保護活動を続けて29年 犬や猫の「生活の質」向上を目指して

 保護活動を続けて29年。これまでに6000匹を超える犬や猫を、新たな飼い主の元に送り出してきた。日々の活動の中で重視するのは、犬や猫の「生活の質」(QOL)の向上だ。より理想的な環境の実現を目指して、新たな拠点の建設も進めている。

(末尾に写真特集があります)

 JR新大阪駅から電車を乗り継いで約1時間、さらに車で約20分。大阪府能勢町の山あいに特定非営利活動法人「アニマルレフュージ関西」(通称:アーク)はある。小さな川のそばにある約3300平方メートルの敷地には、事務所や猫舎など、5棟の建物が点在する。建物を結ぶ通路沿いには、1~3匹の犬が暮らす広さ2~12畳ほどの屋外型犬舎が約50棟並び、敷地全体がまるでひとつの集落のようだ。

「アニマルレフュージ」とは、直訳すると「動物たちの避難所」。保護した犬や猫の心身のケアをし、社会化トレーニングをして譲渡先を探すほか、不妊去勢手術の奨励、動物福祉水準の向上を目指して啓蒙活動を行っている。

6000匹以上の犬や猫を譲渡

 現在、理事長を務めるエリザベス・オリバーさん(78)が1990年に設立した。イギリスから来日し、大学の英語講師をしていたオリバーさんは、行き場のない動物をみつけると友人とともに助けていたことがきっかけで、団体を立ち上げた。母国のイギリスには、飼えなくなった犬や猫を引き取る保護施設が多くあるが、日本はそうではなく、「セーフティーネットがない状態」だと話す。

大阪アークの犬舎
大阪アークの犬舎

 アークにとって大きな転機となったのは、1995年の阪神淡路大震災だった。動物たちも多く被災し、1年で約600匹の犬や猫などを受け入れた。その後活動は広がり、スタッフの数も増えて行った。1991~2018年に犬4047匹、猫2054匹を譲渡した。

 現在、拠点は3つある。大阪府能勢町のシェルター「大阪アーク」のほか、2005年に開設し、シェルター機能は持たない東京事務所「東京アーク」、そして2008年から兵庫県丹波篠山市で建設を進めているシェルター「篠山アーク」だ。3カ所で計21人のスタッフが働いている。

犬や猫の「生活の質」向上に注力

 このうち最も歴史が古いのが、能勢町の「大阪アーク」だ。現在、ここで保護されているのは、犬約60匹、猫約80匹。飼い主の家が火事になり保護された猫や、重度の皮膚病をわずらったまま大阪アークのそばに捨てられた犬もいる。飼い主が亡くなったり高齢になって施設に入るため飼えなくなったりして、連れてこられるケースも増えているという。

ひどい皮膚病を患った状態で、大阪アークのそばに捨てられていた犬「アルゴス」
ひどい皮膚病を患った状態で、大阪アークのそばに捨てられていた犬「アルゴス」

 大阪アークのスタッフは15人で、1日7~8人が働く。ほかにボランティア50~60人がそれぞれのペースで活動しており、毎日1人以上のボランティアが犬や猫の世話をしている。

 重視しているのは、犬や猫たちの「生活の質」を維持し、向上させていくことだ。勤務して14年になるというスタッフの奥田昌寿さん(37)は、「それぞれの犬や猫にとってどうしてあげるのがよいのか、常に考え、工夫しています」と話す。

 特徴の1つは、犬たちを鎖で繫いだり、狭いところに24時間閉じ込めたりしないこと。与えられたスペースで、自由に歩き回れるようにしている。また、複数の犬を同じ犬舎に入れる場合は、スタッフが2匹を一緒に散歩させるなどして相性を見極めている。

 犬舎をのぞくと、数本の白い筒が見えた。これは、アルミホイルやラップなどで使われている紙製の芯。寄付されたもので、犬たちのおもちゃだという。「壊してもよいものを与えることで、犬たちのストレスを発散させ、リラックスさせるためなんです」と奥田さんは話す。

 大阪アークの犬舎は屋外型で、壁はなくフェンスで周りを囲った中で犬がすごすというもの。外気が吹き込むため、気温が下がれば犬に服を着せて、寒い思いをしないように気を配る。食事にも細やかに対応し、犬や猫の年齢や体の大きさ、病気の有無や体調などに合わせて、どのフードをどれくらい与えるか、1匹ずつ決めているという。

猫舎で暮らす猫
猫舎で暮らす猫

 大阪アークは歴史があるぶん、老朽化も進む。そこで建物そのものから、動物の生活の質により配慮した施設をつくろうと建設を進めているのが「篠山アーク」だ。「動物たちのために、アークの長年の夢」だというこの施設は、日本よりも動物福祉が進むイギリスの最高級シェルター並みの設備を備えた施設を目指す。

 敷地は約23100平方メートル。これまでに犬舎2棟が完成し、40匹の犬とウサギ5羽が生活している。土地の代金約4500万円は寄付で、犬舎2棟で計約2億円の建設費は、寄付のほか一部を銀行からの借り入れでまかなった。

 犬舎は、壁で区切って隣で暮らす犬の姿が見えないようになっているため、落ち着いて過ごせるという。また犬の生活スペースのすべてに床暖房を完備。天井には吸音材を使い、他の犬の鳴き声ができるだけ響かないように工夫している。犬舎のそばには、4面の運動場がある。ほかに、犬が自由に運動できる広さ約2000平方メートルのスペースもある。

篠山アークの犬舎と、犬の運動場(アニマルレフュージ関西提供)
篠山アークの犬舎と、犬の運動場(アニマルレフュージ関西提供)

課題は資金あつめ

 アークが課題として挙げるのが、資金集めだ。動物たちの医療費や医薬品代だけで、年間約1千万円がかかり、年間の運営費は合計すると1億数千万円になる。活動資金の9割は寄付、1割を物販などでまかなっている。資金繰りに余裕があるわけではなく、奥田さんは「スタッフ1人ひとりが節約を心がけています」と話す。

 日々の運営に伴う資金のほか、建設中の篠山アークの資金も必要だ。篠山アークでは今後、猫舎なども建設する予定だ。猫舎の場合、1棟にかかる建設費用は約1億円。建設費用の支援を呼びかけていて、現在集まっている資金は、その1割程度だという。

篠山アークの犬舎で過ごす犬たち(アニマルレフュージ関西提供)
篠山アークの犬舎で過ごす犬たち(アニマルレフュージ関西提供)

 アークは、ホームページで必要な物を呼びかけるなどして、物資がよせられている。ただ、支援を呼びかけている物以外で、事前に問い合わせがなく物資が届いた場合、使う場面がないままで、スタッフが心苦しく思うことがあるという。

 アマゾンの「動物保護施設支援プログラム」は、アークが必要なものをリクエストできるため、「支援いただいたものは100%利用している」と奥田さんは話す。これまでに、この支援プログラムから計約100万円分の寄付が寄せられたという。

 動物たちの生活の質向上を追求し続けてきたアーク。だが、オリバーさんはこうも話す。「ここはシェルター。犬や猫は、普通の家で家族と一緒に過ごす方がよい」。山あいのシェルターでは今日も、犬や猫たちが、家族との出会いを待っている。

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アニマルレフュージ関西
住所:大阪府豊能郡能勢町野間大原595
TEL: 072-737-0712 
FAX: 072-737-1886
定休日:月・水曜日(月曜日が祝日、振替休日の場合はオープン)

*来園の際には、必ず事前に電話予約が必要
 営業時間: 10:00 – 16:00
 電話受付: 10:00 – 16:00
 里親面接: 10:00 – 15:00
 見学時間: 10:00 – 15:00

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