自然体の猫の姿と、心のままに今を生きる言葉 沖昌之さん×及川眠子さんの猫詩写真集

「猫から目線」(KKベストセラーズ)より

 Winkの『淋しい熱帯魚』や新世紀エヴァンゲリオンの主題歌『残酷な天使のテーゼ』などを手がけた作詞家の及川眠子(ねこ)さんの45編の詩と、自然体な猫の写真で知られる猫写真家の沖昌之さんによる猫詩写真集「猫から目線」(KKベストセラーズ)が刊行されました。製作背景、作り手の思いに触れながら、“猫目線”からの言葉の数々をお届けします。sippoに贈って頂いたオリジナル猫詩もご紹介します。

(末尾に写真特集があります)

抱っこされたり足蹴にされたり
人の都合で扱われてさ
猫は気楽でいいよねなんて
マジで何をほざいてやがる
たとえやむなく飼われる身でも
猫には猫の都合があるよ
せっかくの昼寝を邪魔しておいて
それを愛って呼ぶんじゃねえよ

 例えばこの一編。貫禄あるオス猫が寝そべる姿に添えられた“思い”に、どきっとさせられます。心の声が本当に聞こえてきそうだから。

「猫から目線」(KKベストセラーズ)より

私は抱っこが大きらい
でもね知ってるよ
優しすぎる人たちは
胸のあたり涙のにおいがするんだ
だから私は時々ガマンして
抱っこされてあげるの
微笑んでくれれば嬉しいからね
私でも役に立っているようで

 まどろむ茶白猫が漏らす言葉に、猫を胸に抱く感覚を思い出し、自分が抱いているようで、じつは抱かれていたのか?と考えさせられる人もいるかもしれません。

猫が抱く思いとは

 作詞家の及川眠子さんは猫好き。今まで飼ったのは4匹で、現在はオスのキジ白「サビオ」とメスの白黒「ワビイ」という5歳のきょうだい猫を飼っているそうです。

 猫を飼ってから野に暮らす猫にも目がいくようになり、ごはんがもらえているか、寒くないかと気をもんでみたものの、猫たちは至って自由。こびたり無視したりしながら“まるで300年くらい生きてきた偉い哲学者のような表情”を見せていた、と本書の前書きに記しています。

「人間のやっていることを眺めながら、猫たちはいったいどんな思いを抱いているのか」

 そんな疑問を機に、猫の目を借りて言葉を紡ぐことは、著名な詞をいくつも世に送り出しながらも“やりのこしてきたことであった”といいます。

「猫から目線」(KKベストセラーズ)より

腹の下で弱々しく哭く
生きてはいけない小さな命を
絶ってやるのは親の務めさ
猫は猫に産まれたことに
後悔できる知恵などないけど
幸福になる権利を持って
健やかに産まれた小さな命を
絶ってしまうほど残忍じゃねえわ

静かな写真と強い詩との化学反応

 KKベストセラーズの担当編集者・織江賢治さんによれば、写真集は及川さんの詩と沖さんの写真が別々にあり、楽曲でいうところの「共作」です。

「フリー写真ではもったいないので、(自由な猫の写真を多く撮られている)沖さんにお願いしようということになり、まずタイトルが決まりました。では猫の目線に合わせてどんなショットを選ぼうかとなり、沖さんが今まで撮られた30万枚以上の写真から選びました。もっと詩に“合う”のがあるかなとすべてのフォルダーにある写真をあれもこれも見たくなって……結局、制作に10カ月以上費やしました」

初の“猫詩とのコラボ”に、写真家の沖さんはどんな感想を抱いたのでしょう?

「僕の写真は〇〇すぎるネコのようなインパクトある“動”のイメージが強いのですが、今回は主に“静”の写真がクローズアップされています。素のままの(ノーフィルターな)ライトな写真に、及川さんの“心のままに力強く今を生きる”というようなむき出しな言葉がマッチしていることにびっくりしてしまったし、その化学変化がたまらなく楽しかったりもします。心に響きすぎて泣きそうになった詩もあります」

「確かに、僕らにとって、コロナで死を意識することが以前より身近なものになりました。だからこそ、生きるとか幸せとは?とか強く考えるようになった気もします。でも、そういうことを考えると疲れるし、アドバイスがほしかったりする。そんな時に、及川さんの言葉が気持ちを強くさせてくれるような気がします。言いすぎかな?」

緒方恵美さんの朗読による猫詩の例 (動画は全15編~10月15日まで)

sippo読者へ贈りもの

 今回、及川さんの未発表の詩を沖さんの写真とともに贈ってくださいました。混沌とした中にあって、また悩みを抱えていても、まるで猫がそっと励ましてくれるように思えてくる……そんな内容です。

「猫から目線」(KKベストセラーズ)より

生きていていいよって
たまには自分に言ってあげよう
うまくいかない日々の中で
他人の幸せを妬まないように
他人の不幸せを喜ばないように
ここにある命ひとつ
頑張ってるねって
たまには少し褒めてあげよう

 及川さんは、猫詩に関して、こんな言葉も寄せてくださいました。

「私が発したメッセージをどのように受け取ろうと、そこに正解や間違いはありません。読んだ方がそれぞれ思い思いに受け止め、感じていただければ、それでいいのです」

 すべては自由です。猫のように……。

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及川眠子さん公式サイト www.oikawaneko.com
沖さんのインスタグラム @okirakuoki

「猫から目線」
著者:及川眠子、沖昌之
発行:KKベストセラーズ
定価:1800円+税
96ページ、オールカラー

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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