平和を願い、動物を愛する者として ウクライナの犬や猫たちのために出来ること
「公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)」代表理事の西平衣里です。sippoの連載記事は、変わりゆく日本の動物福祉をポジティブに書いてきました。まさか戦争による悲劇が起き、こんな記事を書くことになるとは想像していませんでした。
災害時、取り残されるのは動物たちです。阪神淡路大震災、東日本大震災で、私たち日本人は犠牲になる動物たちを見てきました。いま、戦渦にあるウクライナでペットと暮らしている人々や、ペットたちにできることをお伝えします。
救うべき存在である、共に生きるペットたち
私たちアニドネは、なんとかウクライナの動物のために役立ちたい、と動いています。海外事情にも詳しい動物福祉関連の有識者へ問い合わせをし、アニドネ内で対策チームを立ち上げ、ウクライナや周辺国のリサーチを続けています。
私たちと同じく犬や猫が大好きな人々は世界中にいます。時折TVなどで流れる、ペットを腕に抱きながら戦渦を逃れるウクライナ人の姿に心が引き裂かれそうになるのは、私だけではないはずです。
そんなウクライナにて、マイクロチップ等の製造をしている「Animal ID」と、イギリスの動物福祉を牽引する大手保護団体「DogsTrust Worldwide」、そしてオーストリアで設立された世界的動物福祉団体「FOUR PAWS International」の3団体で組織しているNGO団体「IRS(International Registration Systems)」の動きは大変早く、すでに220トン以上のペットフードをキーウ、ハルキウ、および他の都市にある100以上の避難所に配布しています。
そして、ウクライナ危機をきっかけに、ウクライナ全土の動物福祉援助を求める団体をネットワーク化し、「UPAW」というシステムをほどなくリリースしようとしています。担当者であるマルタ・コパック(Marta Kopach)さんに、ウクライナの現状をお聞きすることができました。
避難先のポーランドで動物のために尽くすマルタさん
Animal IDのCCO(チーフ・カスタマー・オフィサー)でもあるマルタさんの状況は過酷です。子ども二人を連れウクライナからポーランドへと避難、ご主人と長男はウクライナに残っているそう。私への何度目かのメールに、「ウクライナにある会社の工場近くにロシアからの爆撃があり、状況を調べているところだ」とありました。
今回、私はウクライナの歴史を深く知らなかったことを恥じています。島国の日本では考えられない侵攻の歴史を持ち、長く忍従を強いられてきた背景を持つ国。そんなバックヤードがあるからなのか、マルタさんのメール文面からは、とても忍耐強く、そして強さと優しさが感じられました。
アニドネからの「寄付を届けたい」という申し出に、心から感謝を寄せてくれています。
以下は、マルタさんから届いたメッセージを翻訳したものです。
「誰も予想をしていなかったこの残忍な戦争は、ウクライナの人々の精神までは壊していません。ウクライナは民主主義国家であり、私たちの権利と自由を最後まで擁護することを世界に証明することができます。多くのウクライナ人が国を余儀なく離れていたとしても、それは関係ありません。この悲劇は私たちをさらに団結させました。そしてIRSは、動物たちへの重要な福祉、つまり飢餓から救うための組織として団結しています。避難所の動物も、瓦礫の下の行方不明者を探すことに力を発揮している動物も、路上を歩き回っている動物もみな平等であり、私たちの仕事はすべての命を養うことです。当協会を代表して、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」
共に避難できず、自宅に残されたペットたちもいる
「国連UNHCR協会」によると、2月24日以降、約1,000万人以上が故郷からの避難を強いられているそう。約370万人が国を離れ、650万人がウクライナ国内での避難を余儀なくされ、少なくとも1,300万人が被害を受けている地域に取り残されているといいます(3月24日時点)。
マルタさんは避難を余儀なくされている人々とペットの置かれた状況を教えてくれました。
「人口の約50%が何かしらのペットを飼っていて、詳細な統計は現時点では困難なのですが、約30%ほどが同行避難ができたのではないでしょうか。ペットと一緒にいられる人ばかりではありません。ペットを地元のボランティアやシェルターに預けることができた人もいますが、放すので精一杯だった人も、厳しい避難の途中で動物を失った人もいます。戦争は終わっておらず、人々はまだ避難の過程にあり、状況は非常に悪い。またペットが家に閉じ込められているケースも多く、地元のボランティアや近所の人がそのような動物を助けるために窓やドアを壊し、世話をしていることもあります」
想像を絶する事態が現在進行形で行われていることに、胸がキリキリと痛みます。避難先のシェルターに一時的に預けれたとしても、いつ会えるのか、また会うことができるのか、飼い主もペットも不安で仕方ないことでしょう。
犬や猫は人と共にしか生きられない動物です。また共に生きることで、人に癒やしや命の大切さを教えてくれる大切な存在です。一刻も早く人々と動物たちに平和が戻ること、そしてそれまでの間、出来る限りの支援をしていきたいと強く思いました。
今、自分でできることを
アニドネは日本国内の動物関連の団体を支援している中間支援組織です。しかしこの戦争が始まってから「ウクライナの動物関連の活動に寄付をしたい」という声が寄せられています。ウクライナや周辺国でこの危機に対しての活動履歴があり、寄付の受付をしている団体をラインアップし、アニドネサイト「ウクライナの動物保護&寄付情報」に掲載しています。今後も継続的にリサーチを続けていく予定です。ぜひ、ウクライナの団体や周辺国の団体へ、ご自身で寄付をしてみてください。
また、Yahoo!ネット募金では「ウクライナ緊急支援」が立ち上がっています。その中で、アニドネが窓口となり「動物のためのウクライナ緊急支援基金」をスタートさせました。
こちらは、アニドネ経由で、今回紹介しているIRSへ寄付ができます(*現地ニーズとご寄付の合計額によっては、支援先団体を追加する可能性があります)。ご自身のクレジットカードを日本語で利用できますし、溜まっているTポイントを寄付にして届けることもできます。またアニドネでは、寄付の全額(*Yahoo!ネット募金の利用料=クレジットカード寄付分の5%および消費税を引いた金額)を現地へ届けることといたしました。
私たちがまず出来ることは、寄付だと思っています。私たちが届けるのは、もちろん寄付金ではありますが、それは同時に過酷な状況にいる人々や動物たちへの想いでもあります。
無事を祈り、少しでも助けとなれるよう、動物を愛する者として心を届けましょう。
(次回は5月5日公開予定です)
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