「分離不安」について思うこと なぜ飼い主が離れると犬はパニックになるのか

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

分離不安かと思ったら

 犬には飼い主の姿が見えなくなると、パニックになる子がいる。パニックまでいかなくても、吠え続けたり、何かを破壊したり、体調を崩すこともあるという。それを「分離不安症」や「分離不安障害」というのだが、実は私も過去に悩んだことがある。

 先代犬の富士丸は3歳頃まで、ちょっと留守にすると決まって何かを破壊した。叱ったところで治まることはなく、困り果てて色々調べたところ「もしかして、分離不安じゃないか?」と思った。

 出かけるときに「じゃ、行ってくるね」とか声をかけると逆に不安になるから、30分〜1時間前から接しないようにして黙って出て行く。そうやって知らない間に飼い主がいなくなっている状況を作るといいとあったので、「そうなのか!」と思い、早速実践してみた。

 結果は同じだった。帰宅すると、やっぱりクッションなどが食い破られ中綿が散乱している。しばらく続けても変わらなかった。他にも色々試したが、駄目だった。「なぜなんだ、仕事で出かけないと行けないことくらい、どうして分かってくれないんだよ」と思い悩んだが、結果から言うと、富士丸は分離不安ではなかった。完全に私の思い違いで、以前に書いた通り『彼にも言い分があった』のだ。そのことに気がついたときには、ひたすら申し訳なく思った。

草の上にいる犬
現在の福助(まもなく7歳)

姿が見えなくなると吠え続ける犬

 いっぽう、完全に分離不安だなと思った犬もいる。知り合い夫妻と犬連れで旅行へ行ったときのこと。そこの犬は、飼い主の姿が見えなくなると慌てふためいていた。トイレに行っただけでも落ち着きなく歩き回り、吠えまくる。温泉に入りに行ったときも、車に残すとずっと吠え続けるというので、私が車に残り、早く出てきた飼い主と交代で風呂に入ったりしていた(それでも飼い主が見えなくなると吠え続けていたが)。

 その犬は、本当に片時も飼い主と離れたくないようだった。好きで仕方ないということもあるのかもしれないが、どうも慕っているというより、下に見ているという感じがした。

 要求があると、すぐに吠え、飼い主を呼びつける。そのため、出来る限り目の届く範囲に居て欲しいようだ。飼い主と犬の関係は人それぞれだと思うが、それではお互い窮屈だろうと思った。

けんかを売る犬
隙あらばけんかを売る子犬時代の福助

 なぜそうなるのか。見ていると、飼い主に原因があるように思えた。旦那さんはともかく、奥さんが溺愛(できあい)していて常に犬の要求に応えようとする。何かをしていても、犬が「かまって」と来れば、そちらに注意を向ける。犬はそれが当たり前になり、ちょっとでも相手にされないと吠えて抗議する。そして姿が見えなくなることが、我慢ならない。そんな感じだった。

 思うに、分離不安の原因は奥さんだろう。はっきりいえば「かまいすぎ」なのだ。犬は自分に注意が向けられたり、愛情を注がれることを望むが、常にそんな状態だとそれが当たり前になり、姿が見えなくなることが「異常」だと思うようになるのではないだろうか。

 犬が依存している状態ともいえるが、依存しているのは奥さんも同じなのだろう。本人たちが納得しているならいいが、制約が多くなるし、必要ない労力を使うから疲れる。実際、奥さんは困っていた。そんな場合はどうしたらいいかというと、オンとオフを分けることだと思う。

ベッドに横たえている犬
余裕の大吉

大吉と福助の距離感

 現在、私は自宅で仕事をしているが、仕事中は構わないようにしている。もちろん、散歩やゴハンといった最低限のことはもちろん、一日のどこかで遊んだりなでたりする時間は持つようにしているが、仕事モードになると相手はしないようにしている。

白い犬
仕事部屋に「遊ぼうぜー」とやってきた幼い頃の大吉

 幼い頃の大吉は仕事中に「何してんのー?」とか、「かまってよ」という顔でちょっかいを出してくることがあったが、チラッと見て「今は無理」と言うと、そのうち空気を読むようになる。そして、仕事中だと思ったら、特に何かを訴えてくることもなくなった。

 現在、仕事部屋には彼らのベッドも用意しており、春から秋にかけてはそこで昼寝しているが、なぜか冬になると、日中3階の寝室に消えることが多い。驚くことに、朝寝室に行ったまま15時頃まで降りてこないこともある(だから黙って出かけて帰宅すると、階段の上から「どこ行ってたんだよ!」と不満そうな顔をされることがある)。

 恐らく彼らの判断基準は気温ではないかと思う。なぜなら、1階の仕事部屋は冬寒く、3階の南向きの寝室は暖かく心地良いはずだから。逆に夏の寝室は暑いから下に降りてくる。なんてドライなやつらなんだろう。

机と椅子
現在の仕事部屋(冬場)

 というように、構うときはちゃんと向き合い、遊んで時々お出かけもするが、構わないときは構わないとオンとオフを分けると、犬はきっと分かってくれて、程よい距離感になる。そして、姿が見えなくなると狼狽えることもなくなると思う。

 この原稿は、寒い仕事部屋でオイルヒーターを付け、足元は電気フットヒーターに突っ込み、膝にはブランケットをかけて書いている。大吉と福助は、いない。たぶん3階の寝室で日向ぼっこしながら昼寝ている。これはこれで、ちょっと寂しい。

ベッドで寝ている犬たち
「あいつら何やってんだろ」と覗きに行くと

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穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この特集について
悩んで学んだ犬のこと
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