動物愛護センターの機能担うシェルター 広々施設で犬猫のびのび
鳥取県倉吉市に広々とした保護犬・保護猫のシェルターがある。民間施設だが、県や鳥取市から委託を受けて「動物愛護センター」としての業務も担っている珍しい存在だ。県内から引き取られた犬や猫がのびのびと暮らし、新しい飼い主が見つかるのを待っている。
キャベツなどの畑が広がる小高い丘に「人と動物の未来センター アミティエ」はある。「アミティエ」はフランス語で友情や親切の意味。獣医師らで作る公益財団法人「動物臨床医学研究所」(動臨研、本部・倉吉市)が運営している。
もともとアミティエは動臨研の山根義久理事長(76)が2013年9月に開設した。
山根さんは倉吉市で動物病院を経営し、東京農工大教授や、日本獣医師会会長を務めた人物。「かつては動物を治してあげているという意識がどうしてもありました。動物は人を幸せにしてくれる存在。大学教員や獣医師会の仕事を終えたら、動物の目線で、動物愛護の事業をしたいと思っていました。親が残してくれた牧場があり、改修して造りました」
その後、運営母体になった動臨研は、全国に会員を持ち、獣医療の向上と、人と動物が共生できる未来を目指して活動する獣医師らの団体。大阪で毎年開催している動物臨床医学会や、雑誌の定期発行など、学術的な活動を続ける一方で、動物愛護のための組織「人と動物の会」も内部に作った。アミティエは、人と動物の会が直接、動物愛護に携わる場として位置づけられている。
広大な敷地に充実の施設
現在アミティエは常勤4人、非常勤1人のスタッフらで、保護された犬や猫を世話して譲渡先を探す一方、毎月1回イベントを開くなど啓発活動も行っている。
施設は犬や猫が快適に暮らせるように配慮されている。建物は330平方メートル。本館には犬の大部屋や個室、猫の部屋、共用の部屋など計18室ある。新館は小学生らの見学や研修を受け入れるためのスペースになっている。
敷地は1万6千平方メートルと広く、建物の前には芝生のドッグランがある。保護犬たちは1日数回、走り回って遊び、一般の犬にも開放している。建物の裏手には放牧場もあり、ヤギやヒツジが草をはんでいる。
山根さんは「もし飼い続けられなくなったら、再び引き取ると言っていますが、入院などを理由にまだ2、3例しかない。犬を連れて遊びに来てくれる人もたくさんいます」と話す。
動物愛護センターも兼ねる民間施設
アミティエは開設の翌年2014年度から、鳥取県から動物愛護センターの業務を委託され、県内の保健所に収容された犬や猫を引き取って譲渡先を探す役割を担っている。このため新館などは県や国の補助を受けて整備した。
これまで年間約70匹の犬猫を引き取っており、11月上旬現在、施設内で保護しているのは、犬5匹と猫15匹。すべて譲渡可能な犬猫だ。ほかにも市内の動物病院で処置中の犬や猫もいる。
特に犬の場合、新しい飼い主のもとでも落ち着いて行動できるように、おすわりなど簡単なしつけをしてから譲渡するようにしているという。
開設からこれまで400匹近い犬や猫を新しい飼い主のもとに送り出してきた。こうした取り組みの結果、鳥取県内では2013年度に犬猫982匹が殺処分されていたが、2017年度には153匹まで減った。
高齢で歩けなくなった犬も
だが、引き取っても高齢だったり病気を抱えていたり、譲渡できない犬や猫もいる。
アミティエの会議室には、福島原発事故の被災地で保護された犬2匹を含め、3匹の犬の写真が飾られている。いずれも譲渡されることなく、アミティエで旅立った犬だ。
2018年3月にやって来た雑種のペーター(推定9歳、オス)も、最初はドッグランを走り回っていたが、高齢のため今年春から後ろ足が動かなくなった。スタッフが付き添い、補助具を着けて散歩もするが、おむつを着けて生活している。
こうした高齢動物の譲渡は難しく、ずっと施設内で世話し続けることになる。
県や市からの委託費もあるが、寄付は活動の支えになっている。直接の寄付に加え、今年6月からAmazonの「動物保護施設 支援プログラム」の対象施設にもなった。首輪や猫砂など、ほしい物リストに載せた支援物資がこれまで約50件、約10万円分届いたという。老犬ペーターが1日3回交換するおむつもこうして送られた品だという。
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- 人と動物の未来センター〝アミティエ″
- 住所:鳥取県倉吉市下福田706-127
TEL:0858-33-5397
人と動物の会
- 公益財団法人 動物臨床医学研究所
- 住所:鳥取県倉吉市八屋214-10
TEL: 0858-26-0851
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