公園に現れた猫はWキャリア それでも見つかった幸せなおうち

 野良猫がたくさん住む公園にやって来た長毛種の猫。保護されてから、白血病と猫エイズのWキャリアだと分かった。譲渡は難しいと思われたが、希望者が現れ、新しい「おうち」が見つかった。

(末尾に写真特集があります)

見慣れぬ長毛種の猫

 大阪府内にある、大きな池を囲むように遊歩道が整備された公園。野良猫がたくさん居ついている。そこに長毛種のオス猫が突然現れた。2017年1月頃のことだった。

 公園には野良猫にエサを与えるエサやりさんがいたが、どういうわけか追い払われてエサをもらえていないようだった。いろんなエサ場に出没しながら、美しかったであろう被毛は日に日に汚れていった。見るに見かねた保護主さんが、その長毛種の猫を保護して連れ帰ったという。

 不妊手術をする時に指を見ると、爪を切った形跡があった。茶色の長毛種で、見た目も一般の野良猫とは違うため、誰かが捨てたのだろうと思った。

 保護主さん宅には先住猫がいたため、その猫の血液検査をすると、白血病と猫エイズに感染していることが分かった。Wキャリア。譲渡先を探そうにも難しいことを意味していた。

ふわふわの被毛です
ふわふわの被毛です

譲渡希望者が現れた

 保護主さんは、自宅とは別の場所にある職場にその猫を隔離した。Wキャリアで、いつ発症するかもしれなかったが、それでも「エイベット」という猫の譲渡やTNR活動をしている団体のホームページに掲載してもらった。天美動物診療所の橋本知也獣医師が運営している団体だ。

 大阪府に住む福田さんは、エイベットのページをよく見ていた。福田さんが自宅の近くで黒猫の子猫を保護した時も、エイベットを通じて譲渡先を募集したことがある。

「活動理念に感銘を受けていて、黒猫のことでもお世話になったので、私に何か出来る事があれば恩返ししたいと思っていました。それでその猫が載った時、里親になることにしたんです」

爪とぎの中で眠ってしまいました
爪とぎの中で眠ってしまいました

ウサギたちと同居

 猫は2017年2月に福田さんに迎えられた。推定5歳。「ケン」ちゃんと名付けられた。福田さんは家でウサギを3匹飼っており、最初、ウサギたちはケンちゃんに興味津々。“この子は誰?”というように、ケージにあいさつしに寄ってきた。かたやケンちゃんは、積極的なウサギたちに少し尻込みしているようだった。それでも、しばらくすると、ウサギに寄り添って眠るようになったそうだ。

 実は福田さんは、花粉症で、猫アレルギーも持っている。花粉症の季節が終わっても、猫アレルギーの薬を手放せない。

「でも、薬を飲めば大丈夫なんです」。そういってケンちゃんを抱っこする福田さん。ケンちゃんは甘えてお腹を見せたり、甘噛みをしたりする。病気があっても見つかった新しいおうちで、穏やかに暮らしている。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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