私の猫になった「アーサー」 Aで始まる名前のわけと円卓の騎士

なんとも昭和な写真ですね。母にべったり、甘えん坊だったアーサー
なんとも昭和な写真ですね。母にべったり、甘えん坊だったアーサー

 前回もご紹介した、私の弟分だった猫・アーサー。今回は少しさかのぼって、アーサーと出会ったころのお話です。

(末尾に写真特集があります)

子猫の「アーサー」とお見合い

 アーサー(アビシニアン)と私が出会ったのは、今からもう35年も前のこと。ですが、まるで昨日のことのように思い出します。彼は私にとって、人生で2匹目の猫でした。

 アーサーの実家は一般のご家庭。プロのブリーダーさんではありません。母猫に会ったことはありませんが、キャットショーで賞を取ったほどの美猫さんだったようです。

 初めてお見合い(?)にうかがったときのこと。アーサーは生後2カ月の子猫でした。私はまだ大学3年生。前に飼っていた猫を亡くして、2年が経っていました。前の子は成猫から飼いはじめたので、子猫は初めての経験です。

若いころのアーサー。うちへきて1年ぐらいのころ
若いころのアーサー。うちへきて1年ぐらいのころ

 小さなアーサーは、それはそれはやんちゃで、ちっともじっとしていません。子猫ですから当たり前ですよね。それでも私が、座ったひざの上をポンポンとたたいて「おいで」、と声をかけると……。あんなにはしゃぎまわっていた子猫がふと立ち止まり、小首をかしげてこちらをじっ、と見つめてきました。もう一度「おいで」。するとどうでしょう。

 ひょいっ、とひざに来てくれたではありませんか!

「あらまあ!こんな風に人のいうことをきくなんて、初めて見たわ!」

 元の飼い主さんもビックリです。アーサーはごろごろと身体に似合わず大きな音でのどを鳴らし、私の手に頭をこすりつけています。飼い主さんも安心したのでしょう。

「かわいがってやってくださいね」。

 アーサーが私の猫になった瞬間でした。

母猫の初産だからAで始まる名前に

 アーサーには血統書がついていました。私としてはそんなことどうでもよかったのですが、一応書類は受け取りました。そこには3代前までの血筋が記されています。

 書類上の彼の名前は「アラン・チャンドラー」。飼い主さんが推理小説家、レイモンド・チャンドラーの大ファンだったのです。しかし、なぜ「アラン」?

「これは決まり事ではないんだけど、血統書の名前を見ると、その母猫の何度目の出産で生まれたのかがわかるんですよ」

 どういうことでしょう?

「例えばアランの場合、母猫・フローの初めての出産で生まれた子。だからAから始まる名前にしたんです」

 なるほど。母猫・フローの正式な名前はアフロディーテ・シャイニングムーン。えらく美しいお名前です。アフロディーテですから、彼女もやはり初産の子だったんでしょう。

「もうあなたの猫だから、あなたの好きな名前にしたらいいのよ」

家族旅行にもついてきました。とはいえ猫連れでは親戚の家に泊まるぐらいでしたけど
家族旅行にもついてきました。とはいえ猫連れでは親戚の家に泊まるぐらいでしたけど

 そうはおっしゃいましても。せっかく、Aで始まるいわれを聞いたわけだし…。英文科の学生だった私は、ちょうどその時論文のテーマになっていた「円卓の騎士」を思い出しました。

「アーサーにします」

 こうして、我が家の猫たちのネーミングに、なんとなくのルールが決まりました。親が分かっている子の場合は「何度目の出産で生まれた子ですか?」と尋ね、2番目ならB、3番目ならCで始まる名前を考えるようになったのです。

猫たちのネーミングルール、次はF

 アーサー以降もたくさんの子たちを迎えてきました。ここでざっと、彼らの名前と由来をご紹介します。

・クリスとココ
 アメリカンショートヘアの兄妹。3度目の出産で生まれた子だったから、クリス(=Chistian Dior!)とココ(=Coco Chanel!)。ええ。バブルのころだったんですよ。

・ディーナ
 ペットショップで出会ってしまったアビシニアンの女の子。何番目の出産だか不明でしたが、Cの次だからDでダイアナ。呼びにくいのでディーナ。

・ユーリ
 深夜の散歩中に出会って保護した子。おそらく雑種。Dの次でE。「みつけた!」という意味の「エウレカ!」=Eureka。やっぱり呼びにくいのでユーリ。

・梵天丸
 連載の一番最初にご紹介した梵天丸。もちろん出産の回数なんてわかりません。が、Bが欠番だったことを思い出し、右目がつぶれかけていたことから梵天丸。いきなり日本語。このあたりからこのルールが崩れました。

・ボビ、サビ
 引っ越した家の庭にいた三毛・サビ姉妹。三毛がしっぽがボブテイルなのでボビ。サビはそのまんまサビ。

・エンマ
 保護した時、サビのおなかにいた子。おそらく初産だろうけど確証はなし。東日本大震災の直後だったこともあり、強く育ってほしくてエンマ(閻魔様!)。

・アル、ベル
 旦那の仕事先で、車のエンジンルームから保護されたキジトラ兄妹。隠れていた車の名前からアル(=アルファード)、ベル(=ベルタ)。

アーサーは肩に乗るのが大好きでした。近所の買い物にもついてきて、商店街の有名猫だったのです
アーサーは肩に乗るのが大好きでした。近所の買い物にもついてきて、商店街の有名猫だったのです

 どの子との出会いにもドラマがありました。もちろん、悲しいお別れももちろんありました。これから順を追って、お話したいと思います。

 現時点では梵天丸以降の6匹と暮らしています。自分の限界を守って暮らしたいので、当分新しい子を迎えることはなさそうです。が、もし次があるなら、そろそろネーミングルールに戻ろうかな。だとすると次はF。さて…どんなことになりますやら。

【前の回】ナイト気取りの猫「アーサー」、納豆を食べる旦那にあわれみの目
【次の回】3度の結婚 猫「アーサー」は歴代の旦那にとって手厳しい小姑

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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この連載について
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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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