林に捨てられ、骨折していた子猫 それでも見つかった温かな家

   ゴミ捨て禁止の看板が立つ雑木林に、何匹かの猫と、使っていたとおぼしき皿やシーツが捨てられていた。子猫2匹が保護された。そのうち1匹は車にひかれたのか、足の骨が折れていた。それでも、しばらくすると、その子猫に良縁が巡ってきた。一度捨てられた子猫が今どんな暮らしをしているのか、保護主と一緒に会いに行ってみた。

(末尾に写真特集があります)

   埼玉県の家を訪ねると、母の久美子さん(49)と、娘の麻緒さん(21)が笑顔で迎えてくれた。

「ぷぅーちゃん、よく食べて元気ですよ」

「毛艶もいいでしょう?」

久美子さん、麻緒さんとぷぅー。「大きくなったね」

 近況を伝える母娘のまわりを、生後8カ月ほどのオスの茶トラ猫がうろうろしている。人が好きなのか話の輪の中に入り、こちらの膝に飛び乗ってきた。

「この子は本当に物怖じしない(笑)。前も家庭で飼われていたんでしょうね……」

 久美子さんの言葉に、「虐待は受けてない感じ」と麻緒さんもうなずく。ぷぅーちゃんは今の生活からは想像もできない“殺伐とした場所”に置き去りにされていた猫なのだ。

ゴミが不法投棄された雑木林に猫

   ぷぅーちゃんが、埼玉県川越市内の雑木林で発見されたのは、昨年9月だった。猫の保護活動をしている保護猫カフェ「ねこかつ」(川越市)に、「猫が数匹捨てられている」と通りかかった人から連絡があった。そして、すぐに捕まえることの出来たぷぅーちゃんが、まず「ねこかつ」に届けられた。

   同行した保護猫カフェ「ねこかつ」代表の梅田達也さんが振り返る。

「立てるけど左後ろ脚がふらふらで、病院で診てもらうと、折れていて……。車にひかれたんでしょう。すぐに手術をお願いして、プレートで固定してもらったんです」

ぷぅーが兄弟たちと捨てられていた林(提供写真)

   まだ同じ場所に猫が数匹いると聞いて、梅田さんが夜中の雑木林に行って捕獲器を仕かけると、翌日ぷぅーちゃんとそっくりなオスの茶トラの子猫が入っていた。兄弟らしかった。

「兄弟は怪我をしていませんでしたが、ほかの猫は見当たりませんでした。『ゴミ捨て禁止』と看板が立てられた所に、それまで使っていたような、お皿やシーツやキャリーバッグなどが一式、捨ててありました。餌も置いてありましたが、どんなに寒くてこわかったことか……。ゴミだって捨ててはいけない場所に、なぜ平然と命を捨てるんだか」

 ぷぅーちゃんの手術費用は、プレートを外す手術も含めて「ねこかつ」が負担する。2匹はこうして幸運にも命を救われ、カフェで新しい家族が見つかるのを待つこととなった。

足が悪くても一目ぼれ

 ぷぅーちゃんが久美子さんの家族と会ったのは、手術からちょうど1カ月経った頃。

   家には先住のオスのキジシロ「ちぃーちゃん」(6歳半)がいて、一家は、遊び仲間になる猫を迎えたいと思っていた。

「ちぃーちゃんは6年半前、息子が近くの沼で拾った猫なんです。赤ちゃんの時から“ひとりっ子”として、おっとり育ちましたが、年とともに動かず寝てばかりに。このままだと刺激がないし、良くないねと家族で心配していました。そうしたら夫が保護猫カフェに行こうかと提案してくれました」

ねこかつに保護されていた時(提供写真)

 お金を出して動物は買いたくない。拾って相性が合わないと保護先を探さないといけない。保護カフェなら、相性を確認するトライアルの仕組みもある。家族みんな賛成した。

「ちいーちゃんは静かだけど、少しかみ癖がある。抱っこが苦手で“ふみふみ”もしない。だから遊び仲間は、あまり小さくなくて、猫にも人にもフレンドリーな子が理想でした。色は白か、茶トラがいいなと思っていました」

 まずは久美子さんと夫で「ねこかつ」に保護猫を見に行き、目に留まったのが、ぷぅーちゃんだった。ケージのそばに寄ると、すりすりと近づいてきた。なぜケージに入れているのかとスタッフに尋ねると、遺棄された背景とともに、「足を骨折して、プレートで固定する手術をした」と教えられた。抱っこをしてみると、久美子さんの胸の中で、憧れの“ふみふみ”をした。

「胸キュン」状態だったが、その場では決めずに、写真を撮って子どもたちに送った。翌日には娘の麻緒さんが一人で会いに来て、「ママがいうように、この子がいい」とすぐに申し込みをしたという。

先住猫にも受け入れられて

   ぷぅーちゃんはトライアル初日から家になじんだ。思った以上にやんちゃでもあった。

「すぐに息子の足の間で寝ていました(笑い)。ちぃーちゃんにも気後れすることなく積極的に寄っていきましたね。ちぃーちゃんの方は、鳴くでもシャーするわけでもなく『なんすか、これ』って顔をして、2階にすごすごと逃げていきましたが……」

 それでも1週間もすると、無邪気な後輩を受け入れて、2匹で遊ぶようになった。ぷぅーちゃんが、寝ているちぃーちゃんを起こしにいくと、“わかったよ、しょうがねえな”というように起き上がって相手をする。前よりも何倍も活動的になり、関係もまずまず順調だ。

コタツの中のぷぅー(左)とちぃー

「それにしても、体がしっかりしたね」

  久しぶりにぷぅーちゃんに会った梅田さんが、抱き上げて目を細めた。

「カフェに来た時はガリガリだったからね。2月になったら足のプレートも取れる。そうしたらもっと自由になるからね」

  ぷぅーちゃんに別れを告げて帰ろうとすると、「あれ~そこにいたの?」「やだ、ほんと!」と久美子さんと麻緒さんが顔を見合わせ笑った。ちぃーちゃんがコタツの中に入っていたのだ。ぷぅーちゃんも中に入って甘えるように、ちぃーちゃんに寄り沿った。

  このおおらかな家族のもと、ぷぅーちゃんは、すくすくと育っていくのだろう。

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は16歳の黒猫イヌオと、2歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この特集について
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ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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