愛犬が「待て」できない! 専門家に聞く待ての教え方、小さなステップを重ねよう
愛犬に「待て」を教えたいのに、うまくいかなくてあきらめてしまった……。こんな挫折を経験した飼い主さんは多いのではないでしょうか? 「愛犬が落ち着かないから」「自分の教え方が悪いから」とがっかりしないでくださいね。小さなステップを積み重ねて教えればちゃんと成功します。
犬のしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」を運営する学術博士の鹿野正顕先生に、「待て」の教え直し方法をうかがいました。失敗した理由に合わせたアドバイスも確認しましょう。
「待て」と「休め」は別のこと
そもそも「待て」は次の指示まで犬に短時間だけその時の体勢(座った状態、伏せた状態など)を維持させる目的で使います。おすわりの姿勢で「待て」をするのは最長でも1分が限度。ドッグカフェに行って飼い主さんの足元で長時間、おとなしくし待ってもらう場合は「休め」の指示を使います。今回は10秒〜1分程度の「待て」の教え直しを解説します。
まず知っておきたいのは、犬には待てが得意なタイプと待てが苦手なタイプがいること。指示に従わない犬はワガママというわけではなく、何に対して高いモチベーション(やる気)をもてるかどうかの違いです。愛犬のタイプを確認しておくと、しつけやトレーニングのときに使うごほうびを選びやすくなります。
■待てが得意な犬
飼い主さんにほめられたり、ごほうび(おやつ)をもらったりすることがモチベーションになるタイプ。
犬種の例:トイ・プードル、ラブラドール・レトリーバー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど
※ごほうびは主食のフードでもよいが、犬の反応を見て嗜好(しこう)性を上げてみる。
■待てが苦手な犬
好奇心が強くて自分がやりたいことを優先するタイプ、アクティブで興奮しやすいタイプ。
犬種の例:柴犬、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ジャック・ラッセル・テリアなど
※犬の好奇心に打ち勝てる最高のおやつ(普段与えていないもの)をごほうびにする。
■一般的に犬が好むおやつ
- 肉(ジャーキーなどのよう加工されていな素材そのもの)
- においが強い(水分含量が多いもの、チーズやヨーグルトなどの発酵食品)
- やわらかくて弾力性がありみずみずしい食感
「待てができない犬」の教え直しチャレンジ
おすわりはできるけど待てができない場合の教え直し方法を紹介します。最初は「待て」などの指示を言わず、犬に「動かないでいるとごほうびをもらえる」ということから教えたほうが早く覚えます。おおよそ、10秒ぐらい動かないでいられるようになったら、待てとの指示と動かないでいることを結び付けていきます。まずは10秒まで時間を伸ばすことを目標にチャレンジしてみましょう。
最初は静かな室内や庭などで練習しましょう。誘惑が少ない場所のほうが成功しやすくなります。
- 「おすわり」の指示で座らせる
- 2〜5秒(愛犬が動かないでいられる時間)経ったらほめてごほうびを与えましょう。
※繰り返して少しずつ時間を伸ばして10秒待てるようになったら次へ。失敗してしまった場合は、少し時間を短くしてから再度練習をし直す。例)5秒(成功)→10秒(失敗)→7秒からやり直す - 「おすわり」で座らせてから「待て」と指示を言う
- 10秒経ったらほめてごほうびを与えて、徐々に時間を延ばしながら1分間待ってられるように練習を繰り返します。
「待てがちょっとだけできる犬」の教え直しチャレンジ
5秒くらい待てる犬なら、ステップアップして時間と距離を同時に伸ばせる一石二鳥の方法を試してみてください。練習場所は静かな室内や庭がおすすめです。
- 「おすわり」の指示で座らせる
- 飼い主が後ろへ半歩だけ足を動かして、すぐに元の位置へ戻る
※犬が動いてしまう場合はその場でかかとを上げるだけでもよい - 上の②の間動かないでいられたらほめてごほうびを与える
- ほめてごほうびを与えて終了させる
- 後ろへ1歩だけ足を動かして元の位置へ戻る
- 上の④の間動かないでいられたらほめてごほうびを与える
- ほめてごほうびを与えて終了させる
※2、3、4歩……と距離が伸びるごとに待つ時間も伸ばせる
5歩下がって戻ってくる間、動かないで待っていられたら、「待て」と言って指示と待っていることを結び付けるようにします。
「待てができない理由」に合わせた教え直しチャレンジ
待てができない理由は犬によってさまざまです。愛犬の悩みに近いケースを見つけて、アドバイスを参考に教え直してみてください。
■待ての最中に勝手に動いてしまう
犬にとって誘惑が多い環境で教えている可能性があります。1つ目のポイントは、飼い主と一対一になれる静かな部屋などで練習しましょう。2つ目のポイントは、誘惑の対象に近づけないようにすることです。室内のどこかにリードを短めにつないで固定して練習しましょう。
■おやつを見せると動いてしまう
ごほうびに使っているおやつの嗜好性が高すぎるのかもしれません。おやつのランクを下げてみましょう。
また、おやつを見せながら練習を繰り返してしまうと、おやつの動きに敏感になってしまうため、おやつは必ず隠して練習し、成功したときに見せて与えるようにしましょう。
■待ての最中に飼い主に向かってほえる
待たされていることにジレンマが生じている状態です。「早くおやつを寄こせ!」という訴えなので、少しの時間から徐々にその場で待っていると必ずおやつがもらえることを覚えると、安心してほえなくなります。
■飼い主が動くとついてきてしまう
犬が「待て」の指示を十分に理解していないので、飼い主の動きに釣られてしまいます。もしくは「飼い主が動いたら待てを終了してよい」と覚えています。「待てが全然できない犬」の教え直し方法を実践しましょう。
■飼い主が目の前にいないとできない(少し離れたところから「待て」と言ってもできない)
「待てがちょっとだけできる犬」の教え直し方法を実践しましょう。
■ほめると動いてしまう
待てのトレーニングの構造は、刺激(指示を出される)→反応(待つ)→結果(ほめられる)。許可していないのに動いてしまったと思うかもしれませんが、ほめることが終了の合図となるため、トレーニングのルールでは問題ありません。
■家では待てができるのに公園ではできない
犬にとって公園は誘惑が多すぎます。室内で待てができるようになったら、庭→玄関の前→近所の歩道→公園に行く途中の道→公園が見える道……と、少しずつ誘惑が多いところで練習しましょう。
■家族の中で犬が言うことを聞く人と聞かない人がいる
「犬が下に見ているから」と考える人もいるが、これは誤りです。犬が一緒にトレーニングしたくなる魅力的な人になることが重要です。とっておきのごほうびを用意して、練習を始めることから試しましょう。
「待て」ができるようになると、車から降ろすとき、クレートから出すとき、ドッグカフェでの会計のとき、かわいい写真を撮るときなど、さまざまなシチュエーションで役立ちます。おやつやごはんの前に待たせる「おあずけ」は、犬の不安感を強くしてしまうのでやめましょう。
人間は言葉でコミュニケーションをとるので、犬が覚えていないのに指示を出したり、「待て、待て、待て」と声をかけ続けたりしがち。すると犬は混乱してストレスを抱えてしまいます。飼い主さんは犬に教えたい目標を定めて、犬に理解できる方法で教えてあげましょう。犬は根気強く教えればちゃんと覚えてくれます。
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