ピン、沖縄へ帰る 目に焼き付けたギザギザ尻尾

ピンのひどい咳と、ひどい下痢は、我が家に来て2週間、全く治まりませんでした。下痢が続くのもかわいそうだったけれど、もっとかわいそうなのは、何かがのどに詰まっているのではないかと思えるほど辛そうにする咳……。
体重が2キロに満たない小さな身体から振り絞るように咳をするピンに、この子は死んでしまうのではないか……と何度思ったかわかりません。
初めて飼った犬が、こんなことに……。長年の不妊治療で、何度も流産や不育を経験していた私は「とことん、命あるものに縁がないのだ」と涙があふれました。ピンもまた、少し経ったら私の前からいなくなってしまうのではないか……。私は本気でそう思っていたのです。
そんなある日、「Sパパさんに聞いてみようか」とパートナーが言い出しました。Sパパさんとは、ピンが生まれた沖縄県浦添市にある「ハウスドッグ」のオーナーさん。「ハウスドッグ」で産まれた犬を飼っている方たちから、そう呼ばれて慕われていたのです。
早速、電話をしてみると、「そんなハズでは……」と、まずピンの咳が止まらないことに驚くSパパさん。続いて、「食欲がまだありますか?」と聞かれ、「それは、あります」と言う私たちに、「一度、送り返していただけますか? 自分で見てみたいんです。これで食欲がなくなったら、飛行機に乗せることも危険になるので」と……。
最初に行った動物病院の獣医師さんに言われた「返品」という言葉が頭の中を駆け巡りました。「ピンを送り返して、別の犬が送られてきたらどうしよう……」本気でそう思いました。
多くのミニチュア・ピンシャーがそうであるように、ピンは産まれてすぐに尻尾を短くカットされていました。その先端が変わったギザギザになっているのが、当時のピンの最大の特徴でした。
私はピンの尻尾のアップの写真を撮影。自分の目にもピンの尻尾を焼き付けました。
そしてピンはまた、オレンジ色のふた付きバスケットに乗り、羽田空港の貨物ターミナルから故郷・沖縄県浦添市へと戻っていったのです。
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