愛情をそそぐと犬の顔が変わる? イヌはヒトに共感する能力を持っている?

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

犬も感情が顔に出る

 犬と暮らした人は実感していると思うが、犬の顔は変わる。子犬が成長したり、年齢を重ねたりする中での変化はもちろんあるが、それとは別の意味で顔つきが変わることがある。無表情だった犬が、表情豊かな顔になったりする。

「犬はもともと無表情じゃない?」と思う人もいるかもしれないが、犬にも表情はちゃんとある。警戒しているとき、寂しいとき、つまらないとき、うれしいとき、そういう感情が表情に出る。

 暑くてハァハァしている顔が笑っているように見えることもあるが、笑い声こそ出さないもののうれしいときは明らかに広角があがって笑顔になることがある。逆に悲しいときはそういう顔になる。ただその幅が狭い犬と、広い犬がいる。ようするに、分かりにくいやつと、分かりやすいやつがいるのだ。

子犬 保護犬
迎えた当初の福助

 その違いは、飼い主との距離ではないかと思う。迎えてすぐの犬は、警戒心があったり、心を開いていなかったりするので、表情が硬い。実際、福助は迎えた当初、元野犬で捕獲されたときのトラウマからか、人間を一切信用していなかったし、常に目の奥におびえがあり、オドオドした顔をしていた。

 それが時間の経過と共に少しずつ警戒心が薄れ、表情が柔らかくなっていった。そして
今では警戒心ゼロのめっちゃ分かりやすいやつになった。大吉はある家で飼われていた雑種の母から生まれたので、人への警戒心はなかったが、福助を迎えてからは兄の表情に変わった。

多頭飼い
大吉が兄の顔に

 こういう例は他にもあり、たとえばノンフィクションライターの『片野ゆかさん』の愛犬マドは、成犬譲渡で迎えられたのだが、最初に会ったときは表情が硬く、やたらビビりな印象だった。しかし今ではお嬢様気質で、我が家に招いて「犬まみれ宴会」をしていると私のひざを前脚でチョンチョンして「ねぇそれ、私にも一口よこしなさいよ」と上から目線で要求してくるようになった。逆らえないオーラすらまとって。

 そういう変化には、愛情が影響していると思う。たっぷり愛情をそそがれて、可愛がられている犬ほど表情が豊かだからだ。それは散歩ですれ違ったり、何枚か写真を見ても分かるほど(実際に検証できないから確証は持てないが)。

外飼いと室内飼いでも顔が変わる?

成長した犬
少し成長したブサイク期

 犬と表情と飼い主の距離の関係は、メンタル面だけでなく、物理的な距離も影響すると思う。室内で常に飼い主の近くで暮らしている犬と、屋外の犬小屋で暮らしている犬の表情も微妙に違うからだ。屋外で飼われている犬は、室内飼いの犬に比べて表情が乏しいように見える。

 それは犬の飼い方の変化もあるので屋外が駄目という意味ではなく、お互いの顔を見る時間の差ではないかと以前から思っていた。なぜなら、私が子どもの頃に家にいた犬は、玄関の犬小屋で飼っていた。両親が家の中にあげるのを許さなかったからだが、40年ほど前はそんな風潮だった。玄関だけだとそれだけ接点は減る。その頃の犬と、大福の顔つきは全然違う。だから、一緒に過ごす時間が影響するのではないかと考えていた。

雑種犬
ずいぶん慣れてきた頃

イヌはヒトに共感できる?

 そしたら昨年、麻布大学熊本大学、名古屋大学などの研究チームが「イヌはヒトに共感する能力を有している」という研究結果を発表した。飼い主と犬に近い距離にいてもらい、同時に心拍をモニターしながら、飼い主に暗算などの心的ストレスを経験してもらうという実験を13組のペアで行うと、いくつかのペアで心拍変動解析の数値が同期化した。これにより、飼い主の情動変化が犬に伝染することがわかったという。しかも飼い主との生活が長くなるほど伝染しやすいそうだ。

 つまり、飼い主の感情が犬に伝わる、または読み取るということらしい。ただこれは特に驚くことではなく、多くの飼い主が「やっぱりそうか」と思うだろう。なぜなら日常でよくあることだからだ。たとえば、私が犬とはまったく関係のないことで機嫌が悪くなるとする。八つ当たりなんてしないし、口に出して文句を言うこともないが、なぜか大吉が申し訳なさそうな顔になることがある。その度に「いやいや、お前は関係ないから」と作り笑いで撫でなければならず面倒臭いので、あまり怒らなくなった。

仲のいい犬
大吉のものはオレのもの

大福の謎の能力

 犬は感情だけではなく、飼い主の行動もしっかり観察していて、予測する力もあるのではないかと思う。私が仕事中なのか、休日なのかも彼らは把握しているようだ。さらに、一緒に出かけるなんて一言も言っていないし、支度すらしていないのに「もしかして、遊び行く?」という顔で大福が色めき立つことがある。

 どこでそれを察知しているのか、謎だ。しかも私がひとりで出かけるときに支度をしていると、寝室に消えたりする。いったどんな基準で判断しているのだろう。

リラックスする犬
現在の姿

 そんな能力もあるくらいだから、愛情はしっかり伝わり、受け止めているのだろう。それが表情に表れるのだと思う。今はひとつ楽しみにしていることがある。友人の平田家が、少し前に保護犬のモグちゃんを迎えたのだが、崩壊したブリーダーのところでろくに散歩に行ったこともなかったため、要求することを知らず、この前遊びに来たときには顔もまだ少し無表情だった。平田家は犬に甘々だから、これからどう変化していくのか。

保護犬
モグちゃん

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犬の笑顔が見たいから
著者:穴澤 賢
発行:株式会社世界文化社
定価:1,500円+税
A5判 192ページ
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穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この特集について
悩んで学んだ犬のこと
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