都合のいい単語は特に)。

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気ままにのんびり暮らす大福

 私は、幼い頃の富士丸への反省から、大吉と福助の意思を尊重し、だいたい好きなようにさせているせいか(動物病院は断固拒否されても連れていくが)、彼らにも特に不満はないようだ。食卓にある味付けのない食材をおすそ分けしたりもするし、ゆるゆるの駄目飼い主の部類に入る。

 ドッグトレーナーでもない私が自らの経験をつらつら書いただけだが、今悩んでいる人の気分が少しでも楽になってくれたらと思う。 

 ひとつ補足しておくと、たまに大型犬でリードを「犬ぞりか!」というほどぐいぐい引っ張る犬がいるが、3歳頃まで続くと思った方がいい。富士丸がそうだったが、それはまぁ仕方ない。しかしやがて落ち着き、5歳くらいからはこちらを気遣い、歩調を合わせたりしてくれるようになるので、それまで頑張ろう。

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八ヶ岳の自然文化園にて

DeLoreansHouseオープン
穴澤賢さんが立ち上げたブランド『DeLoreans』の直営店が八ヶ岳にオープンしました。店内はもちろん犬同伴OKです。
場所:長野県諏訪郡原村ペンション17217-1697 MICHOUSE内
※アクセス方法や営業日はこちらをご覧ください。

【前の回】365日欠かさずウンチを拾う日々 嫁のはできないが愛犬のは嫌だと感じない謎

穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集兼ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この連載について
悩んで学んだ犬のこと
先代犬は富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らす穴澤賢さんが、犬との暮らしで実際に経験した悩みから学んできた“教訓”をお届けしていきます。
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