人間の言葉を話さないペット 健康診断で早期の異常発見を

(写真は本文とは関係ありません)
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  • :狂犬病予防注射をする際、健康診断を勧められました。
    :山根 人間の言葉を話さない動物の体調の変化を把握するのは、なかなか難しいものです。気づいた時には手遅れになっているということも、珍しくありません。自覚症状を言葉にできる人間でも、定期的に健康診断を受けるわけです。変化に気づきにくい動物たちこそ、飼い主が進んで健康診断を受けさせてあげることが大切です。
  • :具体的にどんなことをするのでしょうか?
    :山根 血液検査が基本です。2、3歳までの若年期と、それ以降の成犬・成猫期、7歳を超えたシニア期とに分けて、段階的に検査項目を増やしていきます。動物病院によっては尿検査をするところもあると思います。

     これらにプラスして、犬なら犬糸状虫(フィラリア)に感染しているかどうかを調べる抗原検査、猫なら猫白血病ウイルスと猫エイズ(FIV)感染症の検査をすることもお勧めします。

     こうした検査を通じてなんらかの異常が発見されれば、その症状に応じて心電図検査やX線検査、超音波(エコー)検査などを行うことになります。
  • :どんな病気が見つかりますか?
    :山根 一概には言えませんので、私の経験をお伝えします。犬では、やはりフィラリア症が見つかることが多いです。また、初期の心筋症を発見できることもあります。猫では、特に成猫になると、腎機能の異常が出やすい。元気そうに見える猫でも、腎不全が見つかるということが少なくありません。

     健康診断をしてみると、飼い主さんが思いもよらなかったような病気が見つかるケースが実際に少なからずあるのです。
  • :日常的に、自分で健康をチェックできますか?
    :山根 毎月1回程度、体重を量り、その推移を記録するのがいいと思います。たとえば、小型犬や中型犬で2カ月前と比べて1キロも体重が減っているようなことがあれば、それは大きな異常です。犬の体重が人間の10分の1程度だとすれば、1キロは人間の10キロにも相当するわけですから。体重の推移を記録していなければ、犬も猫も身体が被毛に覆われており、こうした変化にも気づきにくいのです。

     いずれにしても、少なくとも年1回、健康診断を受けることをお勧めします。

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年4月発行)掲載)


イヌ・ネコ ペットのためのQ&A

監修: 山根義久
編著: 公益財団法人動物臨床医学研究所
発行: パイ インターナショナル

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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