生い立ちが違う猫2匹、同時に迎えた 互いに友達でありライバル「一緒でよかった」

 猫好きな夫妻が結婚後、一戸建てに引っ越しして、保護猫を迎えることにした。1匹のつもりだったが気になる猫が他にいて結局2匹に。違うボランティア宅にいた生い立ちの違う2匹だが、おうち記念日は同じ日にあわせた。うまくやっていけるかな?と飼い主さんは心配したこともあったようだが……今はどんな感じか。2匹の様子について、尋ねてみた。

(末尾に写真特集があります)

数字入りの名前

「我が家の猫は今2歳。白に黒の模様がある猫が二々子(ににこ)で、黒猫が九太郎といいます。二々子は、今、1階の私の仕事部屋で寝ていて、九太郎は2階の居間で昼寝中です」

 飼い主のアートディレクターでグラフィックデザイナーの佳代子さんが、「可愛くて面白い」という愛猫たちについて教えてくれた。

 九太郎も二々子も超のつく内弁慶。ピンポンとベルが鳴るだけで散り散りに逃げて5秒後にはシーンとなる“幻の猫”と聞き、この日はリモート取材となった。

黒猫
匠の技で段ボールの簡易寝床を低くした九太郎(佳代子さん提供)

 九太郎も二々子もユニークな名前なので気になり、まずは名の由来を聞いてみた。

「夫の名が漢数字の一(はじめ)なので、猫2匹に数字を入れたくて。二々子は、漫画『鼻兎』に登場する白黒猫ニニコからもらい、九太郎は、1から2、3、4と数えていた時『きゅう』と鳴いたので決めました(笑い)。ふだん二々子は“ニニ”とか“にに太”。九太郎は“九”とか“きゅっきゅ”とか愛称で呼んでいます」

白黒猫
アートな模様が印象的な美少女、二々子(佳代子さん提供)

 家に迎えて1年半。数字入りの素敵な名をもらった2匹は「つかず離れずの猫らしい関係」になったという。

 だが最初は、うまくいくかな、とどきどきしたこともあったようだ。

2匹一緒のおうち記念日

 佳代子さんが二々子と九太郎と会ったのは、2019年11月。その半年前、猫を飼うために都内の今の一軒家に引っ越した。

「私も夫も猫好きで実家で猫を飼っていました。2年前に結婚した時はペット不可の賃貸に住んでいたのですが、ちゃんと飼える家に引っ越したら、困っている猫などをお迎えしたいねと夫婦でずっと話していたんです」

 そして2019年5月に引っ越しをしたのだが、なかなか出会いがない。自分から行動を起こさないといけないと思った時、買い物に訪れた埼玉県三郷市の「IKEA新三郷」で、たまたま猫の譲渡会の貼り紙を見て「こんなところでも譲渡会をするんだ」と思った。

「絶対行こう!と譲渡会の日を心待ちにして、夫と訪れました。私は実家で雄の大きな黒猫を飼っていたので、会場で黒い九太郎に目がいき、でっぷりしそうな片鱗(へんりん)も見えて、びびっ(笑)。でも会場をぐるっと回ったら、白い毛でお顔やお尻に黒の模様がある二々子が可愛くて、“あの子も”と気になりました。夫は選べないからと私に任せてくれました」

2匹の猫
個性豊かに、いい距離で成長中。「後ろの方は何してるのかな」(佳代子さん提供)

 九太郎と二々子は別々の保護主のブースにいたので、佳代子さんはそれぞれの保護主にあいさつをして、「2匹とも気に入ってしまったのだけど、大丈夫ですか?」と双方に尋ねた。すると、「大丈夫です。猫も仲良くなると思いますよ」と言ってもらい安心したという。

「ふたりのボランティアさん同士が友人で、『協力体制をとります』と言って下さり心強かったです。その日に申し込みをし、トライアルを兼ねて翌月、同じ日の同じ時間に2匹をそれぞれ連れてきてもらいました。九太郎は生後8カ月、二々子は推定生後4カ月でした」

予想外のケンカと立てこもり

 こうして2019年12月15日、猫たちがやってきた。迎えた当初は2匹ともカチーンと固まって互いを意識する余裕もない感じだったが、「徐々に慣れてくれれば」と思っていた。

 ところが、初日の晩、アクシデントがあった。

「最初二々子だけケージにいれて、九太郎は居間に出していました。でも二々子が小さくてケージをすりぬけて出て。ガシャンと音がしたので見たら、ケージの上に乗った九太郎が、『ここ俺の場所』と、(後からケージの上に乗った)二々子を落としたようで……二々子はけがはないけど、もうブルブル震えておもらしして……こんな時どうしたらいいんだっけ、と焦りました。2匹一緒がいいというのは自分のエゴだったのかな、と思ったりもして」

 佳代子さんはその晩、二々子を小さな箱にいれて、一睡もせずに様子を見た。朝になってボランティアに「自分のミスで(ケンカみたいになって)おもらしして」と報告すると、「そんなに弱気になっちゃだめ。ママさんがしっかりしないと」と励ましてもらったそうだ。

追いかけっこの後の猫
追いかけっこの後、シンクロ姿でそろって休息(佳代子さん提供)

 翌日、同じケージをもうひとつ買って並べ、それぞれが自分の寝床を確保できるようにした。これで不意な鉢合わせはない。だが二々子はまたするんとケージから出て、今度は人の手の届かない食器棚の下の隙間に籠城(ろうじょう)してしまったという。

「このまま人間が寝静まったら出てくる“家庭内野良猫”の日が続いたらどうしようと心配でした。それで、隠れた食器棚の近くにトイレとごはんを置き、キャリーバッグを簡易ベッドにできるよう食器棚の下に付けて置きました。屋根のある狭いところで安心できればいいなと思って」

 はらはらしながら見守っていると、二々子は1週間後の朝、ひょこっと出てきたという。

「なにごともなかったかのように居間に来て、驚いたし、うれしかったですね。こうして話すとすごく時間がかかったような感じですが、2週間のトライアルが終わるころには、2匹とも家に慣れてくれました」

 心配した2匹の衝突も、その後はなくなった。

個性的に育つ2匹

 佳代子さんは2匹を迎えた時からインスタグラムを始めたが、そこには、〈今日も面白い人たち〉〈ソファ下の神様の足〉など目を引くコメントとともに様々な写真が載り、猫との生活をエンジョイしている様子がわかる。

「前にも猫と暮らしていましたが、久々に一緒に生活すると新鮮でしたね。ちょっと驚いたのは、2匹とも家族以外の人に対して謎の恐怖感を持っていること。実家でも猫を3匹くらい飼ってきたけど、お客さんがきても逃げたりしないでふつうに接していました。ここまでビビるのは環境のせいかなぁとも思ったけど、これも個性ということで受け止めています」

 2匹のキャラは、時間とともにはっきりしてきた。女子はツンデレ(ツンツン)、男子はストレートなデレが多いといわれるが、佳代子さん宅は違うようだ。

「うちは、よくいわれる男の子の甘え方と女の子の甘え方が逆みたい。二々子はあまえたで、抱っこもひざに乗るのも大好き。夜、寝る時は布団にきて、毛づくろいをしてくれるつもりで、なでたらなめ返してくれます。九太郎のほうはぜんぜん布団には来ない。甘え方もやや歪曲(わいきょく)している。でも私たちがソファに座ったりリビングにくつろいでいると、もたれかかってきます。たまに誤作動が起きて(笑)、ベタ~となることもあります」

毛布をモミモミ中の二々子ちゃん(佳代子さん提供)

 二々子の方が年下だが、しっかりしてきれい好き。九太郎はやや面倒くさがり。

「二々子は、九太郎が起きてくると、おはよう、とぺろぺろとなめてあげることがある。そうすると、九太郎は『ありがとありがと』みたいな顔して、でも自分はなめない(笑)。九太郎はいつもほこりをつけてうろうろして、毛づくろいも苦手。自分を3、4回なめて終わり」

 2匹は食の好みも別。二々子はお魚系フードが好きで、煮干しのおやつに目を光らせるが、九太郎は“猫が好きそうなごはん”はあまり好まず。煮干しも「なんですかこれ」というクールな目で見るのだとか。

 しかし、窓の外の鳥を見ると、そんな九太郎の様子は一変する。

鳥を見てクラッキング中の九太郎(佳代子さん提供)

「鳥がくると、ケケケケ、とすごくクラッキングをするのですが、その後でカスタネットみたいにカタカタ口元で音を鳴らすので面白い。どこから音がしてるのか?と思うくらい。これは二々子にはない反応です」

2匹で迎えてよかったと思う時

 2匹は常に一緒にいるわけではないが、つるむこともあるという。

「時々共謀して追いかけっこしたり、家の中に小さな虫が出た時に、一緒に狩りをしたり。そういうのを見ると、一緒に迎えてよかったなって思います。お互いの存在が“張りあい”になって、友だちでありライバルみたいな関係なのかなと、見ていて感じます」

 片方が片方から、刺激を受けることもあるようだ。

「この頃、自動給餌機や自動給水機のように、アプリでも動かせる便利な道具がありますが、1匹がやるともう1匹がまねて、そうした道具も覚えてくれました。相互関係が見ていて面白いです」

怖がりからの脱却が夢

 猫が来てよかった。そう思うことが、夫婦関係などでもあるそうだ。

「猫の面倒を見るのではなく、人間が逆に2匹に世話をしてもらって、過ごさせてもらっている感じですね。今、私は在宅ワークが中心ですが、仕事をしている時も、見守ってくれているので安心感をもらいます。夫婦間もちょっと変化しました。2匹を迎えて猫中心の生活になりましたが、夫婦でちょっとしたことが気になって、行き違いのような感じになっても、猫がそこにすっといると、ふつうの日常に戻るんですよ……やはり猫って大きな存在です」

 佳代子さんの実家で飼っていた猫のムウは、5年前に17歳で旅立った。今は猫と暮らしていない60代のお母さんに、2匹のことを伝えているという。

「ムウ君がいなくなって母の気持ちがすごくおちてしまったので、テレビ電話で時々、九や二々子をみせてあげると、とても喜んでくれます。地方なのでなかなか会えないけど、2匹の成長をこれからも知らせていきたいです」

黒猫
佳代子さんが大学生まで一緒に過ごしていたムウ君(佳代子さん提供)

 まだ若い2匹に、佳代子さんが期待を寄せているのは、実家のムウのように長く生きること。そして、お客さんの前に姿を現してくれること。

「2匹とも家にきてから猫風邪の症状が出て治療をしました。九太郎は家にきてから下痢が1カ月くらい続き、二々子は1歳を過ぎて両目から涙がでて、ごはんも食べなくなって、病院で点滴をしてもらったことがあります。復活して元気になってよかった。シャイな性格については、今後どうかな~と思うけど、友だちに会ってもらいたいですからね。結局、誰もリアルに見たことがないけど、コロナがおさまったら友だちを家に呼びたいので、なにげなく出てきてほしい。2匹そろって怖がりからの脱却、夢見ています(笑)」

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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