岩合光昭監督が撮った2つの物語 水上と大地で生きる、あるがままのネコたち
今月、ネコ映画としてご紹介するのは、NHK BSプレミアムの番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」でおなじみの世界的な動物写真家、岩合光昭が監督したネコたちのドキュメンタリー映画『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』です。
岩合監督、待望の2作目
まさに「真打ち登場!」という感じでしょうか。ネコを撮らせたら日本一と言っても過言ではない岩合監督が1年を掛けて撮影した本作は、頭からシッポまで、ネコ尽くしの映画となっています。中村倫也による、ネコに寄り添ったナレーションも心地いいんです。
今年で御年70歳となった岩合監督は、2019年に落語家・立川志の輔を初主演に迎えた映画『ねことじいちゃん』で、映画監督デビューをされました。同作は、70歳の大吉と飼い猫タマとのほのぼのとした人間ドラマが好評を博しましたが、今回の監督2作目は、まさにネコたちが主役です。
これまでに世界中のネコとふれ合ってきた岩合監督が、映画の舞台として選んだのは、ミャンマーのインレー湖と、北海道の牧場です。本作では、2つのロケーションで撮影された物語が並行して進んでいきます。
ミャンマーのインレー湖 手作りの家に暮らす家族とネコ
インレー湖では、湖上に立つ手作りの家で暮らす家族とネコたちの日々がつづられます。父ネコのエーワーと母ネコのメーワー、その娘シュエと息子グェの4匹は、毎日家の柱を上手に渡って移動します。時には飼い主の人間と小舟に乗ることもあるよう。
エーワーとメーワーは常に仲良しでラブラブの様子。岩合監督によると、ここまでつがいの親ネコが、一緒にいるケースは珍しいとのこと。そんななか、やんちゃな子ネコたちは、興味津々にあちこちを動き回ります。
うっかりシュエが、柱から足を滑らせ、湖に落ちてしまった時、メーワーは焦りながら一生懸命手を伸ばして娘を救おうとします。見ているほうもハラハラしましたが、その時はこの家の少年がシュエを救い上げてくれてひと安心。少年とネコが、おでこを合わせてコッツンする姿にも胸がキュンとなります。
やがて、メーワーから泳ぎを仕込まれた子ネコたちが、湖をすいすい泳げるようになりますが、見ている側も親目線で成長を見守ってしまいます。ネコたちは環境に順応し、湖上生活を満喫しているようですね。
「ここにいると、ネコと人がひとつの家族に思えてきます。ただ生きるということが、このうえなく尊く思えてきます」と、ナレーションでも語られますが、まさにネコと人間の種を超えた絆を感じずにはいられません。
北海道の牧場に住む大所帯のネコ親子
ところ変わって、北海道の牧場では、親牛牛舎と子牛牛舎それぞれに住むネコの親子たちが大所帯で住んでいます。特にフィーチャーされるのが、親牛牛舎に住むボスネコのヒメと、なかなか親離れできない息子カーショ、子牛牛舎に住むビッグマザーのチャカスケと、その息子デイジーとサボです。
牛舎ならではのおすそわけということで、栄養たっぷりな牛のミルクをおいしそうに飲むネコたち。「人にかわいがられて生きるネコは人が好きです」というように、ネコたちは、時に牧場のスタッフの作業中に、「かまって」と言わんばかりに茶々を入れますが、そのあしらわれ方にも愛情が感じ取れます。
ネコたちが牧草のうえでじゃれ合えるのも、牛舎ならではの醍醐味(だいごみ)かと。なかには、まるで子牛と兄弟のようにスキンシップをし合うネコの姿も見受けられます。
また、ネコたちにもそれぞれに個性があるようです。やたら喧嘩っ早いボスネコが仁義なき戦いを繰り広げたり、いつまでも母離れできない甘えん坊の子ネコがいたりと、それぞれにドラマがありますが、そういう点は人間社会と同じなんだなと、改めて思いました。
それにしても、ここぞとばかりにネコたちのベストショットを収められたのは、岩合監督ならではの熟練技かと。まるで自分がネコになったような目線で、ネコたちの日常をのぞいているような気分になれそう。
まだまだ続くコロナ禍ですが、ネコたちのあるがままのたくましい姿を見ていると、なんだか生きるエネルギーをもらえそうな気がします。
- 劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族
- 2021年1月8日(金)より全国ロードショー
公式サイト
監督・撮影:岩合光昭 ナレーション:中村倫也
配給:ユナイテッド・シネマ、映像提供:NHK
©「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き 2」製作委員会 ©Mitsuaki Iwago
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