病気が進行する愛猫「ごろりん」 悩み抜いた末に手術を決断
モデルとして活躍する松島花さんの愛猫“ごろりん”は無事退院し、家で過ごす日々が始まりました。目がみえず、たくさんの薬も飲まなくてはいけないごろりん。そして病気は、少しずつ進行していきました。
大声で鳴く愛猫「ごろりん」
連載13回目の“愛するごろりん”後編の後…退院してからのごろりんには、様々な出来事がありました。
目が見えないながらも記憶を呼び起こしているのか、部屋の隅々の匂いをクンクンとかぎながら、お水の場所を探し、ドライフードがいつも置いてあるところを探し、トイレを探し、自分の欲求を一生懸命自分の力で満たそうとしていました。
ただ、行きたい場所にスーッと行けるわけではないごろりんは、時々神経質な声を出して鳴くのです。
そのうち私たちも、「あぁ、これは水が飲みたいんだな」とか「トイレを探してるんだな」と少しわかるようになりましたが、やはり大半は見えないことへの苛立ちから鳴いているようにも思えました。
特に、夜中や朝方、大声で鳴くのには悩まされました。みんなが寝静まると不安になるのか、変な大声を出して鳴くのです。私も寝不足が続き、朝が早い日の仕事の時はこたえました。
薬の副作用で困ったことも
次は、処方されていた薬の中のひとつで副作用が出て、困ったことが起きました。“ラクツロース”という薬で、これは肝臓の働きの低下に伴う高アンモニア血症の治療のために出されています。
一般には便秘の治療などに用いられる薬だそうで、ごろりんの場合はこの薬を飲み続けてどんどん便が緩くなり、下痢に変わっていきました。
目が見えなくて、体も少しふらつきがあるごろりんがトイレの中で下痢をすると、そばで見てうんちをしたらすぐにトイレの砂をかけてあげないと、後ろ脚で踏んでしまいます。踏んでしまうと、あとはご想像の通り…。
脚を洗ったり、掃除をしたりと大変になるので、ごろりんがうんちをしそうだなと思ったら夜中でも朝方でもごろりんのトイレシーンを覗き込んでいました。
兄弟猫「ゴメフェス」にも変化が
そして次は、ごろりんのことでは無いのですが…ゴメズとフェスターにも心配なことが起こりました。
それは、ゴメフェスたちのストレスでした。起こるべくして起こったことです。
ごろりんの変貌ぶりは、ゴメフェスの心にもだいぶ負担をかけていました。ごろりんには毎日数種類の薬をあげるので、チュールやその他嗜好の強いものに薬を包んであげたり、苦い薬を飲んだご褒美にとごろりんの好物をあげたりしていました。
そのことで「なぜごろりんだけ特別にもらっているのだろう?」とゴメフェスたちは思っているだろうな〜、ごろりんだけ特別扱いをしていると思わせてしまっている事はかわいそうだと思っていました。
だけど目が見えなくなって、こんなに辛い思いをして、たくさん薬を飲まないといけなくなったごろりん。ちょっとぐらいいいことがないと、やってられないよねー!という思いもありました。
ゴメズがごろりんにかみついた
ただ、ゴメフェスのストレスは、これだけではなかったのです。
初めのほうに書きましたが、昼夜問わず突然ごろりんが鳴くことで、ゴメフェス2匹も飛び起きます。
特に、ごろりんを大好きなゴメズは、もうつきっきりです。ごろりんのそばにいつもいて、豹変したごろりんを見守っています。心配しているのです。
だけど心配と同時に「どうしちゃったの?ごろりん?」と、きっととても複雑な思いに違いありません。
そんなゴメズが、3匹の中でも特におとなしく優しいゴメズが、突然ごろりんに馬乗りになり、首にかみついたのです。
それも1度や2度ではありません。何度も首をかむことが増えました。
それはごろりんに「ごろりん!どうしたの?どうしてこんなになっちゃったの?」と苛立ちをぶつけているように見えました。
崩れる日常のリズム
「多頭飼い・首元をかむ」と検索をしたら「優劣を決めたい時にかむ」と書いてある記事もありましたが、ゴメズの場合は絶対に違うと思いました。
ごろりんのことを、生後2ヶ月の時から(ごろりんは男の子ですが)母親のように慕い、ごろりんが寝ているとお腹に顔をうずめて寝るゴメズ。
ごろりんが夜中でも朝方でも鳴いたり、変な行動をとっても、ずっとそばで見守っているゴメズは、ごろりんより優位になんてなりたいわけではない!そんなことで首をかんでいるわけではないとわかります。
ゴメズは、ごろりんだけではなく、フェスターにも同じことをするようになりました。
それはとにかく、ごろりんの奇行によるストレスからだと思いました。こんなことをゴメズがするなんてありえない行動でした。ゴメフェスも日常のリズムが崩れているのです。それがよくわかりました。
ごろりんの「旋回行動」が始まった
そして11月16日。ついに心配なことが起こりました。
“旋回行動”が始まったのです。
朝、廊下をウロウロ歩いていたごろりんを見て、「ごろりん!何やってるの〜?」とのんきに笑っていました。
…ところが、昼間ずっと廊下をぐるぐるぐるぐる、1時間でも2時間でも同じところを回っているのです。
「おかしい!!」
「これは??」と思い調べてみると、肝性脳症が進み体内のアンモニアが増えていることを示していました。すぐに病院に電話をかけ、担当の先生に様子を伝えると「そろそろ薬で治療するのは限界が来ていますね。次の段階を考えていきませんか?」と言われました。
治るかもしれない、だけど…
次の段階と言うのは…
CTを撮り、門脈シャントかどうかを調べることを意味しました。でも私はすぐに「はい」とは言えませんでした。
正直な気持ち、もうこれ以上治療とはいえ、ごろりんに何かをする!ということは可哀想という思いがありました。
だけど、もし門脈シャントだったら手術をすれば治るかもしれない!という気持ちもあり、2つの相反する思いが心の中で交互に入れ替りました。
CTを撮り、そして手術になれば、また最低でも2回麻酔をかけなければなりません。脳症のあるごろりんには、麻酔自体がハイリスクなのです。そのことも悩む大きな原因の1つでした。
これ以上治らなくても、ちょっとおかしなごろりんでも、内服治療だけで暮らしていけたら、これでもいいのではないか?と悩みました。
門脈シャントが見つかった
そして、数日が経ちCT検査をするか?しないか?の話をする検診の日がきました。
これまでの気持ちを正直に話しましたが、担当の先生からは「このままだと、どんどん脳症が進み悪くなります。腹水も溜まってくるかもしれません。もし門脈シャントだったら、手術すれは治る可能性があるのです」と手術を勧められました。
悩みましたが、CT検査をし、まず門脈シャントがあるかどうかを調べることだけでもしようと決めました。そして、CT検査の結果、やはり門脈シャントは見つかりました。
次は、消化器の先生から、CTを見ながらごろりんの門脈シャントの説明がありました。
「ごろりんのシャント血管は、1本でした。手術出来ます」と言われました。シャント血管が複数本ある場合は、手術は出来ないのだそうです。
ただ問題もありました。ごろりんのシャント血管がとても太いことでした。
本来門脈シャントは、先天性で1〜2歳で症状が出て見つかることが多いのだそうです。ごろりんは保健所収容猫なので、推定ですが6歳なので、「ここまで症状が出なかったのはシャント血管が少しずつ太くなり、この年齢で症状が出たのでしょう」と言われました。
ごろりんのように太いとどうなるか?と言うと…この太さで今まで身体のバランスがとれていたとしたら、いきなりシャント血管を縛ると身体のバランスが崩れ、容態がさらに悪くなる可能性もあるのだそうで、もし手術するとしても1度に全部縛るのではなく1/2縛るとか、1/3縛ることもあるそうです。そうなった場合、最悪、再手術、再々手術も有り得るというお話でした。
失明するかもしれない
そして、もう1つ。
門脈シャントの手術は、術後72時間以内に、原因不明の発作が起きる可能性が1〜2割あるそうです。
体調が悪くなったり、目が見えている子は失明したりすることもあるそうで、ごろりんのように目は見えてはいないけれどうっすら明暗がわかる子は、完全に見えなくなることもあると聞いた時、もうそのことが1番悩みました。
もしも…もしも…何も見えなくなったら…。
うっすらでも明るい、暗いがわかるのに、真っ暗な世界になってしまったら…と思うと「手術お願いします!」とは、とても言えません。手術するかどうかの返事は、持ち帰ることにしました。それからの日々は、みんなで毎日話し合いました。
脳症が進行、そして決断
可能性を信じるか、でも今以上に悪くなることもないわけではない、どうしよう!と。
すると、悩んでいるうちに、ごろりんの旋回行動がどんどんひどくなって来ました。狭いところをクルクル回ることが多くなってきたのです。
明らかに脳症が進んできました。それが、手術をする決断に繋がりました。
「よし!手術をしよう!!」
このままだと、どんどんひどくなってしまう。可能性にかけよう!となりました。そして、手術日が12月2日の午前中に決まりました。
私は仕事で行けなかったので、当日は母に頼みました。手術が終わった後、先生からの第一声は「全部縛れました!!」 母からも直ぐに連絡をもらいました。
「ごろりん頑張ったよ!シャント血管、全部縛れたよ!!手術成功したよ!」と泣きそうな母の声でした。もう、うれしくてうれしくてたまりません。
何も起こらないことを祈った
後は、72時間何も起こらないことを祈るばかりです。ただ、私はそのタイムリミットを待たずして仕事のためにハワイに行くことが決まっていました。その代わり、ハワイの出発前日は1日ごろりんの病院で過ごしました。
「あ〜、なんで、こんな時に…ごろりんの側にいられないんだろ〜!」
仕事でハワイに出発してからは、毎日ごろりんの様子を電話やムービーで聞いていました。術後の経過も至って順調。72時間も無事に過ぎました。
少し心配なことと言ったら、手術で縫ったところに漿液(しょうえき)が溜まり、傷口の乾きが遅く、退院が遅れたこと。
せっかく手術がうまくいったのに傷口が化膿すると、また傷口を開かないといけなくなるそうで、そこは早く連れて帰りたい気持ちを抑えて慎重にしました。
愛猫ごろりん、やっと退院
退院が数日、また数日と遅れるなか、体調も良く元気になったごろりんを、後はかかりつけの先生にも診て頂くことを条件に、少し無理を言って退院させてもらったのが12月12日のことでした。
そして、やっと連れて帰る車の中、感情が少し戻ったかのように、ずっと鳴いていました。
「ごろりん!もう直ぐだよ!早くお家に帰ろうね!!」
名前を思い出す日が来ると信じて
これから、またごろりんとの新しい生活が始まります。脳症がどこまで回復するのかわかりません。最悪このままかもしれません。目も見えるようになるのか、このままかもしれません。
でも、きっと“ごろりん”という名前を思い出して、また喉を思いっきり「ゴロゴロ〜」と鳴らして甘えてくれる日が来ると信じています。
こんなに、次から次へと大変な事になったごろりん!
だから…私のとこに来たんだね!!
ずっと仲良く暮らそうね!!
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