猫と出会い少年の夢は広がった 「1匹でも多く幸せにしたい」
小学生の頃に1匹の猫を飼い始めてから猫に興味を持ちはじめ、捕獲や預かり、譲渡会の手伝いなどをする男子中学生がいる。幼い頃から子役として芸能活動も続けているが、猫たちの幸せを願い、将来の夢が広がってきたという。猫への思いを聞いた。
飼い猫3匹に預かり猫も
住宅地にある一軒家を訪ねると、爽やかな笑顔で黒尾怜央君(14歳)が迎えてくれた。
「うちの飼い猫は3匹ですが、預かり猫もいます。女子は気むずかしくて隠れました(笑)」
棚の陰から、目の大きなサビ猫がチラ見をしている。
「あの子が推定5歳のえびちゃん。僕が小学5年生の頃に家に来たんです」
サビ柄の女王様を迎えて
怜央君はそれまでペットを飼ったことがないものの、猫には強い興味を持っていた。小学3年生の頃から始めた芸能活動(芝居やミュージカルなど)のため、ボイストレーニングに通っていたのだが、先生の家にメスの黒猫がいて、レッスン後におやつをあげていたという。
「可愛いけど触らせてくれない女子で(笑)。でもうちにもいたらいいなと思って…。5年生の時にスマホで調べていたら、県内の保護猫カフェ『ねこかつ』のブログを見つけて、お母さんと直接訪ねてみたんです」
たくさんいる中で、「この子がいい」と声をあげたのはお母さんだった。ケージの奥に隠れていたサビ猫が気になり手をいれると、お母さんの手にぎゅーっとしがみついた。
「その瞬間キュンとなって。代表には『その子は人に懐いてない』と言われましたが、家にいてくれるだけでいいと思ったんです」とお母さん。
そうしてお母さん“推し”のえびちゃんがやってきた。代表の言う通り、シャイで怒りっぽく、いつもシャーシャーして体をなでることもままならなかった。だが怜央君が眠ると、えびちゃんは自ら近づいて添い寝をしたという。
「猫ってプライドが高い」と思った怜央君は、女王に尽くすしもべのように、えびちゃんに接した。しかしその2カ月後、“すべての猫がそうではない”ことを知る。まったく違うタイプのオス猫、イーグルを家に迎えることになったのだ。
ゴルフ場に捨てられた甘えん坊
「イー君は今は静かだけど、ワケありでしばらく家で大騒ぎでした」
イーグルと出会ったきっかけは、怜央君が保護猫団体「ねこけん」のブログを読んだことだった。「鳴き声がうるさくて(3歳で)ゴルフ場に捨てられた」と書いてあり、さらに読み進めると、「一緒に寝てくれる」とあり、怜央君の心は「よーしっ」と高鳴った。
都内の譲渡会に会いにいくと、イーグルは最初から気を許し、抱っこをさせてくれたという。譲渡条件には〈一軒家で、家が隣り合ってないこと〉とあり、庭を挟んで隣の家が建つ怜央君の家はうってつけだった。申し込みをして、まもなくトライアルが始まった。
ところがすぐに、夜鳴きが始まったという。
「一階の窓の外に向かって大声で鳴いて皆眠れないので、お母さんだけリビングで寝て、イー君と遊んであげていた。お母さんはイー君とつきあうために会社も休んだんです(笑)」
どうなることかと思ったが、家族が真摯に向き合うことで、イーグルの夜鳴きは一カ月程度でおさまり、優しい“いい子”に。怜央君は「猫って接し方で変わるし、毛色でキャラも違うんだ」と驚いた。
「イー君はえびちゃんにもあいさつにいくけど、“気安く来ないで”と蹴散らかされていた。やっぱ女王様は強いんだ~(笑)。でもイー君だってなかなか立派なとこがあるんです」
ある日、お母さんが「机の上を片付けなさい」と怜央君を大声で叱っていると、イーグルが飛んできて、叱るな~というように、ふたりの間に立ちはだかったのだ。この行動に感激した怜央君はイーグルとの絆を深め、ますます猫に興味を持ったそうだ。
けがした猫を庭で捕獲
えびちゃんとイーグルが来て以来、部屋に猫グッズが増え、一階のガラス張りのサンルームも猫部屋にした。すると、庭に野良猫が現れるようになった。
2年前の冬、茶白柄の野良猫が脚にけがをしていることに気づき、ねこかつに相談し、捕獲器を借りた。なかなか入らなかったが粘り強く待ち、半年後にようやく捕まえて、ちゃー君と名付けた。
「ちゃー君は推定5歳。エイズキャリアだったのでTNRも考えたけど、ねこかつさんやねこけんさんに相談したら、『猫同士でかみ合うような喧嘩をしなければ大丈夫』と教わり、家で飼うことにしました」
警戒心がとても強かったちゃー君も、だんだんと家族に慣れ、しばらくすると甘えん坊の“抱っこマン”に変わった。気のいいイーグルが何でもちゃー君に譲る面があるので、気をつけているのだという。
猫たちと過ごすうちに夢が広がる
怜央君はこの4月から中学3年生。数年来、猫たちに囲まれて過ごしてきたが、「(猫が)いてくれてよかったな」と振り返る。
「学校で友達とけんかしたり嫌なことがあって帰っても、猫と触れあうといつもすっきりした気分になったんです。それに、将来の夢も変わってきて…」
幼い頃から『雪のプリンセス』や『ローエングリン』『リサとガスパール』などミュージカルを中心に子役として活躍してきたこともあり、夢はもともと物語(台本)を書くことだった。だがいつしか「猫と、猫を助ける人のためになりたい」と思いはじめたという。
「今は保護活動に力を入れて、預かりや譲渡会のお手伝いもしているけど、将来は獣医師になって、保護猫活動をしている団体に手術代などの支援もできるといいなと思います。一匹でも多く幸せになってほしい」
話を聞き終えると、猫たちが怜央君の側に、1匹、2匹と集まってきた。
「イー君、おやつあげようか。えびもこっちこっち。ちゃー君もおいで」
優しい声で、猫たちを呼び寄せた。
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