「ピン」という名をつけた訳 我が家に来て早々、「不良品」?
私にとって「初めての犬」となったミニチュア・ピンシャー。名前はピン。女の子です。
この名前は、沖縄県浦添市でミニピンとタイ・リッジバック・ドッグ専門のブリーダー(当時)「ハウスドッグ」のホームページに載っていた〝お目当ての犬〟の画像に付けてあった仮名でした。
ミニピンで「ピン」とはあまりに安易だし、女の子っぽい名前でもないし、「我が家に来たとき、顔を見てから正式な名前を付けよう」とパートナーと決めていました。それなのに、正式名称も結局「ピン」に……。
それは、ピンが我が家にやってきた翌日から、動物病院のお世話になったからに他なりません。知人の紹介で飛び込んだ動物病院の動物看護師さんから「お名前は?」と聞かれ、「まだ正式ではないんですが……」と言いながら「ピンです」と答えたところ、そのままカルテに書かれてしまいました。
それでも「正式名称は後から……」と諦めていなかったのです。でもそれから私とピンは、1週間のうちに計2件、回数でいうと5回も動物病院に行くことになり、結果、大量の薬袋にも「ピン」と書かれ……。新しい名前をつける時間もなくなってしまいました。
ピンは我が家に来た途端、激しい咳を何度も何度もし始めたのです。のどに何かが詰まったような苦しそうな咳を連続で10回以上。ラスト1回はさらに苦しそうになり、人間の(しかもオジサンの)大きなクシャミと咳払いが混ざったような、聞くに堪えない咳でした。
それを1日に何度もするので、慌てて知り合いに紹介してもらった動物病院に駆け込んだというワケです。
「まだ昨日、家に来たばかりで」
「私は犬を飼うのが初めてで」
「とにかく来たときから、この苦しそうな咳を何度もしていて…」
慌てふためいて説明する私に獣医師さんは「不良品ですね。返品したらいかがですか?」と言ったのです。
その言葉がどれだけひどいことなのか、そのときは理解もできませんでした。夜、帰宅したパートナーに泣きながら事情を話すと、「自分も話を聞きに行きたいから」と。2日後、今度は2人で、またその病院を訪ねました。
診断は誤嚥によるもの、とのこと。獣医師さんは「このままお宅で育てるとおっしゃるなら、喉に管を通して、2カ月入院させて、ご飯は……」と、とうとうと説明します。その説明を聞きながら、私はまた涙が止まりませんでした。こんなに小さな身体で、沖縄から飛行機に乗って我が家に来てくれた途端に喉に管を通されて、そこから流動食で、しかも2カ月も入院??? 「少し考えさせてください」と私は言い、帰宅しました。
この動物病院は知り合いの紹介ではありましたが、我が家から車で30分以上かかることもあるのと、いわゆる「セカンドオピニオン」も聞きたかったので、翌日はまた別の動物病院を訪ねました。
2件目の動物病院の獣医師さんは、お若くて、いかにも新米……というカンジでしたが、言葉遣いがとても丁寧な方で「ミニピンさんは……」と〝さんづけ〟しながら、色々な話をしてくださり、また別のお薬を出してくれました。
そうした薬のせいなのか、ピンは今度はひどい下痢になりました。オシッコもまだ覚えてくれていないのに、家のあちこちでユルいウンチをするピンに対し、先に音を上げたのはパートナーでした。
そのことで朝から口げんかも絶えませんでした。彼としては、家で仕事をすることが多い私が寂しくないように……と犬を飼うことを思いついたようで、「こんな思いをするために犬を飼ったんじゃない!」と毎朝、怒っていました。彼も辛かったのだと思います……。でも、
「私は、絶対、ピンを返したくない」
犬嫌いだったはずの私は、ピンがきてすぐに、もう情が移ってしまっていたのです。
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