骨折した瀕死の子猫、手術には50万円必要 その時救いの手が…
野良の子猫は瀕死の重症を負っていた。偶然、出くわした人に救出されたが、骨盤を骨折しており、手術に多額の費用がかかることが分かった。
大阪府に住む吉本さんは、大の猫好きで、空ちゃんという保護猫を飼っている。2019年の正月のこと、近所の子どもたちが「子猫がいる」と騒いでいた。ごはんを持って探してみたが、どこにいるのか分からなかったという。
ある晩、吉本さんの息子がランニングに出かけた時、「足元に子猫がいて鳴いている。足を動かせないみたいだけど、どうしよう」と電話してきた。とるものもとりあえず、吉本さんはダンボール箱とバスタオルを持って現場に向かった。
「息子が抱き上げようとした時、子猫が溝に逃げてしまったんです。しかも、溝のふたが邪魔して手が届かない。よく見ると、溝の奥の排水口の中に頭と手だけ入っていて、お尻だけが見えている状態でした」
息子と代わる代わる手を伸ばして、なんとか引っ張り出したという。
「治療には50万円」
子猫は見たところ、出血の様子も傷も見当たらなかったが、足が不自由だった。翌朝、動物病院に連れて行ってレントゲンを撮ってもらうと、骨盤を骨折し、骨が歪んだままくっついていることが分かった。背中の毛を剃ると、10センチほどの傷跡も見え、交通事故などに遭った後、何日も放浪していたのだろうと思われた。
獣医師は「手当をしないと尿も便も出せなくて死んでしまいます。どうしますか」と尋ねた。手術代などの治療費は約50万円。中に入れるプレートやボルトによって費用が変わるとのことだった。
「どうしたらいいのかすぐには決められず、その日は、ひとまず病院で預かってもらいました」
帰宅してから息子に相談すると、「そんなに家は裕福じゃない」「でも、子猫がいると聞いて、放っておけるとは思わなかったでしょう」と言い合いになったという。
医療費で悩む吉本さんに、救いの手をさしのべたのは、知り合いの住職さんだった。費用の一部を負担してくれ、「うちで子猫を迎えようか」とも言ってくれたという。
獣医師もできるだけ費用が安くおさまるように考え、子猫は無事、手術を受けられた。歪んだまま固まっていた骨を、できるだけ元の形に戻し、大腸を圧迫しないように固定して、排泄ができるようになった。
「神経が通っていないため、自分の足という感覚がないのか、右足の足先をペロペロなめてしまうんです。それでも、駆け足くらいはできるようになりました」
その後、腎臓の手術も乗り越え、ひとつの腎臓になりながらも懸命に生きている。
先住猫とも仲良くなって
子猫には椿ちゃんと名前を付けた。当初、先住猫の空ちゃんは子猫に触れた手でなでようとすると、警戒して逃げてしまったという。「やきもちを妬いて病気にならないか心配でした。でも、2、3日で治まり、同じ器で水を飲んだり、鼻をツンツンしたりするようになったんです」
その後も、吉本さんは先住の空ちゃんを優先して食事を準備したが、空ちゃんは椿ちゃんが食べ始めるのを見てから、自分もご飯を食べるという。部屋の中で椿ちゃんがどこにいるのか分からず吉本さんが探していると、空ちゃんが「ここにいるよ」と教えてくれるまでに仲良くなったという。「家は火の車ですが、何ものにも変え難い愛しい命です」
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