保護犬・ハンターと一騎の「過去」 正式譲渡の日に聞いたこと
ご飯のときに後ずさり。抱っこすると、2回に1回は震える。夫が帰ってくると、家の中を10周ぐらいウロウロ。ペットボトルのキャップが床に落ちたくらいの音にもビクッとして身体が硬直してしまう……。保護犬のハンターは、なかなか我が家と私、特に夫には慣れてくれませんでした。
でも1カ月を過ぎた途端に、劇的になじんでくれたんです。まだ、小さな音にビックリすることは変わりませんが、私が仕事をしていると、鼻で私の足をつついたり、ときには抱っこをせがんだり。ご飯の最中の後ずさりもなくなりました。
そして、正面から手で頭をなでても逃げなくなりました。これは本当に大きな成長でした。最初の頃は、真正面から何かをしようとすると、ハンターは必ず逃げました。きっと、怖い思いをいっぱいしてきたのでしょう。そう思うと胸がはりさけそうになるし、涙が出ました……。
私が仕事でバタついていたこともあり、動物愛護団体「the VOICE」からの正式譲渡は2015年3月22日となりました。ところは東京都世田谷区の自動車販売店兼カフェ。ハンターと出会った2カ月前と同じく、譲渡会が行われている会場でした。
というわけでまず、1月の譲渡会で気になっていた一騎を探してみました。すると、寒がりのミニチュア・ピンシャーだけあって、着ぐるみのようなお洋服を着せてもらっている姿を発見しました。でも、やはりケージの中で固まっている一騎……。「また、う~~~って言うのかな?」と恐る恐るハンターと〝ご対面〝させてみると、この日は鼻と鼻を近づけ、共に喜んでいるようなそぶりでした。
そこで私は「一騎も連れて帰っちゃダメですか?」とthe VOICE代表の有動敦子さんにたずねました。でも有動さんは「もう少し社会性をもたせてから」「まだ、ちょっと厳しいと思います」とのこと。愛護団体の方はやはり〝犬猫のプロ〝なのです。ということで、一騎を迎えるのはもう少しガマンします。
さて正式譲渡となったこの日、有動さんから、ハンターと一騎が保護されるまでのいきさつを聞くことができました。もろもろの手続きを終えると有動さんが「この前の譲渡会のとき、この子たちを保護してくださった方とお会いになりましたっけ?」と……。「いいえ」と答えると、有動さんが2匹の「過去」を語ってくれたのです。
ハンターと一騎は昨年11月、もう1匹のミニピンと共に3匹で、首輪もつけず、国分寺市の路上を震えながら寄り添うように歩いていたのだそうです。それをたまたま、犬の散歩をしていた女性が見つけてくださった。その女性はいったん飼い犬を家に連れ帰り、自分だけまた現場に戻って、3匹を探してくれたのだとか。
その後、近くの工場の敷地内に3匹を追い込み、工場にいた男性と一緒に捕獲。自分では飼えないということで、東京都動物愛護相談センターの多摩支所経由でthe VOICEに2匹がやってきたのです……。ご安心ください。もう1匹は、別の団体が引き取ってくれたとのことです。
それにしても、すばしっこいミニピンがなぜ、ゆっくり歩いていたのか。いくら犬を飼っているとはいえ女性と、工場の男性の2人で、ミニピン3匹を一緒に保護できたというのは奇跡に近いと思いました。
ハンターが、本当に大変な思いをしてきたということ。そして、多くの方に助けられて我が家にきたこと……。有動さんのお話を聞きながら、涙があふれて止まりませんでした。
私たちは、3月22日の正式譲渡の日をハンターの誕生日に決めました。そして、生まれ年は2012年に。推定3~5歳と言われていましたが、こんな甘えん坊は、たぶん2歳に近い3歳だと思ったからです。
ハンターはいま、パソコンに向かう私のひざの上でスヤスヤ眠っています。
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