「同棲カップル不可」乗り越え 「もしも」を考え保護猫を迎えた

   保護猫を譲渡する際、ほとんどの保護主(保護団体)は一定のルールを設けており、住まい、年齢や家族構成などを審査する。譲渡した先で飼い続けられなくなるという事態を避けるためだ。婚姻関係にない同棲カップルは対象外とされるケースが多いが、保護主から信頼されて保護猫との生活を始めたカップルがいる。

(末尾に写真特集があります)

   都内豊島区のメゾネットタイプのアパート。階段を上がると、廊下を挟んで左右に部屋が分かれていた。

「左がぼくの部屋兼居間です。猫たちもいるのでどうぞ」

 会社員の信吾さん(27歳)に案内されて左の洋間に入ると、白く大柄な猫こまち(3歳)と、サビ柄の猫モネ(9カ月)が、ハッとしたように振り向いた。

「先住のこまちは繊細で、モネは積極的。でもモネも人より猫が好きみたい」

信吾さんに抱かれるモネ(左)とかえでさんに抱かれるこまち

  部屋には信吾さんの服や鞄などが置かれ、一見ひとり暮らしのようだが、彼女のかえでさん(28歳)と一緒に暮らしている。

「廊下の向こうの部屋が彼女の寝室です。ぼくのイビキがうるさいので別に寝ていて(笑)。食事はここで一緒に食べるけど、寝る時はこまちが彼女、モネがぼくと一緒。モネが隣の台所でいたずらするので、留守の時はモネだけこの居間で過ごすよう住み分けています」

彼女の猫と同居して猫好きに

 同棲中のかえでさんとの交際は3年目になる。出会った時、かえでさんはアパートでまだ幼いこまちと暮らしていた。

「ぼくは猫を飼ったことがないのですが、彼女の家に遊びに行って、こまちと会ううちに、猫って可愛いと思うようになりました。昨年、彼女のアパートの更新があり、そのタイミングで一緒に住もうということになったんです」

   信吾さんはその頃ちょうど転職を考えていて落ち着かず、「彼女との結婚はまだまだ……でも一緒にいたい」と思ったそうだ。

信吾さんに抱かれるモネ

 そして2人でペット可物件を探し、こまちを連れて、今のアパートに引っ越してきた。こまちは家にすぐ慣れたが、2人とも朝から仕事に出るため寂しそうに見えた。そこで、昨年夏、信吾さんから「もう1匹、仲間の猫を迎えないか」と提案した。

  こまちは、かえでさんの知人のつてで引き取った野良の子だった。その経験もあり、「飼うなら、小さめの保護猫がいい」と2人で話し合った。夏に訪れた譲渡会で、かわいい子猫に申し込んだが、縁が無く、他の家に決まった。

「その時、同棲中と知ったスタッフから、けげんそうな顔をされて。結婚していないと難しいのかな、くらいに思ったのですが……その後、ぼくらは保護猫をもらう“条件外”なんだと知りました」

厳しい規定にびっくり

  2人で保護猫に関する情報を調べると、どの保護団体も細かな規定を掲げていた。

「ほとんどが“同棲カップル不可”でした。あと、“独身男性不可”、“留守の時間が長いと不可”など書かれていてびっくり。保護猫を迎えるのは簡単ではないという現実をつきつけられました。それでも、どこかにいい縁がないかなと探し続けました」

 そんな時、知人から、サイト「ペットのおうち」を通じて猫を迎えた人がいると聞き、検索しているうちにモネを見つけた。「4カ月の三姉妹のツキノワグマのようなサビちゃん」と書かれていて、条件には“単身者の応募は可。高齢者は不可”とあった。同棲不可ではなさそうだった。

三姉妹で一番積極的だったモネ(保護主の提供写真)

   信吾さんは早速申し込み、「同棲ですが、大丈夫でしょうか」と自ら一言添えてみた。

 すると保護主から連絡があり、メールでやりとりをした後、保護主宅で見合いをすることになった。「実物もすごくかわいい」「こまちと仲良くなるといいね」と2人してモネが気に入った。トライアルを経て、2週間後に正式に家の猫になった。 

審査の壁を突破した理由

  モネを信吾さんとかえでさんに譲渡したのは、都内に住む福島さんという女性だ。自宅で2匹の保護猫を飼いながら、近所にいる野良猫を気にかけてきた。昨秋にモネたち3姉妹を見かけ、捕獲器で捕まえた。保護した猫の家族を探すのは「人生で初めて」だったという。

「モネをサイトに載せると、先住猫のいる信吾さんカップルと、猫を今まで飼ったことがないという家族から応募がありました。信吾さんたちについては、やはり同棲中というのが気になり、ご本人にもかなり確認させてもらったりしたんです」

トライアルが終わる頃にはいい感じの距離に(提供写真)

 確認したのは「もしもの場合」についてだ。

「同棲を解消する場合、猫をどうするのかと質問すると、『もし別れたら先住猫はかえでさんが、モネは信吾さんが引き取る』。万が一、2人のどちらかに何かが起きたら、『1人で2匹を育てていく』と真摯に答えてくれました。2人で相談して決めていることに、好感を持ちました。実際にお会いしてみて、信頼できる方々だと改めて感じたし、かえでさんが特に猫に詳しくてしっかりされていたので、託したいと思ったんです。モネには猫の仲間がいたほうがいいのかな、とも思いましたし」

 実は見合いの直後、モネの姉妹猫の譲渡先が決まり、残されたモネがガクッと落ち込んでしまったそうだ。それで、福島さんはその後に予定した見合いを断り、信吾さん宅でのトライアルを決めたのだった。

メス猫同士よいコンビに

   こうして、難題をクリアして迎えたモネ。最初の数日はかえでさんの部屋に置いたケージで過ごしたが、すぐにこまちに興味を示したそうだ。かえでさんが当時を振り返る。

信吾さんより”立場が上”なこまち

「こまちは『知らないやつがいる』って感じで、廊下でたたずんでいましたが、2週間ほどで慣れてくれました。モネが来てから、こまちが私に前より甘えるようになったんですよ」

 すると信吾さんが続けた。「こまちは僕にも甘えるけど、彼女が帰宅すると、甘えている姿を見られたくないのか、さっと降りる。うちのカーストは一番上が彼女で、こまち、僕…いや、今はモネの下かな(笑)。2匹の関係は面白くて、こまちがモネをなめてあげたと思ったら急にパシッ。でもこの頃は一緒にいることも増えたし、いいコンビになりそうです」

 話をする2人に、2匹が近づいてきた。かえでさんが「待ちですよ、求婚の」と微笑むと、猫が“そうだ、はやくー”といわんばかりに、ニャーと鳴いた。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は16歳の黒猫イヌオと、2歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この特集について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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