人生の一部を「社会のために」で彩ろう 好きからはじまる動物ボランティア

空き家バンクを改装した猫シェルターを視察するアニドネボランティアの富永さん(左)。長野県上田市で活動している「特定非営利活動法人 一匹でも犬・ねこを救う会」にて

 「公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)」代表理事の西平衣里です。コロナ禍、2回目の新年を迎えました。長すぎる忍耐を経て、私たちのライフスタイルもぐっと変化しています。もちろん不便も多いけれど、大事なことが見えてきたり、自分らしくあることがいかに大切かを感じたりしている人も多いのではないでしょうか。

 2022年最初となる今回は、愛する動物のために自分が役立つのであれば――、と勇気をもって一歩を踏み出したアニドネボランティアの富永玲奈さんを通して、動物ボランティアについて書いていこうと思います。

元保護猫の「レイ」をきっかけに動物ボランティアの道へ

 富永さんは、アニドネのボランティアチーム「クラブアニドネ」で、保護団体の窓口さんを担当するリサーチャーや取材、記事執筆などを担当されています。

富永さん。出版社勤務を経て、フリーランスで書籍編集やライティングを行う傍ら、ひとり出版社「Après-midi」を主宰

 富永さんのアニドネへの参加は2020年秋。富永さんは幼い頃から犬や猫、鳥、魚、亀などいろいろな生き物と暮らしてきたけれど、「動物愛護」について真剣に考えるようになったのは最近だそう。ボランティア参加のきっかけは、保護猫カフェからレイくんというキジトラ猫を迎えたことでした。

 レイくんは、乳飲み子のときに公園で保護され、一度行政(動物愛護センター)に引き取られたあと、ミルクボランティアさんに育てられました。

キジトラ猫
富永さんの愛猫、レイくん。目がくりっとしていて耳はピン!とした、かなりのイケメン

「レイくんをお迎えして数カ月経った頃のことです。お腹いっぱいごはんを食べて、私の隣で安心しきって寝ているレイくんを見ていたら、ふと『行政から引き出すボランティアさんがいなかったら、レイくんは殺処分されていたかもしれないのか……』と思い、涙が込み上げてきたんです」

 そうして富永さんが踏み出した一歩は、自らもボランティアを行うということ。それがアニドネのボランティア活動だったのです。

「動物愛護や動物福祉に関連する書籍を読んだりネットで調べたりする中で、『アニマル・ドネーション』がボランティアを募集していることを知りました。自分にもできることはないだろうかと、まずは応募しました。私はフリーランスの編集者で、働き方も不規則なのですが、アニドネのボランティアはパソコンさえあれば自宅でできることも多く、仕事と両立しやすいと思いました」

実際に見て聞くことで、想いは一層強くなる

 アニドネではボランティアさんが集うコミュニティがあり、「こんなことやってみたい方はいますか?」と随時ボランティアを募集しています。例えば、セミナーのお手伝いや企画立案、バナー作成など。スキルや想いを持つたくさんのボランティアさんに支えてもらっているのです。

 そんな中、保護団体さんの視察に行く必要が生じました。

 アニドネは年に一度、支援先となる団体を公募しています。書類審査の後は、現地を訪れます。実はコロナによって1年間、現場視察を実施できていなかったのですが、緊急事態宣言の合間を縫っての大切な現地視察でした。視察はなるべく複数人で行くことにしており、私に同行してくださる方を募集したところ、富永さんが手を挙げてくださいました。

猫のシェルターを視察
富永さんにすり寄っていく猫たち。一瞬で猫が好きな人を見抜く

「保護活動をされている団体さんやシェルターを訪問したことがなかったので、機会があれば行きたいとは思っていました。しかしコロナの影響で叶わずにいました。

 そんな折、西平さんから長野県上田市の『一匹でも犬・ねこを救う会』をアニドネで視察すると教えていただき、同行したいと名乗り出ました。保護活動をされている方々に直接お会いしてお話を伺うのは、本やネットの記事を読むだけでは得られない貴重な体験でした」

集合写真
視察の際の記念撮影。私(左)と保護団体のスタッフさんたち。アニドネスタッフはPCR検査を受け、コロナの陰性証明を持って訪問しました

 この時は猫のシェルターを訪問したのですが、スタッフの方々のお話はもちろんのこと、眼差しや言動からも猫への愛がにじみ出ており、なおかつ動物たちが置かれている状況を何とかしたいという強い気持ちも感じられました。

 強く心を打たれたと同時に、不幸な環境からレスキューされる犬猫が全国にまだまだたくさんいるという現実に気が遠くなりそうになりました。『どうすればいいのか、私には何ができるのか』とそれまで以上に考えるようになりました」

ボランティア活動を暮らしや仕事にも活かしていく

 富永さんは、編集者としての経験が長く、文章を書くプロです。「猫が好きだがら」という気持ちからボランティアをされていますが、自分の仕事にも少なからず影響があるそうです。

「リサーチャーとしては、団体さんの窓口になったことで、現場で保護活動をされている方々がどれだけ大変な思いをしているのかを知りました。団体さんの困りごとを助ける力に少しでもなれていればいいなと思っています。

 動物愛護については、多くの人に知ってほしいと思う反面、押し付けにならないように伝えるのは難しいですね。『動物にやさしい世界にしたい』と言うと素敵な言葉に聞こえるのに、『動物愛護』と言うと難しそう、大変そうと感じてしまう気持ちも正直わからなくもありません。私自身、アニドネのボランティアに応募する際に、動物愛護について興味を持ち始めたばかりの私が参加してもいいのだろうか、ということが頭をよぎりました。

 でも、思い切って参加してみてよかったです。まだまだ知らないことも、出来ないことも多いですが、日々勉強をしながら、この経験を仕事にも活かしていきたい。動物愛護にまつわる書籍の企画を実現できたらな、とも密かに思っています」

眠る猫
レイくん。富永さんと出会えてよかったね。ママは君の仲間たちのためにがんばっていますよ!

自分の「好き」を社会貢献に

 以前、sippoの連載でも書かせていただいたスイスの保護施設訪問。施設に30人ほどいるスタッフは施設長を筆頭にみなボランティアで、通常は別の仕事に従事しています。鳥の責任者は、電車関係の仕事に就きながら40年もボランティアをしていると笑顔で話されていました。お散歩ボランティアをしていた若者カップルは、1時間のんびりと、大型犬と散歩をしていました。

 動物を救うということが、生活の中に自然と組み込まれている。ボランティアをすることは大仰なことではなく、好きだからこそだと感じました。肩の力を抜いて当たり前のようにボランティアに取り組む。その様子は人生そのものを楽しんでいるようで、私には眩しく見えたものです。

 2022年、自分の人生の一部に、ボランティアを組み込むのはいかがでしょう。

 アニドネに参加してもいいですし、ご自身が住んでいる地域の保護団体さんへ聞いてみてもいいでしょう。きっと喜ばれると思います。好きの延長が人や動物のためになる。引いては社会を良い方向に導く一助になる。

 社会のために自分の人生の一部を彩る方が増えることを願う、年明けです。

ぜひご覧ください
アニドネボランティア募集ページ
アニドネ認定団体公募中(1月末まで)

[前の回]「最期はあたたかな腕の中で」 老犬シェルターへの寄付STORY

(次回は2月5日に公開予定です)

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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