「オシッコだけ持参して獣医師に相談」が愛猫を救う!
「動物病院は怖がるから」「猫にストレスだから…」そういって病院を敬遠する猫の飼い主は多い。ならばせめて「オシッコ」だけでも受診させてみてはどうだろう?異変に気がついて受診したら、すでに手遅れだったというような事態にならないためです。
元日本獣医師会会長で東京農工大学名誉教授の山根義久先生は、次のように語る。
オシッコを観察しよう!
「猫はただでさえ、不調を隠す生き物です。犬は集団生活する動物なので、ちょっとでも具合が悪いと周囲にアピールして面倒を見てもらおうとする。猫は単独行動の生き物なので、不調を周囲に知られることは命の危険に直結する。だから猫が目に見えてぐったりしているときは、どんな病気でも相当進行してしまっていることが多いんです」(山根先生)
そんな猫の不調にいち早く気づくにはどうしたらいいか。先生によれば「猫のオシッコを観察するだけでいろんなことがわかります」という。
まず家庭でも変化に気づきやすいのは「尿色」と「尿量」だ。
「猫は砂漠の乾燥地帯原産の生き物。ごく少ない水分で生きていける身体になっています。そのため猫の尿は非常に濃くてニオイもきつい。健康な猫のオシッコはかなり濃い黄色をしているはずです」
オシッコの量はペットシーツの濡れた面積や、濡れると固まる砂の塊の大きさで判断がつく。色も、白いペットシーツならば変化に気づきやすいはずだ。
猫のトイレを片付けるとき、少しだけオシッコの状態を普段と比べてみる。それだけでもすぐに気づくチャンスになるのだ。
「オシッコだけ」持参して相談でもいい!
とはいえ、動物病院が好きな猫はまずいない。暴れる、ストレスがかかる…などの理由で受診をしり込みする気持ちもわかる。ならば、オシッコだけでもサンプルとして持参して、まずは飼い主だけで相談に訪れることはできるのか。
「もちろん、何の手掛かりもないよりははるかにいいです。自宅で採取されたオシッコですから、それそのものを検査しても正確な診断はできません。それでも、血液が混じっていないか、結晶ができていないか、通常よりも薄い尿ではないか、など、獣医師にとっては手掛かりになることが多いです。そのうえで、猫を連れてきてもらう必要があるかどうかの判断ができます」(山根先生)
だが、固まる猫砂やペットシーツにしみこんだ状態ではさすがに判断できない。液体としての尿を採取する必要がある。それに、そもそも猫がすんなりオシッコを取らせてくれるものか…。
それにはいくつかの注意点と、コツがあるという。
●オシッコを採取しやすいシステムトイレを使う
一番下のトレーに尿がたまるタイプのシステムトイレを利用するのが簡単だ。尿を吸収せず、尿の成分に影響を与えない砂のものがよい。
●どんな条件で採取したものかを伝える
「最初に持ってきてもらうオシッコはそんなに厳密なものでなくても大丈夫。ただ、どんな状況で採取したものかだけ、伝えてもらえればいいんです」と山根先生。
採取した尿は時間とともに劣化する。いつ、何時ごろに採取したのか。どうやってとったのか(お玉で受けた、システムトイレでとった、など)を医師に伝えよう。
●多頭飼育の場合は対象の猫を隔離して
複数の猫がトイレを共用していると、どの子のオシッコだかわからないことも。気になる猫のオシッコを確実にとるなら、その猫とトイレを隔離して専用状態にしてから採取する。
●獣医師には事前に連絡しておく
受診を予約する際、「まずはオシッコだけで相談したい」旨を伝えておく。
「猫が来なくても手掛かりを元に相談に応じてくれる獣医師なら信頼できるはず。いきなり持っていけば驚かれるでしょうが、まずは電話でその旨を伝えて予約しておきましょう」
一番の名医は飼い主!
「猫の小さな異常に、真っ先に気付けるのは飼い主です。だから飼い主こそが一番の名医なんです。そして大切なのは信頼できる獣医師を選ぶこと。猫は自分では何一つ、決めることはできないんですから。
オシッコだけでも診察してくれる獣医師は、少なくとも治療に積極的だとみていいでしょう。そこで深刻な病気の可能性があるかどうか判断し、それから猫を連れてきて検査すればいい。飼い主の話に耳を傾け、小さな不安もおろそかにしない、自分の感覚に合う獣医師をみつけることです。もしも対応に不安や違和感があるようなら、遠慮なくセカンドオピニオンを求めましょう」
大切なのは、日ごろから獣医師と十分なコミュニケーションをとっておくこと、と山根先生は指摘する。
後戻りのできない病気に愛猫が苦しむ前に。猫のオシッコをチェックする習慣をもつこと。そしてオシッコだけでも受診できる、信頼できる獣医師を見つけておこう。
【関連プロジェクト】
動物病院を定期的に受診しよう!<ネコも動物病院プロジェクト>
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- 山根義久先生
- 1943年生まれ。公益財団法人動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。
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