犬を飼いたいあなたへ お金、時間、介護…大変だけど大丈夫?

 現在、コロナ禍で自宅勤務や、自粛生活をしている方が多いと思います。そんな中「ペットがいたら癒されるかも」と考えて、ペットを飼うことを検討されている方にお伝えしたいことがあります。

(末尾に写真特集があります)

 筆者はこのコロナ禍の最中に、17年間をともに過ごした、大切な愛犬(17歳3カ月/パピヨン)を亡くしました。子犬の頃はひとときも離れたくないほど愛らしく、日々のお散歩では癒され、老犬になってからは介護生活を送りました。介護をさせてもらえる時間があったからこそ、この17年という歳月に後悔がありません。

 犬を飼うのは楽しいこと幸せなことだけではなく、大変なことが多いのも事実です。では、飼い主としてどんな心構えがあればいいでしょうか。

痴呆になってからトイレの場所がわからなくなり、オムツ生活を開始。
痴呆になってからトイレの場所がわからなくなり、オムツ生活を開始。

 犬は大型犬で約10年、小型犬で約15年平均して生きると言われています。一般的に人間の7倍の速度で歳をとると言われていますが、いずれにせよ、10年以上、生活を共にするわけです。

 子犬や子猫は本当にかわいいですよね。でも、ペットのためにご自身の生活を犠牲にして、ずっと愛することができますか? 一時期的な「さみしいから、暇だから、時間があるから」という人間の都合でペットを飼おうとしていませんか?

犬を飼うにはお金がかかる

 もし今、生後2カ月のかわいい子犬を引き取ったと仮定します。まず、その子犬のためのケージ、トイレ、餌、給水器などの初期費用が発生します。そして0歳ではお散歩デビュー前までに、推奨されているワクチン接種が数回必要になります。

 ペットを飼う際には自治体への登録手続きが必要ですが、その後、毎年、狂犬病の予防接種を有料で受けさせることが義務付けられています。

毎年、自治体から狂犬病予防接種の案内が届く。
毎年、自治体から狂犬病予防接種の案内が届く。

 また、爪切りや肛門腺を絞るなどが自宅でできない場合、もしくは毛のカットが必要な犬種だと、毎月トリミングを依頼することとなります。

 ペットが体調を崩したら、動物病院へ連れていくことになります。今は手厚いペット保険がありますが、手厚い保険であればあるほど、保険料は安くありません。保険に入らない場合、1回の診察で最低でも数千円から数万円の診察、治療代がかかります。人間と違い、保険料3割負担ではないので、処方される薬もかなり高額です。10年間でどれだけ病院に連れていく可能性があるでしょう。

 このように犬を迎え入れたら10年以上は餌代、トイレシーツ代、トリミング代、医療費、予防接種費が必要です。その費用をきちんと払えるだけの、経済的な余裕はありますか?

ペット不可の住まいが多い

 犬を飼うためには、犬が飼える家であるかどうかがとても重要です。戸建ての持ち家なら問題はありませんが、持ち家でも分譲マンションの場合、マンションの管理規約によっては「ペット不可」とされていることがあります。

ジャケットの上に寝るのがお気に入りでした。
ジャケットの上に寝るのがお気に入りでした。

 とくに気をつけなければならないのは、賃貸物件に居住する場合です。ペット可の賃貸物件は多くなく、契約時に「無条件で償却される敷金1か月分」を課せられる物件がほとんどです。ペット不可の物件において無断でペットを飼って、のちにトラブルになり裁判になった例も今まで多くあります。

時間も手間もかかる

 犬を飼いはじめたとき、そのかわいさに癒されることでしょう。しかしながら生きものですから、毎日、水と食事、そしてお散歩が必須です。

愛犬の健康管理には、毎日のお散歩が必須。
愛犬の健康管理には、毎日のお散歩が必須。

 自粛生活で「今」時間があってお散歩に毎日行けたとしても、平時に戻って忙しい日々の中で、毎朝、毎晩、お散歩に連れていくことはできますか? 自分の暮らしにペットを合わせるのでなく、ペットの暮らしに自分の生活を合わせることを考えたとき、その生活が本当にできますか?

痴呆、徘徊、排泄 老犬介護 

 個体によりますが長生きする犬は、体の健康より先に痴呆が進むことが考えられます。筆者のうちの亡くなったパピヨンの場合、15歳頃から耳が遠くなり目が悪くなりはじめ、体は健康だけど16歳頃から痴呆が進み夜中に家の中をずっと徘徊している時期がありました。

 トイレの場所がわからなくなったため、まったく別の場所で排泄して床を汚すことが多く、オムツを着けざるを得なくなりました。亡くなる前の3カ月間は、足が立たなくなり排泄する際には介助が必須でした。

 そして、亡くなる前には肺炎で低酸素となったため、酸素濃縮器をレンタルして24時間酸素を供給していました。

自宅にて酸素濃縮器で高濃度酸素の供給をしていた。
自宅にて酸素濃縮器で高濃度酸素の供給をしていた。

亡くなったら火葬か埋葬、納骨の維持費も

 日本では、犬猫などのペットが亡くなったとき、火葬が一般的です。埋葬も法律的には認められていますが、自己所有の土地内のみ許されているので、都心部のマンション暮らしなどの場合は、火葬になることが多いでしょう。

 ペット霊園などで火葬をしてもらい、お骨を預ける場合はその維持費がかかります。生きている間だけでなく、亡くなってからもきちんと供養し続けることができるでしょうか?

ペット霊園で個別の火葬を依頼し、お骨を自宅に持ち帰ることができた。
ペット霊園で個別の火葬を依頼し、お骨を自宅に持ち帰ることができた。

ペットを迎えるか 長期的な視点で

 生後数カ月で飼い主に引き取られるペットにとっては、飼い主の愛情がすべてです。とくに犬に関しては、非常に飼い主の存在が大きく、丸1日、飼い主の姿が見えないことで、ストレスを感じてしまう子も少なくありません。

 旅行に行くときペットはどうしますか? もし自分が病気になって入院したとき預ける先はありますか? 迎え入れる子にさみしい思いをさせずに暮らすことは可能でしょうか。

いつも自分から飼い主のバッグに入って、一緒にいたいとアピールしていた愛犬。
いつも自分から飼い主のバッグに入って、一緒にいたいとアピールしていた愛犬。

幸せなペットライフを

 ペットはおもちゃではありません。家族です。愛犬を亡くしてから1カ月以上経ちましたが、泣かない日はありません。長い期間、自分の時間を犠牲にしても、きちんと最後まで面倒をみられるという「覚悟」を持って「ペットを飼うか・飼わないか」をあらためて考えることをおすすめします。

 筆者のケースを振り返ると、17年間、この愛犬と過ごすことができてとても幸せでした。愛犬が0歳〜1歳の頃はどんな姿もかわいく、ひとときも離れたくなく、外出するときはどこにでも連れて行っていました。

 2歳頃〜14歳頃までは、毎日のお散歩と日々の触れ合いに癒されていました。15歳からは介護で大変な日々でしたが、その介護をさせてもらえる時間があったからこそ、この17年という歳月に後悔がありません。今はただただ、「ありがとう」とお骨に手を合わせ、亡くなった愛犬に感謝する毎日です。

 ペットを飼うという事は正直、大変なことが多いですが、それ以上に飼い主に幸せな時間を与えてくれます。今からペットを飼おうとしている方、愛犬が亡くなったときに後悔のないよう、大切に時間を過ごしていただきたいと思います。

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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