普段の姿を見て、家に迎える猫を選ぶ 保護猫カフェの仕組み

 保護猫カフェは、保護猫とふれ合える最も身近な場所。ちょっと猫に遊んでもらいたいという一見さんから、わが家に迎える猫を探しているという人まで気軽に立ち寄れるのが魅力だ。そんなお店のひとつ「譲渡型猫カフェにゃんくる 桜木町店」を取材した。 (写真・芳澤ルミ子、Text by Minoru Saito)

(末尾に写真特集があります)

保護団体との提携

「保護猫カフェ」とは、さまざまな事情で保健所に収容されていた猫や動物愛護団体に保護された猫がいる猫カフェのこと。売上げの一部が動物愛護団体に寄付されたり、猫たちの医療費に充てられたりするところも多い。面談などを経て条件が折り合えば、客が里親になることができる。気軽に猫とふれ合えるという点は、通常の猫カフェと全く変わらない。

 現在、保護猫と接点を持つには、もっとも身近な場所と言えるだろう。猫とふれ合いたいという人間側の欲求を満たすだけでなく、猫自身の幸せを考えた仕組みになっているのが一般的な猫カフェと大きく異なっている。

にゃんくる桜木町店で思い思いに過ごす猫たち
にゃんくる桜木町店で思い思いに過ごす猫たち

「譲渡型猫カフェにゃんくる」もそうした保護猫カフェの一つ。2013年以来、川崎、鎌倉、桜木町、蒲田に4店舗を展開し、2018年6月までの5年間で1200匹を新しい家族のもとに送り出してきた。 猫たちは、にゃんくるがオープン以来提携している、山梨で保護活動を行うNPO法人リトルキャッツを介してやってくる。

「猫の保護団体は、譲渡会場の手配やボランティアの募集、日常のお世話など、とても大きな労力を必要としています。私たちはこうした活動をお手伝いしています」と、にゃんくるを運営する株式会社アンビシャスの代表・後藤靖雄さんは語る。

 またリトルキャッツには、里親を希望する人に常設スペースで自然に近い猫の姿を見てもらった上でマッチングをするという方針がある。猫は慣れない場所に行くと緊張して普段と違う様子になりがちだ。「おとなしいと思っていたら暴れん坊だった」など、普段とのギャップがミスマッチの原因になることも。

 これを防ぐためにも猫カフェは理想的な譲渡会場と言える。

猫の数だけ過去がある

 にゃんくる各店には、保護された経緯もさまざまな猫が常時約30匹いる。桜木町店にいる猫たちについて訊ねると、「この間は、多頭飼育崩壊で50匹を保護したお宅から4匹が来ました。他にも家族の事情で飼えなくなった猫や、高齢の方が手離したシニア猫が来ることもあります」と、4店舗の統括マネージャーを務める田中ゆみさん。

 例えば、そうめん(♂)は山梨の大学の周りに住む野良猫で、保護サークルの学生が保護したそう。学生たちにかわいがられてきたせいか人懐こい。

 ペッパー( ♂ )とソルト( ♂ )は、元の飼い主さんを亡くして身寄りがなくなったところを保護された。知らない環境にとまどい、ストレスで嘔吐を繰り返していた時期もあった。中にはなかなか心を開かない子もいるが……。

「お店のスタッフは猫に気に入られるように努めています。撫でてくれるし、食べ物もくれるし、人間は便利なものだなと思ってもらえるように」と田中さんは笑う。

壁面にはバックヤードに通じる猫用通路。休憩したい猫が愛用する
壁面にはバックヤードに通じる猫用通路。休憩したい猫が愛用する

「トライアル」で見極めを

 にゃんくる4 店舗には計130匹ほどの猫がいる。里親との出会いのチャンスを増やすため、一定期間ごとに猫を店舗間でローテーションしたり、定額で客が一日全店を回り放題の「フリータイム」というシステムも導入している。

 では、カフェの猫を家に迎える場合はどういうプロセスを踏むのだろうか。

 最初はどの猫にするか家族で相談してもらい、意中の猫と全員に会ってもらうところから。次はリトルキャッツによる審査に移る。ここでは、猫を飼える住環境にあるか(ペット禁止の家に住んでいないか)、希望者が高齢や未成年の場合、理解のある後見人がいるか、経済基盤はしっかりしているか、必要に応じて動物病院に連れていってくれるか、完全室内飼いを徹底するか、といったことをしっかりと確認する。

 審査の後はトライアル(お試し飼育)で1週間から10日ほど一緒に暮らし、晴れて正式に猫が家族の一員になる。この期間で里親になるのを断念する人もいるそう。特に飼ったことがない人はとまどうことも多いようだ。カーテンに上ったり、ソファで爪を研いだり、夜中に運動会をしたり……。「こんなはずじゃなかった」という思いを抱えたままでは猫にも人にもストレスになるし、最悪の場合、飼育放棄などの不幸にもつながりかねない。ミスマッチを避けるためにも、この期間は非常に重要だ。

 田中さんによれば、飼い主を亡くしたペッパーのトライアルではこんなことがあったそうだ。

「とても優しくて繊細な高校生のお嬢さんが猫の気持ちに寄り添うあまり、心を痛めてしまって……」 ペッパーは店に戻ることになったが、親御さんからは差し入れと寄付をいただいたそう。里親にはなれなかったが、保護活動や猫への理解を高めるためには良い機会になったに違いない。

あきな(上・♀)とペッパーは遊び好き
あきな(上・♀)とペッパーは遊び好き

新しい家族と幸せに

元野良のシーラ( ♂ )という猫は、保護された当時、まぶたの隙間から潰れた目がようやく見えるほどの状態で歯肉炎もあった。快復して店に出ると、とても人懐こい性格から人気者になったそう。それでもなかなか里親が見つからなかったが、ついに新しい家族と出会い、とても大切にされているとか。

 子猫の世話が上手でみんなに好かれていたオリオン( ♂ )もやはりなかなか良縁に恵まれず、長い猫カフェ暮らしを経験した。ようやく出会った里親から送られてきた写真では、店にいた時よりずっと穏やかで優しい顔をしていたという。

 どれほど手厚いお世話を受けても、猫カフェは仮住まい。一匹でも多くの猫を安住できる家に送り出し、愛情を注いでくれる家族のもとで幸せに暮らしてほしいというのがスタッフ全員の願いだ。

 里親になった人たちも良縁を喜び、写真で近況を知らせてくれたり、店でオフ会を開いてくれるそう。遊び相手がほしいと2匹目を求めることもあるとか。

 にゃんくるでは、川崎店を猫エイズキャリア限定の猫カフェにするなど、新しい試みも始めている。猫を迎えたいと思っている人たちにとっても、もっと素朴に猫とふれ合い遊ぶ楽しさを知りたいという人にも、にゃんくるのような保護猫カフェは開かれている。

譲渡型猫カフェ にゃんくる 桜木町店

神奈川県横浜市中区花咲町1-46 桜木町ビル3F
TEL 045-315-5602
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
http://www.nekocafe-leon.com
Twitter:@nekocafe_leon

辰巳出版が隔月で発行している猫専門誌です。猫愛にあふれる企画や記事の質に定評があります。

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この特集について
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