犬や猫の殺処分ゼロ目指して 「命の期限」1人でも多く伝えたい
モデルとして活躍する松島花さんは、3匹の猫と暮らしながら、保護猫や保護犬を助ける活動にも取り組んできました。期限が来ると処分されてしまう犬や猫の情報をInstagramで拡散し、引き取り先を募っています。連載6回目もテーマは「命の期限」。今回は、殺処分に焦点を当てていきます。
(末尾に写真特集があります)
ごろりんがたまに見せる寂しそうな表情を見ると、東京都動物愛護センターに入るまで、ごろりんは一体どんな暮らしをして来たんだろう…とよく考えます。@teko1010さんに譲渡してもらってから6月で1年になります。時間をかけてもっともっとごろりんのことをわかってあげたいです。
犬や猫の殺処分数、年間約4万頭
さて、今回も前回に引き続き「命の期限」、期限が来ると処分されてしまう犬や猫の「殺処分」について書きたいと思います。
全国の各保健所や動物愛護センターに収容されている犬や猫たちは、毎日どのくらい殺処分されているのか皆さんは知っていますか?
年間約4万匹(2017年度、犬、猫合わせて、病死も含みます)、1日平均すると約100匹以上の犬や猫たちが殺処分されています。
私は以前にブログをやっていたのですが、2011年にこのブログの中で殺処分のことを取り上げました。当時に比べ、殺処分数は減ってきているものの、全国で1日あたり約100匹以上もの犬や猫が殺処分されていることに、だれも納得はしないでしょう。そんななか、SNSで犬や猫の引き取り先を探す団体や個人が増えてきました。私もその1人です。
期限がついた犬や猫を拡散 胸がつぶれる思い
私はTwitterやFacebookはやっていないので、Instagramでリポストしたりストーリーで迷子犬や迷子猫の呼びかけをしたり、応援しているボランティアさんに支援物資を送ったり、署名を募ったりしています。
期限がついた子たちを、皆さんに呼びかけ拡散して頂き、無事期限までに命がつながる子もいれば、つながらない子もいます。そして、また次の期限が迫っている子を皆さんに呼びかけ家族を募る...この繰り返しです。
結局本当の意味では殺処分をなくすための解決にはなっていません。毎日毎日「あぁ、この子は期限が来ちゃった...どうなったんだろう...」「この子は明日の16時半までだ!時間がない!早くリポストしなくちゃ!」と言う思いに駆られます。
この胸が押しつぶされる思い...。
「殺処分さえなかったら...こんな思いをしなくすむのに...あぁ、どうして殺処分なんてあるんだろう」と実はいつも声に出しながら命の期限のリポストをやっています。
ただ日本では“殺処分”と言う制度がある以上、解決にはならないとしても今はこれをやるしか目の前にいる子たちを助ける手立てはありません。
「殺処分ゼロ法」施行 台湾の試みに一筋の光
そういうことを考えている時、先日NHKのBSプレミアム「家族になろうよ 犬と猫と私たちの未来」に出演させていただき、その中で「“殺処分ゼロへの道”台湾」という話をやっていました。
私が出演したコーナーではなかったのですが、私たちの国においても一筋の光が見えたような気がしたので、番組をご覧になっていない方へ簡単ですがシェアしたいと思います。
台湾も日本と同じく飼い主のいない犬は“殺処分”と法律で決まっていて、当時、殺処分数は犬のみの話でしたが約11万匹だったそうです。
その台湾がどのようにして「殺処分ゼロ法」の施行に至ったかということをやっていて、私はとても興味深く見ました。
畜生から「ケコドモ」へ 呼び方を変えた
もともと台湾では犬や猫など動物のことを“畜生”と呼んでいたそうですが、まず私たちの動物に対する意識を変えるために“ケコドモ”、つまり“毛の生えた子供”に呼び名を変え、多くの人が犬や猫のことを「自分の子供」だと考えるようにしました。
当時の台湾でコピーライターのGeorny Liu(ジェオニー・リュウ)さんが言葉の力で物言えぬ犬や猫を助けたいと、「ケコドモは家族、家族は売ったり買ったりしない、見捨てたりしない」というコピーを発信しました。広まれば犬や猫を捨てることを社会が許さなくなる、という発想からだそうです。
そして台湾全土の各学校には“学校犬”として1~2頭の犬がいて、子供たちが世話をし、触れ合っています。これも、子供の頃から良い飼い主になるという発想から生まれたことであり、生徒たちにも良い影響があったそうです。
台湾映画「十二夜」、殺処分までの日々写す
殺処分ゼロにむけて大きなきっかけとなったのは、「十二夜 Twelve Nights」という1本の映画の存在でした。飼い主のいない、引き取り手のいない施設に収容された犬たちが、12日目の夜に殺処分されるまでのひたすら死を待つ犬の姿をたんたんと写した映画です。
監督のRaye(レイ)さんは「勇気を持って見てほしかった、残酷な現実を知って他の人にも伝えてほしい!より多くの人の心が動けば状況を変えられる!」という思いからこの映画を作ったのだそうです。
2013年11月に映画が公開され23万人を動員する大ヒットとなり、それがきっかけで大勢の人たちがデモなどで“殺処分ゼロ”を求め動き出しました。
そこに「映画をみるまではあの恐ろしい現実を全く知らなかった。映画につき動かされた」と殺処分ゼロに向けて動き出した2人の中心人物により、行政に圧力をかけ各地域の毎月の殺処分データを公表させるようにしたそうです。
その結果、各地域のデータが比較されることで選挙のプレッシャーになるようにし有権者の関心事にもなり、全土の保護施設の殺処分数を記者会見やインターネットで発表していったのだそうです。
運動はさらに大きなうねりとなり、2015年に「動物保護法」修正案可決となり、台湾は殺処分から譲渡へと大きくかいを切ったのでした。10年前には13%だった譲渡率が、2017年には75%に上昇。そしてついに2017年2月6日に「殺処分ゼロ法」が施行されました!!
殺処分まず知ってもらうことから
なんとうらやましいことでしょう!2017年なんてまだ最近です。他の国、特に同じアジアの国ができて、日本ができないわけがありません。
困難な点は多々あると思います。同じように、殺処分の現場の映画が公開されても台湾のように爆発的なヒットになるだろうか?日本人はもともと自分の感情を表現することが苦手と言われているし、たとえ映画を見たとしてもデモなどを始めるほど熱い気持ちを持つだろうか?大きなムーブメントが果たして起きるだろうか…と不安はあります。
でも台湾が達成した順番通りでなくても、譲渡を増やすための取り組みや去勢避妊手術を進めて増えない努力をするなど、まねできる点が多くあると思います。
今言えることは、殺処分をぼんやりとしか知らない人たちに、しっかり現実を伝えて知ってもらうこと。知らない人には、まず知ってもらうことが大事だと思います。
台湾のようにいきなり大きなうねりを作ることは難しくても、現実を知る人が多ければ多いほど私たちの国なりにうねりが生まれていくと思います。私は命の期限を自分のInstagramで発信し続けることで、1人でも多くの人にこの現実を伝え続け、小さなうねりの一歩を作りたいと思います。
きっと日本もいつか、近い将来、「殺処分ゼロ」へ向けてうねりが生まれることを信じています。
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