猫の投薬「嫌がられて断念」飼い主の6割が経験!? 獣医師に聞くうまく飲ませるコツ

 愛猫が体調を崩したとき、治療に不可欠なのが投薬。しかし、人のように嫌々ながらも必要だと理解できない猫にとって、それは苦手な場合が多いようだ。

 この記事では、sippoが実施した「猫と投薬」についての読者アンケート(8月13~23日、回答数559)でその実態を探りつつ、東京猫医療センター院長の服部幸先生に、猫の投薬のコツや、読者から寄せられた質問に答えてもらった。

「猫が投薬を嫌がる」が9割

「ネコちゃんは投薬を嫌がりますか?」の質問に対し、「嫌がるがなんとかさせてくれる」が最多で61.9%にのぼり、「嫌がってほとんどさせてくれない」の30.4%を含めると、実に90%以上の猫が投薬が苦手であることがわかった。

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 また、「ネコちゃんが投薬を嫌がることで、処方された薬をあげきれなかったことはありますか?」と聞いてみると、60.8%の飼い主さんが「ある」と回答し、半数を超えた。

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「特に投薬が難しいと感じたのはどのタイプですか?(複数回答可)」の設問では、「錠剤」と回答した人が圧倒的に多く274人で、次いで「粉剤」(128人)、「目薬」(118人)と続いた。「目薬」を除き、飲ませるタイプの薬は難しいと感じることが多いようだ。

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投薬の苦労と工夫 「話して説得する」という意見も

 具体的にどのような点で苦労しているのか、自由回答で聞いてみた。

  • 〈錠剤〉口を開けてくれない。口を開けてもクビを横にぶんぶん振って薬を入れられない。薬をいろんな方法で隠して食べさせても気づいて薬だけ上手に出してしまう(チャチャ姫さん)
  • 〈粉剤〉粉薬を水に溶かすと多量のため、シリンジで直接飲ませるとイヤがり飲み込まず泡を吹くような感じになり、投薬できない(815号さん)
  • 〈目薬〉目薬を差すときは一人が押さえて二人がかりでないとできない。タオルに包んで暴れないように抑えているが、なかなか目に液を落とせず、処方された1/3は無駄になった感じ(はちわれとうちゃんさん)

 先の設問で投薬が難しいと答えた人が多かった「錠剤」「粉剤」「目薬」に関しては、とにかく嫌がる愛猫の抵抗にあってなかなか投薬できない状況が垣間見える。

 また、「塗り薬」や「滴下剤」など、皮膚につけるタイプの薬に関しては、「舐めてしまう」という悩みをあげる意見が見られた。

  • 〈塗り薬〉ネコを見ていて「そろそろネコに薬を……」と考えた瞬間に逃げる(なぜわかるのか不明ですが)。うまく塗ることができても舐めてしまわないように、しばらくは全力で遊び続けないといけない。ニンゲンの気力体力が必要(tabimomさん)
  • 〈滴下剤〉ノミ・マダニのスポットタイプの滴下剤を自分でしたら舐めて吐いたことがあるので、主治医にお願いするようにしました(すぬーぷさん)

 一方、投薬の際にどのような工夫をされているのか聞いたところ、さまざまなアイデアがあげられ、ユニークなところでは、「ちゃんと説明する」という意見も。

  • 薬を出したことを気付かれないようにするため、場所を毎回変えて保管しています。じゃないと、扉、缶を開けた時にバレて速攻で猫さんの姿が消えてしまいます(こぱさん)
  • どうしても飲まない時、または投薬期間が短いときはバターに混ぜて口の周りに塗る。猫は嫌がって顔を洗うので自動的に口の中に入る(はるかさん)
  • まず猫たちには薬を見せ、投薬の必要性を説き聞かせて、騙しうちにはしないこと。何も説明せずにいきなり投薬すると、仮に一度目が成功しても、禍根を残します(二度目以降たいそう嫌がられます……)。我が家の猫たち2匹、各々目薬が毎日欠かせないのですが、理解したうえで『致し方なし』といった体で投薬させてくださいます(とらたろうさん)

タイプ別 猫の投薬のコツ

 薬のタイプ別に、服部先生にそれぞれの投薬のコツを聞いた。

【錠剤】

  1. 頭を保定し、指で猫の口を開け、喉の奥にしっかりと薬を入れる。
  2. 口を閉じさせ、ゴクンと飲み込むまで喉をなでる。

投薬されるミケ猫
写真提供:東京猫医療センター

 手のひら全体を使って頭を包み、固定するのがコツ。「猫の頭が動くと、1回でうまくいかず時間がかかってしまう。時間がかかることが猫には苦痛なので、短時間で手早く投薬すること」と服部先生。日頃から粒状のフードで練習しておくといい。

シリンジを活用した裏ワザ
食事補助用の大きなシリンジに流動状のフードを入れ、シリンジの先に錠剤をはめて喉の奥に入れる方法。錠剤がフードの脂でコーティングされ、ほとんどの猫は飲み込んでくれるという。
(写真提供:東京猫医療センター)

【粉薬】

 フードに混ぜても食べられる猫はいいが、抗生剤などは苦く、拒む子も多い。「水で溶いてシリンジで吸い上げて投薬する方法が、猫の負担が少なくおすすめ」と服部先生。

投薬される猫
写真提供:東京猫医療センター

 投薬の際はしっかりと両手で猫の頭を固定し、口の横からシリンジを入れ、喉に向かって薬を入れる。水の量は1~2cc程度と少なめで溶くのがコツですが、薬の量によっては数回に分けて。

無駄なく薬を吸い取る裏ワザ
薬の袋が防水性の場合は、袋の角に薬を集め水を1~2cc加えて、そこにシリンジを入れると無駄なく全ての薬剤が吸い取れる。
(写真提供:東京猫医療センター)

【滴下タイプ】

「皮膚に直接塗布しないと意味がありません」と服部先生。毛をかき分けて皮膚に向けて滴下する。

「1カ所に一気に滴下すると量が多く、ビショビショになってしまうので、肩甲骨の間など舐めることができない場所何カ所かに分けて滴下するといいでしょう」

【点眼】

 頭をしっかりと固定し、指で目を開いて点眼する。最後に指でまぶたを閉じる。

【関連リンク】お薬投与動画
スポットタイプ、シリンジタイプの滴下剤の投与方法など、わかりやすく動画で解説してくれる。
https://neko-channel.com/medication/

錠剤を砕いてもいい?猫との信頼関係にヒビ入る?

 読者アンケートで寄せられた猫の投薬に関する質問について、服部先生に答えてもらった。

Q.ご飯や「ちゅーる」などに混ぜてもいい? 混ぜてはいけない薬があれば知りたいです。
A.基本的には混ぜてもOK。ただし、薬を処方したかかりつけ医に必ず確認を。

Q.錠剤を自分でピルクラッシャーで粉末にしたものを溶いてシリンジで飲ませるのは、薬効が落ちますか?
A.薬によっては効果が落ちることがあります。また、抗がん剤は砕くと粉末が舞ってそれを吸引する恐れがあり、危険です。

Q.飲んだ後、まだ薬の形状が残った状態で吐いてしまった場合、どの種類の薬ならもう1度飲ませたほうがいいでしょうか?
A.錠剤がそのままの形状で残っているなら飲ませていい薬もあるが、薬によるので必ず獣医師に確認を。抗がん剤はNG。

Q.嫌がる猫ちゃんに毎日投薬するのは信頼関係にヒビが入らないか心配です。
A.ヒビが入ると心配するお気持ちはわかりますが、愛猫が病気で苦しむほうが、飼い主さんはつらくないですか? 投薬は愛するわが子の健康と命を守るために大切なこと、と考えてみてください。

Q.朝夕1錠ずつ飲ませる薬で、朝飲み損ねた場合、夕方に足して投薬していいのですか?
A.ビタミン剤など例外はありますが、薬剤は基本的にほとんどがNGです。

Q.苦い薬など、どうしても飲めなかった時、代わりの薬などで対応してもらえますか?
A.飲みやすい代替薬がある場合もあるので、かかりつけ医に相談してみてください。

Q.他の薬とは時間を空けて与える薬が数種類処方されている場合、最低でもどのくらい与える間隔を空けた方がいいですか?
A.薬によるのでかかりつけ医に確認すべきですが、30分以上は空けるほうがいいでしょう。

Q.あまったお薬は取っておいてもいいでしょうか?
A.取っておくのはいいのですが、投薬するかどうかの判断は必ず医師に確認しましょう。

投薬の最強のコツは「うまくなること」

 最後に、服部先生から投薬について改めてアドバスをいただいた。

「犬に比べると嗜好性に偏りがある猫は、投薬で苦労することが多いと思います。しかし、猫にストレスを与えたくない、かわいそうと薬を飲ませないことは、結局は猫を苦しめることにつながる。心臓病や腎臓病など生涯投薬が必要になってしまった場合、そんなことは言っていられないはずです。

 猫にストレスをかけない投薬の最強のコツは『うまくなること』。どんな投薬でも頭の固定は必須ですが、頭を固定するのがかわいそうと時間がかかってしまうと、その方が猫は何倍もかわいそうなのです。猫が嫌がる前に、短時間でうまく飲ませることができればいいわけです。

 そのためには、まず日ごろから猫を触り、しっかりとコミュニケーションをとっておくこと。そして、フードなどを使って練習しておくのもいいでしょう。最近ではフレーバーがついていて美味しく飲める薬も開発されています。かかりつけの獣医師に相談してみてはいかがでしょうか」

服部 幸 先生
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。2005年から猫専門病院長を務める。2012年に東京猫医療センターを開院。2013年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。
https://tokyofmc.jp/
【関連リンク】

ブロードライン公式サイト
投薬の効果のほか、投薬のコツを解説する動画があってわかりやすい。
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定期的に動物病院を訪れて、愛猫の健康を守ろう。

中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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愛猫と長く健康に暮らすための、獣医師からの珠玉のアドバイス。この特集は「ネコも動物病院プロジェクト」の一環です。supported byベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン
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