犬の特殊能力なのか? 「してあげている」がなぜかうれしくなる理由

手に入れた当初の山の家(2017)

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤 賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

重労働もなんのその

 犬と暮らすと、毎日の散歩やゴハンの準備、遊び相手、なでる係、おやつの時間など、色々やることが増える。

 他にも犬は、しばらく遊びに行かないと露骨に「最近つまんねーオーラ」を出すので、わりと定期的に「イレギュラーなお出かけ」をしないといけない。

 私の場合、いつでも自由に走り回れるようにとプライベートドッグランも作った。しかも歩けないほど雑草が生い茂っている敷地を、使ったことのなかった草刈り機で何度も何度も刈り取り、アニマルフェンスを設置してみたりした。

玄関から見た当初の敷地

 柵を設けた後も、大福の脚が毎回泥だらけにならないよう、ウッドチップを敷き詰めてみたり、でもそれは1年で土に帰ることを知り、次に芝生化するべく種をまいたり、刈っても刈っても生えてくるクマザサと格闘して、最終的に根ごと引っこ抜いたり、すべてが手探りで、今もまだ終わっていない。

 それらはかなりの重労働で、仕事だとしてもやりたくはない作業である。でもなぜか、大福がうれしそうに走り回っているとうれしくなり、やる気が湧いてくる。これは、なかなかないことだなと思う。

草刈り機デビュー

家族に対しての私の温度

 私は買い出しから夕食の支度までやるので、妻は帰宅すると風呂も沸いていて料理が出来ている状態になっている。これは、今日食べるものは自分で決めたい、という私の意思からそうしている。

少し開けた敷地

 だからやってあげているとは思わないが、感謝くらいせいよとはたまに思う。妻のためにやっているわけではないし、出てきた料理(冬は鍋率80%)に文句も言われないから別にいいのだが。

 少し脱線するが、私は調理も洗い物もまったく苦にならない。それは高校生の頃、大学生に混ざって居酒屋の厨房(ちゅうぼう)でバイトをしていたからだと思う。忙しくなると、フライパンを3つくらい同時に使わないといけなかったし、その後には鬼のように押し寄せる食器を洗わないといけなかったから、それに比べたら家庭で出る洗い物なんてなんでもない。

アニマルフェンスを設置

 バイトしている当時は、ギターが欲しいからとか、友達と遊びに行きたいからという理由で後に役立つとはまったく思っていなかったけど。だからこれを読んでいる若者たちには、色々な業種でバイトしておいた方がいいよと言いたい。若い人は読んでないか。

第一期ドッグラン完成

犬が喜ぶ顔が見られたらそれでいい

 話を戻そう。私は妻に対してもその程度だから、あまり奉仕するタイプではないと思う。たまに「ペットロスで苦しんでいるときに本(『またね、富士丸。』)を読んで救われました」とか言われることがあるが、そもそも誰かを救いたいと思って書いたわけではないから、「あぁ、そうですか」としか言えない。

刈っても刈っても生えてくるクマザサ

 それが大福のためだったら、ものすごく働くし、自分でも予想出来ない行動を取ったりする。

台風による倒木で伐採しドッグラン拡張

 2017年に八ヶ岳にボロ山小屋を買ったのも、せっせとドッグランを作ったのも、すべては大福のためを考えてのことで、いなかったら絶対やっていない。さらには、2023年には山へ完全移住した。

全面にウッドチップを敷き詰める

 これは厳密にいえば、大福のためだけではなく、夏に毎朝5時起きするのがつらすぎるという気持ちもあったが、山の環境の方が喜ぶだろうと思ったのはたしかだ。

雪国ではないがひと冬には何度か雪が積もる

 それに山で暮らすようになって1年経つが、腰越時代と比べて大福の足取りは軽くなったし、元気になったような気がする。そんな姿を見ているとうれしくなるし、移住という決断を促してっくれてありがとうとさえ思う。さて、今度はどこへ遊びに行こうかね。

現在のドッグラン

【前の回】「君のためなら何だって出来るさ」 安っぽい歌謡曲の歌詞と犬猫の関係

穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集兼ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この連載について
悩んで学んだ犬のこと
先代犬は富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らす穴澤賢さんが、犬との暮らしで実際に経験した悩みから学んできた“教訓”をお届けしていきます。
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