犬の飼い主は「群れのリーダー」であるべきか 厳しいしつけより信頼関係が大切

 先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。

(末尾に写真特集があります)

厳しく接してみたけれど

 犬には厳しく「しつけ」をした方がいいと思っている人がいる。散歩するときは飼い主より前を歩かせない。前に行こうとするとリードを強く引っ張る。言うことを聞かないときは「NO!」と叱る。特にはじめて犬と暮らす人に多い気がする。

 これは「アルファシンドローム」といって、飼い主が犬よりも上だと教えるリーダーシップ理論によるもの。だから群れ(家族)の中で、飼い主がリーダーであることを示すため、軍隊のように犬に厳しく接するという考え方だ。

 かくいう私も、かつて富士丸と暮らし始めた当初は、「しつけ本」などを読んでそうしなければいけないと思っていた時期がある。リーダーだと認められていないから、言うことを聞かない、ぐいぐい引っ張る、あらゆるものを破壊するのだと。しかし厳しくしても効果はなかった。悩んだこともあるが、結果的にそれは間違いだったと知った。

ソファに潜る犬
好奇心の塊だった子犬時代

 ぐいぐい引っ張るのは若さゆえパワーが有り余っているのに運動量が足りていなかったからで、破壊は抗議であり、言うことを聞かないのは、彼にも主張があったからなのだ。そのことに気が付いたのは、彼が3歳半くらいになって少し落ち着いてからだ。「そうだったのか、すまん」と申し訳なく思ったものだ。

 ちなみにアルファシンドロームの発祥地であるアメリカでは現在すでに否定されている。犬は「群れ」ではなく、人間と同じように「家族」だと認識しているという考え方が一般的だ。(詳しくは「平成犬バカ編集部/片野ゆか」などを読んでみてね)

犬も話せば分かってくれる

おりこうさんな犬
ほとんど手のかからない優等生

 ではどうすればいいのかというと、ここからは私個人の考えだが、ゆるくていいと思う。もちろん「噛む」、「うなる」、「人や犬に攻撃的」なのは駄目だが、それ以外はたいした問題ではない。なかなかトイレを覚えてくれないなど困ることもあるが、『彼らにも言い分はある』で書いたようにそれはある程度時間がかかるものなのだ。

 それよりも、信頼関係を築くことが大切だ。厳しくするとお互いギスギスするし、全然楽しくない。だからたくさん愛情を注いで絶対裏切らないと分かってもらうようにする。あとは自由にさせて、止めて欲しいことだけ「それ止めて」という。とはいえ、『飼い主は「諦めない精神」と「諦めの境地」を使い分ける』で書いたように、これにもそれなりに時間がかかる。けれど、犬はいつかきっと分かってくれる。

仰向けに寝る犬
この頃は雷も平気だった

 それ以外に私が強く意識したのは、「犬の動きを止める」ことだ。なぜなら、もしリードを落としてしまったときに犬の動きを止められないと、交通事故に遭う可能性があるからだ。だから「待って」といえば、その場で止まる練習をした。ビタッ!とまではいかないが、大吉と福助はまぁまぁ出来る。その前にリードを落としたとしても、どこへも行かないのだが、念の為。

 それと、私は昔からいわゆる「コマンド」は一切使わない。叱るときに「NO!」というのは、犬は英語の方が理解しやすいからという説もあるが、経験上そんなことはないし、富士丸にもずっと「ちょっと、それ止めて」とか普通に話しかけていた。犬は「NO=叱られている」と解釈しているだけで、何語で話しても理解する。言語というより、声のトーンと表情で感情(要求)を読み取っているだけだと思う。

成長した犬
少し成長した頃

それぞれの関係が成立していればいい

 信頼関係といっても、要求をすべて飲むわけではない。「家族」だと認識していたとしても、犬は自分の方が偉いと勘違いすることがある。そうなるとわがままな駄々っ子状態、もしくは俺様状態になるので、私は要求が飲めないときは無視する。

飼い主と遊ぶ犬
しょっちゅう戦いを挑んできた

 大吉は子犬の頃、かまって欲しいとほえたりしていたが、仕事中は無視した。するとそのうちほえても無駄だと学んだらしく、ほえなくなった。同様に福助も仕事中にかまって欲しそうにすることはない。その代わり、朝など一日どこかで必ず彼らと一緒に遊ぶ時間を作っている。

 今では彼らの顔を見れば、だいたい何を考えているのか、どうして欲しいのか分かるようになったし、きっと彼らも私のことを分かってくれている。そんな関係になったが、優等生の大吉はさておき、破壊王だった福助には手を焼いたし、困ったこともあった。そんな時期を経て何の手もかからなくなった。

1歳の犬
1歳の頃

 だからもし今悩んでいる人がいても、何とかなると思う。ここに書いたのはあくまでもわが家のケースでそれが正しいとも思わない。「理想の家族像」があっても、現実にはそれぞれ全然違う家庭のように、犬との関係もそれぞれ違う。ただ、「しつけ本」に頼りすぎない方がいいと思う。

多頭飼い
その後、福助を迎える頃にはすっかり大人に

 私にも、犬との理想像がある。よく海外の牧場などで、主のバギーの後部座席に犬が飛び乗って一緒に牧場へ行き、そこで羊を追ったりして一緒に働いて、またバギーに乗って一緒に帰る。そんな姿に憧れるが、わが家には牧場もなければ、犬に与えるべき仕事もない。なので今も大吉と福助は私の後ろで暇そうに昼寝している。

2匹の寝る犬
そんな大吉も9歳になった

【関連記事】シャンプー後に全力で逃げる犬 飼い主は「諦めない精神」と「諦めの境地」を使い分ける

犬の笑顔が見たいから
著者:穴澤 賢
発行:株式会社世界文化社
定価:1,500円+税
A5判 192ページ
(書影をクリックすると、アマゾンにとびます)
穴澤 賢
1971年大阪生まれ。フリーランス編集ライター。ブログ「富士丸な日々」が話題となり、犬関連の書籍や連載を執筆。2015年からは長年犬と暮らした経験から「デロリアンズ」というブランドを立ち上げる。2020年2月には「犬の笑顔を見たいから(世界文化社)」を出版。株式会社デロリアンズ(http://deloreans-shop.com)、インスタグラム @anazawa_masaru ツイッター@Anazawa_Masaru

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この特集について
悩んで学んだ犬のこと
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