猫を保護すれば、それだけ資金が必要 保護団体の苦労と工夫
多頭飼育崩壊、野良の子猫……猫がかわいそうというだけでは、猫の保護活動は続けられない。継続するためには、資金を集める工夫と努力が必要になる。北海道で保護活動を続けるNPO法人を訪ね、その苦労を聞いた。
札幌市の円山公園近くの住宅地に「ツキネコカフェ」はある。猫の保護活動をしているNPO法人「猫と人を繫ぐ ツキネコ北海道」が運営する保護猫カフェだ。保護猫と譲渡希望者をひき合わせて、新しい家族を探している。
ツキネコ北海道では昨年度、猫401匹を保護し、318匹を譲渡。今も約100匹をカフェやシェルターに収容し、約100匹を自宅で預かるボランティアらに託している。北海道内で保護・譲渡の実績を知られた団体だ。
野良猫の保護やTNRなど、猫に関する相談も受け付けており、道内各地から頻繁に電話が入る。「家に残っている猫をなんとかしてもらえないか」など、自治体の担当者からの電話も多いという。
1軒から20匹を救出
9月初めには、小樽市の民生委員から相談を受け、多頭飼育崩壊の家に救出に向かった。小樽市は猫を収容する施設を持っていない。このため札幌市のツキネコ北海道まで相談してきたようだった。
飼い主は80歳過ぎの女性と息子で、生活保護を受けている家庭だった。家の中は荒れ、新聞紙が敷き詰められていた。屋外とを行き来している猫も含めて21匹いた。とりあえず小さな猫5匹を保護、その後、月末までかかってすべての猫を保護した。
最初に保護した中に、皮膚病の子猫「イボンヌ」がいた。皮膚はボコボコで、両目から膿が出ていた。動物病院に連れて行くと、「ノミやシラミのアレルギーではないか」との見立てだったという。
こうして猫たちを保護しても、行政や元の飼い主から資金提供はほぼ期待できない。保護猫を収容する場所が必要で、ノミ・シラミの駆除や不妊去勢など医療費もエサ代もかかる。保護した以上、そのすべてをツキネコ北海道が負担せざるを得ないのだ。
2017年には砂川市の多頭飼育崩壊を起こした家から125匹を救出したこともあるという。
代表の吉井美穂子さんは説明する。「125匹の猫の医療費に200万円ほどかかりました。札幌から行くためにガソリン代などもかかります。でも、行政も負担してくれません」
様々な方法で資金集め
ツキネコカフェは、個人として保護活動をしていた吉井さんが2010年に開いた。2012年にNPO法人のツキネコ北海道を設立し、2015年に今の建物に移って、カフェの規模を拡張した。現在は2階建てで、計約260平方メートルある。近くにもう一店舗と、シェルター用にアパートを借りている。
フードのほとんどは寄贈などでまかなっているが、家賃と暖房費など光熱費だけで月約50万円かかる。さらに1匹あたり約2万円かかる不妊去勢手術代など医療費の負担も大きい。
カフェの収入だけでは、とても足りない。そのため資金を集める様々な工夫をしている。
カフェではオリジナルグッズや創作作家の作品などを販売。年に2回開かれる「さっぽろ東急百貨店」の猫イベントなどにも出店している。
さらにインターネットなどいろいろなルートで寄付を呼びかけている。
「若いボランティアが『これをやった方がいい』とTポイントでの寄付などを提案してくれました」と吉井さんはいう。店舗の改修費もネット上で資金を募るクラウドファンディングで集めた。
Amazonの「ほしい物リスト」も以前から活用しており、今年6月から始まった「動物保護施設 支援プログラム」にも加えられた。各保護施設が望むリストから商品を選んで直接施設に贈る仕組みだ。ツキネコ北海道には、猫砂や子猫用のフード、ケージなど、7月に約10万円分、8月に約10万8千円分の物資が届いた。「ほしい物リストに載せたら、すぐにケージをいただけました。リストを更新したら、SNSでもお知らせするようにしています」
預かりなら高齢者でも
ツキネコ北海道は、親子教室を開き、インターンシップを受け入れ、講演に出向くなど、保護猫への理解を深め、譲渡を増やす努力もしている。
高齢者でも猫と一緒に暮らせるようにしようと「永年預かり制度」も作った。面談の上、十分準備をした上で猫を預かってもらい、万が一継続できなくなった場合は、ツキネコ北海道が再度引き取る仕組みだ。ただし、預かる猫は選べない。
最近、永年預かりをしていた70代の男性が、脳こうそくで倒れた。退院して家に戻ったが、世話をし続ける自信がないと、預かっていた猫を戻してきた。「猫と暮らしたい、と泣いていらしゃいました」
不幸な猫を1匹でも減らしたい、増やさせない。そんな地道な活動を支えているのは、ひとつひとつは決して大きくはない個人寄付だ。贈ってくれる人は、道内にとどまらず、遠く東京、横浜などにも広がっているという。
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