ひとりぼっちの子猫 消えない「薄幸の美少女」の面影

今はひとりぼっちじゃないモモ
今はひとりぼっちじゃないモモ

 2匹の猫を飼っていますが、性格が全く違います。

 

 子猫の頃、母猫やきょうだいと共に過ごした「あんず」は、天真爛漫で人なつっこく、愛情表現がわかりやすい。

 

 もう一匹の「モモ」は、基本的に内気で、初対面の人には心を開かず、自宅でもびくびくしたり、ひどく甘えたり、その心情は不安定。

 

 そんな2匹の猫の生い立ちを振り返ると、育ってきた環境が性格に影響するんだなぁと、実感せざるを得ません。

 

 前回はあんず、今回はモモのお話です。

 

 モモがあんずと同じNPO団体に預けられる前は、都内に住むマダムAさんが緊急で保護していたそうです。

 

 ある朝、Aさんが自宅を出てしばらくすると、どこからともなく子猫の鳴き声が聞こえました。しかし、姿は見えなかったので、そのまま出かけました。

 

 その日の夜、自宅への帰り道で、まだ同じ子猫の鳴き声が聞こえてきました。

 

 あれから、まだ鳴いてるのか……。

 

 雨も降ってきて、春とはいえ少し寒い。

 

 Aさんは子猫の様子が気になりました。鳴き声がする方を探すと、植え込みの中に、生後1カ月ほどの子猫が1匹でいました。やせて、衰弱した様子。飼い猫には見えないし、母猫の姿も見当たらない。

 

 母猫が置いていったのか、死んでしまったのか、人間に捨てられたのか……。とにかく、このまま放ってはおけない……動物好きのAさんはそう思いました。

 

 自宅で高齢の犬を飼っていたので迷いましたが、猫を連れ帰り、一通りのお世話をしてあげたそうです。

 

 数日すると、子猫の体調は回復しました。ケージの中で世話を続けていましたが、高齢の犬と一緒に飼い続けるのは難しいと判断し、Aさんは知り合いのNPO団体に預けて里親を探してもらうことにしたそうです。

 

 そして、わたしが里親になったわけです。

 

 里親捜しのホームページで見たキャッチコピーは、「ひとりぼっちのよもぎちゃん(うちにきたときモモに改名)」。かなり、印象的でした。

 

 そのキャッチコピー通り、譲渡会に参加したときのモモは、とてもおとなしく、孤高の存在のように見えました。

 

 生後4カ月にして、孤独を受け入れているかのようなその姿。そして愛らしさ。まるで、病院の窓から枯れ木を眺める薄幸の美少女のよう。そこに惹かれて、夫は一目惚れした……のかどうかは分かりませんが、我が家に来ることになりました。

 

 他の猫にも人にも、おびえ気味で、唯一心を許していたのが、同じケージで過ごしていた「あんず」たちきょうだいだったそうです。

 

 あんずと一緒に我が家にきたときも、モモはしばらく食事とトイレ以外は隠れて過ごし、くつろいだ様子もみせませんでした。

 

 しばらくして、あんずの無邪気さのおかげもあり、一緒に遊んだり、ひざの上に乗ったり、甘えてくるようにはなりました。

 

 でも4歳の今でも、チャイムが鳴ると一目散に隠れるし、ちょっとした物音で飛び上がるほど怖がるし、基本的にビクついていて、なんだか気の毒にさえ見えます。

 

 子猫のころ、怖い思いをたくさんしたから、それが自分の身を守るための対処法なんでしょうが、あんなにビクついていては、命を削っているような気もします。

 

 でも、初対面の人でも腹を見せてじゃれるあんずより、モモのほうが猫らしいし、野生においては長生きするのかもしれません。

 

 どちらが猫にとって幸せかは分かりませんが、人としてうらやましいのは、あんずです。どちらかというと、モモのような陰気な性格の飼い主なもので。別に植え込みに捨てられていたわけじゃないのに、なぜだろう。

 

(ヤスダユキ)

sippo
sippo編集部が独自取材した記事など、オリジナルの記事です。

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猫アレルギーですけど
普通の家で飼われている猫「あんず」と「モモ」。飼い主の主婦が、2匹との生活や発見をユニークな視点で切り取る人気連載です。
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