老舗銭湯の女将が保護猫のお世話 蔵や自宅で20匹ほどが暮らす

保護猫たちは床暖房が入った部屋で、自由に伸び伸びと過ごしている

 信州松本城のほど近くに、白く美しい外壁の装飾が目を引く老舗銭湯がある。明治時代初期に創業された塩井乃湯だ。建物は大正時代に建てられたもので、木札がついた下駄箱脱衣所のカゴなどは昭和レトロ。なんと雰囲気ある銭湯だろう。

お湯は湯冷めしにくい効果があるという塩湯鉱泉。身も心も芯から温まる

 この塩井乃湯の裏手にある蔵や自宅で、保護猫のお世話をしているのが4代目の女将、田中洋子さん(72歳)。冬号CNNでご紹介した「一般社団法人もふもふ堂」ができる前から、松本市近辺で保護された猫たちを個人で引き取ったりして面倒を見てきた。保護猫が数多く暮らせる「ねこカフェもふもふ」の施設ができ、保護猫たちは引き取られていったが、高齢など事情のある猫20匹ほどが、今なおここで暮らしている。

田中さんが部屋に入ると、子猫たちは我先にとお膝の上に跳び乗ろうとする

「多いときは40匹ほどもいたでしょうか。過酷な環境にいた猫たちが、うちに作ったシェルターでおいしそうにごはんを食べ、お腹が満たされて幸せそうにしていると私も満足なんです」

ベランダに作られた猫の小屋。外の空気を吸い、陽の光を浴び、季節ごとの風の香りも愉しめる

 松本近辺は、冬季は厳しい寒さで外猫たちが生きていくのは厳しい。田中さんは自ら車を運転して世話して回った。時間も資金も手間も労力も、すべて自分持ち。その原動力は何なのだろう。「あのコたちが待っている。理由はそれだけで充分なのではないでしょうか」。

 松本城下の名水の井戸、豊かな鉱泉がうれしい塩井乃湯のもとで、保護猫たちも温かく暮らしている。

(取材・鈴木美紀)

塩井乃湯
◉長野県松本市大手3- 6- 3
◉ 営業時間/15:00~22:00
◉TEL 0263-32-1507
◉定休日/月曜
http://www.mcci.or.jp/www/sioinoyu



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