「最期はあたたかな腕の中で」 老犬シェルターへの寄付STORY
「公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)」代表理事の西平衣里です。SDGsの推進もあってか、企業様から「寄付を考えている」というご相談を受けることがとても増えております。素敵なコトです。今回ご紹介するのは「寄付をしたい企業」×「寄付で問題解決に立ち向かう方々」の“シニア犬を救いたい”という想いが一致したストーリーです。
超高齢化社会のひずみがペットに影響
犬や猫は、野生動物ではなく、人間の庇護のもとに生きています。そのため人間社会の問題は、犬や猫に色濃く影響します。昨今、アニドネが支援している保護団体さんの多くが「高齢者によるシニア犬猫の放棄」という問題に向き合っています。
飼い主の高齢や病気によって手放されるペットたち。人生は長く、先の見通しが立たないことも多々あります。致し方ないとはいえ、手放した時点でペットたちも高齢になっていて、余命いくばくか……ということも起こっています。若い犬猫であれば新しい飼い主も見つかりやすいものですが、シニア犬だと飼い主候補が出てこず、終生をシェルターで過ごすこともあるのです。
たまらないシニア犬の魅力
犬も人と一緒です。年を重ねれば耳も聞こえにくくなり、目はうっすらと白く濁ります。腰は曲がり、とぽとぽと歩きます。内臓が弱り食事に配慮が必要であったり、日々の投薬が欠かせなかったりすることもよくあります。しかし、若い犬にはない魅力をシニア犬は持っています。人間の気持ちを汲み取ることに長けていたり、自分のやりたいことを主張するテクニックを持っていたりと、たまらないかわいさがあるのです。
老犬シェルター運営への想い
今回、企業様からの寄付をお届けしたNPO法人「ファミーユ」代表の熊崎純子さんに、なぜ老犬シェルターを運営するのか聞いてみました。
「私たちは名古屋市の行政施設に収容された犬猫たちを保護しています。施設に収容される子たちは若ければ他の団体さんが引き出し、新しい飼い主さんを見つけてくれるでしょう。しかし、不安そうに残っている老犬たちを見るにつけ、保護団体としてできることはなにかを自問自答し、2015年5月に老犬シェルターを立ち上げました。人間に大きな癒やしを与えてくれる犬たちの最期は、ガス室ではなく温もりある人の腕の中で、安心して旅立てるよう願い、運営しています」
老犬シェルターには、常に10匹前後が暮らしており、「ファミーユ」のスタッフが交代で、献身的に世話をしています。シェルターがいっぱいになると、預かりボランティアのお宅で過ごす犬たちもいて、5年間で55匹の老犬を受け入れてきたそうです。
ところで私にも、現在16歳のトイ・プードルがいます。今この原稿を書いているときも私の足元にいてくれています。近所では元気印で有名な愛犬ですが、寄る年波には抗えず、夏から体調がすぐれません。今日もフードをほんの少ししか食べておらず、背骨が浮き出た愛犬を抱くたびに、その軽さに心がきゅっとなります。
愛犬一匹だけでもこれほど大変なのに、保護した犬たちにできる限りのことをされている「ファミーユ」のみなさんの活動には、感服するばかりです。
「エンディングケアセミナー」の受講料を寄付に
今回、寄付を申し出てくださったのは、「ペットフーディスト養成講座」、「ホリスティックケア・カウンセラー養成講座」などを運営する「株式会社カラーズ・エデュケーション」です。トリマーやトリミングサロン経営者向けの「エンディングケアセミナー」の受講料を、寄付として届けてくださいました。「エンディングケアセミナー」はシニア犬のトリミングや終活、ペットが最期を迎えた飼い主へのエンジェルケアアドバイスなどで、講師は「フェリス動物病院」チーフトリマーの伊佐美登里さんがされています。
寄付で想いをつなぐ
今回の寄付の理由は、「株式会社カラーズ・エデュケーション」代表取締役の塔春智美さんご自身の想いや経験が元になっています。
「私自身、2匹のパートナーを見送りました。また数年前に老犬シェルターに取材に伺ったことがあり、シニア犬との暮らし、介護、看取りなどについて、情報やサービスはたくさんあるのに、適切に届けられていない。それにより起こっている悲しい現実や後悔があることに気づき、私たちカラーズとしてもっとできることがあるはずだと考えていました。
そんなときに、伊佐さんから『エンディングケアセミナー』の話を頂戴しました。弊社は、ペットの心と身体の健康のためのケアと食事を学ぶ講座を運営しています。受講生のみなさまに、さらなる学びの一つとして『エンディングセミナー』を届けたいと思い、認定協会である『一般社団法人日本アニマルウェルネス協会』の承認を得て、セミナーを開催することになりました。エンディングというデリケートな内容ではあるので心配もしていましたが、弊社の受講生ではない方も含め、初回からとても多くの方にご参加いただきました。
そのことへの感謝の気持ちを何か形にし、犬や猫たちに届けたいと思いました。受講料を寄付に回すことを伊佐先生に相談し、協会からも承認を得ることができたのです。
犬や猫たちは、私たち人間に、多くの幸せや気づきを与えてくれる素晴らしいパートナーです。短い一生の最後を飼い主とともに過ごせない犬や猫たちに、何かしてあげたいと思うことは、犬や猫と暮らした方はみなさん同じだろうと思い、決めました」
塔春さんの決断は受講者に届いたのか、3回目のセミナーの受講人数はぐっと増え、寄付は45万円にもなりました。
実は、今回の寄付よりも前に、筆者はペット業界のプロジェクトで塔春さんと知り合っていました。愛犬のヨークシャ・テリアとアクティブにドッグライフを楽しまれていた塔春さん。愛犬が亡くなったことを、数カ月を経てやっとの思いでSNSで報告されていたことが、印象に残っています。
そんな塔春さんから相談を受け「その想いをよい形で実現したい」と考え、今回の寄付を「ファミーユ」にお届けする提案をしました。
目的と使途が明確な寄付をこれからも届けたい
今回、「シニア犬を救いたい」という共通の想いを持った企業と保護団体をマッチングすることができ、とても有意義な寄付であったと感じています。
アニドネは動物福祉に特化した寄付事業を行う中間支援組織です。一言で「動物福祉問題」といってもその内容は多岐にわたります。殺処分だけでなく、ペットの流通の不明瞭さ、飼い主の知識レベルの問題、多頭飼育崩壊など。解決せねばならない問題はまだまだ列をなしています。
その中で、今回はシニア犬を1匹でも幸せにするお手伝いができたことに、改めて寄付の可能性を感じました。
問題を知り、頑張る人たちを支援する――。
そんなお手伝いに関わることができたことに、心から感謝しています。
[前の回]「動物のために何かしたい!」 犬仲間がつながってチャリティーイベントを企画
(次回は2022年1月5日に公開予定です)
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