秋葉原に保護猫カフェ 大都会で保護されたワケあり猫が集う
アニメやアイドルなどサブカルチャーの「聖地」とも呼ばれる東京・秋葉原。ビルが立ち並ぶJR秋葉原駅(千代田区)から徒歩8分の路地に、昨年10月、譲渡型保護猫カフェ「ちよだニャンとなるcafé」がオープンした。昭和に建てられた古い旅館を改装したレトロな建物。そこに集うのは、家族が決まるのを待つ「ワケあり」の猫たちだ。
カフェを開設したのは、一般財団法人「ちよだニャンとなる会」。千代田区と連携して、飼い主のいない猫の保護活動に取り組んできた。その結果、同区では2011年度から猫の殺処分ゼロを続けている。
カフェは、秋葉原の大通りから少し入った、静かな路地に面した所にある。建物は、1952(昭和27)年に建てられ、20数年前に廃業した旅館「東館(あずまかん)」を改装した。耐震工事や内装設備などの費用は、千代田区の外郭団体からの助成金を活用したほか、クラウドファンディングで資金を募った。328人から目標金額の1.8倍、約736万円が集まった。
「東館」と書かれたガラスの引き戸を開けて中に入ると、正面の廊下右側に、ガラス張りの一室がある。猫たちが暮らす部屋だ。定員は6匹。猫が暮らしやすいように、キャットウォークやステップも設けられている。体調変化を見逃さないために、毎日決まった時間に体重を計り、清掃は決められた方法で念入りに行う。これまでに3匹の譲渡先が見つかったという。
取材時にいた猫は4匹。気持ち良さそうに眠ったり、追いかけっこをしてじゃれ合ったり。その姿からは想像しにくいが、いずれも辛い過去を背負った「ワケあり」の保護猫たちだ。
「超マイペース」な性格だという「すもも」(推定5歳)は、神田川でおぼれていたところを助けられた。岸壁を必死にはい上がろうとしたためか、保護した時には肉球も爪も傷ついていたという。
「はな」(8カ月)は、8月に神田地区で保護された。異物を食べて腸閉塞になっており、手術を受けた。元気に回復したが、今でも口に入るものは何でも食べてしまう。
「めい」(推定3歳)は、室外機が置かれたビルの半地下に落ちているところを、保健所の職員に助けられた。毛並みはまだぼさぼさとしていて、これまで厳しい栄養状態の中で生きてきたことをうかがわせる。
「そら」(8カ月)は、区内の飲食店の裏で生まれた飼い主のいない子猫で、同会が保護した。
同会は前身のボランティアグループの頃から数えて、約17年にわたって活動を続けてきた。だが、なぜ今、保護猫カフェなのだろうか。
同会の副代表理事、古川尚美さんによると、最初に取り組んだのは、一時保護して(Trap)、去勢・不妊手術をし(Neuter)、元いた場所に戻す(Return)、TNR活動だった。これ以上猫が増えることを抑えると同時に、子猫や、人に慣れたおとなの猫の譲渡もしてきた。
しかし、千代田区内では、東京駅、丸の内、秋葉原などで大規模再開発が進み、猫が生きられる場所が失われてきているという。また工事現場で猫がケガをしたり交通事故にあったりする例も後を絶たない。そこで危険な場所にいるおとなの猫もできるだけ保護し、譲渡する方向へと動き始めたのだという。
とはいえ、現実には譲渡会を開いても、なかなか飼い主は見つからない。人に慣れていない猫が多く、短い時間ではなかなか縁が深まりにくいだめだという。そこでカフェで猫と過ごす時間を楽しみながら、気になった猫と何度も会える環境をつくって、その猫らしさや猫との相性を感じ取ってもらうのが狙いだという。
カフェという拠点を設けたことで、さまざまな人との接点も増えたという。「猫カフェと保護猫カフェの違いって何ですか?」と聞かれたことも。今も保護猫を飼っていて猫と触れ合いたいという若い男性も訪れたという。「譲渡会や保護活動など、これまでの活動では、知り合うきっかけのなかった人たちとの接点が生まれていると思う」と古川さんは話す。
「殺処分ゼロを続けるのは簡単なことではないが、なんとしても継続したい」と古川さん。秋葉原の静かな路地裏で、今日も保護猫たちが出会いを待っている。
(磯崎こず恵)
- 店舗名 :ちよだニャンとなるcafé
- 住所 :東京都千代田区外神田4丁目8の12
- 営業時間:平日14~20時(最終入店19時30分)
土日祝日 11~20時(最終入店19時30分) - 定休日 :月曜日、火曜日
- 料金 :30分コースは、平日1500円、土日祝2000円(いずれも税込み)。ペットボトル1ドリンクと、履き替え用の靴下が付く。
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