少年レミと旅する芸達者な犬の曲芸に拍手! 実写映画化『家なき⼦ 希望の歌声』

家なき子 希望の歌声
© 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUS FACTORY – UMEDIA

 今月のイヌオシ映画は、言わずとしれた児童⽂学の⾦字塔を完全映画化した『家なき⼦ 希望の歌声』です。過酷な運命に翻弄(ほんろう)されながらも、ひたむきに生きるレミ少年が主人公の感動作ですが、彼と共に旅をする芸達者な犬・カピは、今回も重要なキャラクターとなっています。

フランスの名優陣が参加する名作

 フランスの作家、エクトール・アンリ・マロによる名作「家なき子」の映像化作品といえば、1925年制作のサイレント映画から始まり、数多くの実写映画やドラマのほか、様々なアニメーション作品が作られていて、時代を越えて愛されてきました。

 日本では70年代に少年とカピをフィーチャーした「ちびっ子レミと名犬カピ」や「家なき子」など、東映動画作品が子どもから大人まで幅広い層に親しまれ、90年代にはテレビアニメ世界名作劇場「家なき子レミ」が、お茶の間でも人気を呼びました。

 今回の『家なき⼦ 希望の歌声』は、名作を生んだ母国フランスが放つ勝負作ということからか、フランス映画界きっての名優陣が参加しています。

 例えば、『八日目』(96)のダニエル・オートゥイユや、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)のジャック・ペランなどのレジェンド俳優や、『8人の女たち』(02)の人気女優リュディヴィーヌ・サニエといった顔ぶれを見るかぎり、かなりの“本気度”がうかがえます。そんな大物と堂々わたり合ったのが、主人公・レミ役のマロム・パキンで、劇中ではなんとも麗しい天使の歌声を披露しています。

 11歳になるレミは、やさしいママ(リュディヴィーヌ・サニエ)と貧しいながらも幸せに暮らしていました。ところがある日、出稼ぎから10年ぶりに戻ってきたパパ、ジェローム(ジョナサン・ザッカイ)の口から、自分が捨て子だったという衝撃的な事実を知らされます。

 レミが拾われた時、高級な産着にくるまれていたことから、ジェロームは金持ちであろうレミの両親から礼金をふんだくろうとたくらみます。ところがその当てが外れたため、レミを老いた旅芸人のヴィタリス(ダニエル・オートゥイユ)に売り飛ばしてしまいます。

家なき子 希望の歌声
© 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUS FACTORY – UMEDIA

胸に迫る熱演をする忠犬カビ

 大好きなママと引き離され、悲嘆に暮れていたレミを、最初になぐさめてくれたのが、一座の忠犬、カピでした。無邪気に顔をぺろぺろなめられ、笑顔を取り戻すレミ。カピの相棒的存在、キュートな猿・ジョリクールも愛嬌(あいきょう)たっぷりで、“犬猿の仲”ところか、カピとは非常に仲が良く、見ているだけでほっこりします。

 カピ役を演じるわんこは、サーカスで芸の訓練を受けたボーダーコリーのダークネスくん。実際に路上でのショータイムでは、華麗な曲芸を見せていて、思わず拍手! また、ジョリクール役のオマキザル、ティトくんも表情豊かで、人間顔負けの存在感を発揮。ちなみに、あまりにも2匹の演技がすばらしすぎて、最初はCGじゃないかとうたぐってしまいました。ごめんなさい!

家なき子 希望の歌声
© 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUS FACTORY – UMEDIA

 それにしても、カピは人間さながらに、ヴィタリスやレミの良き仲間であり、彼らに牙を向ける宿敵からは身を張ってかばおうとするし、彼らが元気のない時は、心配そうな表情で見守ってくれます。特に吹雪のなか、体力と気力を奪われたヴィタリスが「さよなら、友よ」とカピに語りかけるシーンでは、胸に迫る大熱演を見せてくれます。

出会いが人生を彩る

 原作どおり、怒濤の展開を見せる本作ですが、この映画ならではのアレンジも秀逸です。元有名ヴァイオリニストであるヴィタリスが、レミの歌の才能を見いだし、導いていくというくだりが入ったことで、心洗われる音楽映画としての要素も加わりました。⽇本語吹き替え版を務めた熊⾕俊輝の透き通った歌声も大いに琴線を揺さぶります。

 また、本作を観終わった時、出会いが人生をいかに彩るかということを改めて実感しました。挫折や困難で身動きが取れなくなっても、救いの手が入ることできっと道は開ける。レミは、ヴィタリスやカピ、ジョリクールとの交流を通し、人生に希望を見出していきます。

 そして劇中で、ヴィタリスはレミの恩人となりますが、最終的にはヴィタリス自身も彼との出会いによって恩恵を受けたのではないかと。実は、ヴィタリスの“贖罪”も描かれていくことで、より一層、深い余韻を残します。折しもコロナ禍で、人と人との交流が難しい今、本作は、人として忘れてはいけない何かを思い出させてくれる珠玉の1作だと思います。

家なき子 希望の歌声
© 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUS FACTORY – UMEDIA

『家なき子 希望の歌声』は11月20日(金)より全国公開中
公式サイト:http://ienakiko-movie.com/ 
監督・脚本:アントワーヌ・ブロシエ 原作: エクトール・アンリ・マロ
出演:ダニエル・オートゥイユ マロム・パキン ヴィルジニー・ルドワイヤン ジョナサン・ザッカイ ジャック・ペラン リュディヴィーヌ・サニエほか 
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
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山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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