視察報告 ネグレクト状態の犬をどう救うか

 当協会が受ける虐待疑いの電話で一番多いのは、劣悪な飼養管理つまりはネグレクトについての相談です。今回は、犬のネグレクト事例について報告いたします。

 当該犬は、黒のラブラドールレトリバーで、

「エサも水も十分に与えられず、削痩している。また、日差しや雨風を避ける場所もなく、糞も散乱しているため、近所から苦情がきたりしているが、飼い主は一向に改善する様子はない。この飼い主は、以前も同じような飼養管理で、何頭もの犬を、熱中症や飢えで死なせている。このラブラドールを同じ目に合わせないためにも何とかしてほしい」

 との相談電話がありました。また、相談者は、飼い主の許しがあれば、引き取って飼いたいとの意向でした。

 その日は、相談者に、管轄保健所への連絡をお伝えし、当協会からも保健所に早急な対応をお願いしました。しかし、すぐに、相談者から、「保健所に連絡したが、すぐには動けないと言われた。暑い日が続いているので、このままでは命の危険がある。」との電話を受けました。

 そのため、相談者には、毎日、水とエサを与えてもらうように依頼するとともに、協会としても、早急に視察にいくことにしましました。

 視察当日は、相談者も同行し、現場へ向かいました。現場に到着すると、当該犬は、元気・食欲はあるものの、肋骨がくっきりと浮き上がるほど、削痩しており、マダニも多数寄生していました。フードボウルや水入れは、用意されていましたが、エサも水も空の状態で、犬小屋もなく、満足な雨除けや日除けはありませんでした。また、木に繋がれている状態で、行動範囲内には、糞便が散乱し、周囲に悪臭が漂っていました。

 猛暑の中、黒毛の子が、日除けもなく、ましてや水もない状況に置かれていることは、まさに生き地獄です。

 

 飼い主は、仕事で、日中はほとんど、家にはいないとのことで、視察当日も、やはり、お留守でした。そのため、飼養管理の改善点と、このままでは、動愛法違反に抵触する可能性があることと、近いうちに再訪問及び電話をさせていただく旨の手紙を置いて帰りました。

 戻ってから、すぐに管轄保健所に視察結果を報告したところ、保健所でも、同日午後に現地視察をしていました。今後、飼い主の職場に連絡をし、指導していくとの回答を得たため、当協会としては保健所の動きを待つこととし、また、相談者には、できるだけ、毎日様子をみていだたき、水だけでも与えるようお願いしました。

 その後、保健所もなかなか飼い主とコンタクトが取れない状況が続きましたが、相談者が熱心な方で、ほぼ毎日、日課のように現場の様子を保健所に伝え、その結果を当協会に報告してくれました。その都度、こちらもアドバイスをしていたのですが、相談電話から一週間後、相談者からうれしい連絡が!!

 その日、いつものように様子を見に現場に行ったところ、飼い主に偶然遭遇したため、当該犬を譲ってほしい旨をお話ししたそうです。その結果、「どうぞ~どうぞ~」という感じで、譲ってもらえましたとのことでした。

 そして、そのまま、動物病院を受診したところ、フィラリア感染症がみつかったので、しっかりと治療して可愛がっていきます。とのことでした。

 今回は、保健所もしっかりと対応しており、また何より、相談者が自治体任せにせず、自ら積極的に行動したことが良い結末に繋がったのだと思います。

 しかし、現行の法律では、この無責任な飼い主は、何の罪にも問われないばかりか、今後も動物を飼うことが出来るのです。

 相談者には、今後の対応として、再びこの飼い主が同様の飼養管理を繰り返した場合、近所の方々と協力して、すぐに保健所に連絡指導してもらうようお願いしていますが、改めて、動愛法に「飼養禁止」の罰則が必要であると痛感した一件でした。

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この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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