老犬は排泄介助が必要になるの? 排泄のうながし方と介助のやり方【獣医師監修】
愛犬が若いうちにしておいた方がいいことってあるの? 年をとってきた愛犬の変化に戸惑う、正しいケアができているか不安……など。意外に知らない犬のこと、多くありませんか?快適な老犬ライフを送るために知っておきたい老年期について、毎月第3火曜日にお届けします。
第9回テーマは「排泄(はいせつ)介助」について、苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師にお話を伺いました。
歩けなくなったら、排泄介助が必要
排泄介助をするのはおもに歩けない状態の老犬です。老化で足腰が立たなくなった場合や、ヘルニアによる下半身麻痺(まひ)、首の神経異常、脳の病気で立てなくなったなどの理由で「排泄の姿勢がとれない場合」に必要です。
老犬でもちゃんと歩ける場合は、排泄介助をしている子はほとんどいないかもしれません。
わんちゃんの大きさに関わらず、寝たきりになっている子は介助が必要です。
老犬だからといって排泄機能が失われることはない
老犬になり前立腺が大きくなると、排尿・排便がしづらくなるということはありますが、老化だけなら排泄機能は完全には失われないと思います。ですが、老化に加えて神経的な機能が低下している場合には、排泄機能が失われることが考えられます。
寝たきりの状態で尿が出ていると、飼い主は「おしっこしているわ」と思うかもしれませんが、本人が「しよう」として出したのではなく、おもらしの可能性があります。
排泄機能が残っている場合、飼い主は排泄を「うながす」
排泄介助には大きく分けて2つあります。ひとつめは「排泄をうながす」こと、そしてふたつめは「排泄させる」ことです。
ひとつめの「排泄をうながす」というのは、人が外部的な刺激を与え、最終的な排泄は本人にまかせることです。例えば、もともとお散歩で排泄していた習慣がある子なら、歩けなくても立てなくても、排泄の機能が残っていれば外に連れ出すことで刺激となり、スイッチが入って排泄するかもしれないのです。
便の場合は、手や綿棒で肛門(こうもん)を刺激してあげると、肛門近くまで腸が便を奥の方から運ばれてきます。排泄機能が残っている子は、そこから便を自力で出せる場合があるのです。
排泄機能が残っていない場合、「排泄させる」
ふたつめの「排泄させる」というのは、人の手で尿や便を出すということです。自分で尿を膀胱から出せる機能が残っていなければ、人の手で出すことになります。
排尿時の方法は、膀胱を両手で圧迫してあげて、膀胱を押しつぶすようにします。膀胱の位置は、大腿部の頭側の両側のつけ根を結んだところの腹部の中心あたりです。女の子だと排泄器官の上あたり、男の子の場合おちんちんの下あたりですね。
尿がたまっていると、膀胱が水風船のように膨らんでいるのがわかります。膨らんだ膀胱を両手で挟み、押しつぶすようにします。そうすると尿が出てくることが多いです。
しかし、まずは我流ではなく、獣医師からレクチャーを受けてください。膀胱の出口が閉まっている時に無理に押すと、膀胱破裂などにつながる可能性があります。そうならないように、獣医師は膀胱の出口を広げる飲み薬や、膀胱の収縮を促す飲み薬を処方することがあります。また、無理に圧迫すると尿を腎臓に逆流させてしまって腎盂腎炎などになることもあります。
ほかに、カテーテルを入れる方法もあります。男の子の場合はご自宅でもカテーテルを入れられますが、女の子の場合は尿道が陰部の中にあるので、ご自宅ではカテーテルを入れることは難しいので、病院でカテーテルを入れ替えます。
便に関しては、自力で出せない場合、先述のように肛門を刺激した後、肛門が便で盛り上がれば手でむぎゅっと出してあげましょう。盛り上がった部分だけ出しても、残った分は指で出してあげなければいけません。小型犬でも指は入ります。
その際は衛生上、ビニール手袋を使ったほうがいいですね。排泄する前に潤滑剤、軟膏、局所麻酔のジェル、ワセリンなどを塗ると痛みは少ないかと思います。浣腸もひとつの方法です。
愛犬の全身状態を見て、現状把握が大切
便が硬いと出しにくくなることがあるので、なるべく硬くならないように食事を調整しましょう。もしくは口から下剤を入れて、出やすくしてあげるというような工夫も必要かと思います。
とにかく、愛犬の排泄機能の状態を把握してあげることが大切です。寝たきりの子でも、排泄しているときは、表情、陰部の動き、モゾモゾしている、などわかると思います。
飲み込むこと、呼吸、排泄、など全身状態を見て「その子に何をしてあげるべきなのか?」飼い主が把握すること、そして、きちんと獣医さんに診てもらってその子に合った介助をしてあげてください。
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- 監修:白井活光
- 苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム専務理事。専門分野は総合臨床。
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