ほえる、かむ、散歩ができないハイパーなダックスの子犬 人を見て態度を変えてる?

「クレートは乗るもの」by桃くん。ハウストレーニングができていなかったころ(お母さん提供)

 これまで3匹の親子犬を育ててきた。見送ったあと、さみしさもあって再び子犬をと考えるように。しかし、お迎えしたダックスフントは、それまでの穏やかな犬たちとは似ても似つかないハイパーボーイで……。

 UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の激アツ店長こと高橋信行さんは叫ぶ!

「犬たちの個性は犬それぞれ。前の子と比べられても犬は困惑するばかり!」

(末尾に写真特集があります)

新たな家族との出会い

「もう一度、子犬から育てたい」

 九州の実家では、最初に男の子、次に女の子を迎え、その子どもにも恵まれて、3匹のダックスフントが暮らしていた。しかし両親が高齢になって健康不安が増え、犬は1匹が亡くなり、2匹がシニアになったことから、東京に暮らす娘夫婦が親と犬を呼び寄せた。ところが、3年の間に犬たちが次々と虹の橋を渡ってしまう。

「犬たちを孫のようにかわいがっていた両親は気落ちし、父は毎日お線香をあげていたのですが、とてもさみしそうで……。 私自身も喪失感が大きく、また犬と暮らしたい、子犬をお迎えししたいと考えるようになりました。とはいえ、高齢の両親が世話をするのは難しい。夫と相談し、私たち夫婦が主となって育てようと決めました」と、娘(=お母さん)は話す。

 インターネットを検索して見つけたブリーダーに話を聞きに行くと、家庭の事情や思い、不安にも親身に相談に乗ってくれた。子犬を迎えた多くの家族と関係をずっと続けるという、面倒見のよさも安心感があった。「このブリーダーさんから子犬をお迎えしたいと思いました」とお母さん。待つこと半年。ようやく連絡が来て、生まれてまもない子犬に会いに行った。

「4匹のきょうだいのうち、3匹はすでにおうちが決まっていました。まだ行き先が決まっていない男の子は最後までお母さんワンコのおっぱいに吸い付いてるような甘えん坊で。とても私に懐いてくれてかわいかった」。出会いの日を思い出し、お母さんは目を細める。「このタイミングを逃すと次はいつになるかわからない。その子のお迎えを決めました」

 環境や相性を確認してからと、複数回のトライアルをさせてくれることに。すでに心は決まっていたが、3回のお試しお泊まりを経て、子犬は正式におうちの子となった。「父が喜んでくれて、本当にうれしかった」。お迎えした日が、最後に見送った女の子のダックスの命日と同じ日ということにも運命を感じたという。

 名前は「桃」に。「私は響きがかわいくて気に入り、夫は昔話の『桃太郎』にあやかり心身ともに健やかに強く優しく育ってほしい、と。そんな私たちの思いを込め、呼びやすい『桃』にしました」とお母さん。

「はじめまちて〜」。トライアルの桃くん、リラックス!(お母さん提供)

子犬育て、どんどんエスカレートして…

 当時住んでいた家は二階建ての一戸建てで、階段の下に愛犬用のスペースが設けられていた。ここを桃くんの専用のお部屋に。おじいちゃん、おばあちゃんは1階で、2階はお父さん、お母さんの生活スペースに。「桃はとにかく元気いっぱい。両親では目が届かないかもしれないので、夫と私が仕事でいないときは桃はフリーにせず、自分のスペースで過ごさせるようにしました」とお母さん。

 おじいちゃん、おばあちゃんしかいない昼間、桃くんは静かに過ごしていたという。ところがお母さんが帰宅すると「こっち来て!かまって!」とばかりにほえまくる。ブリーダーから「叱っていい」と言われていたため、お母さんは強めに注意。ところが「聞く耳を持たないどころか、さらに大声でほえ返してきて、それに対して私がもっと大きな声で注意し、すると桃はもっともっとほえて……と、どんどんエスカレートしていきました」。お母さんはため息をつく。

イケワンだけど激強ダックス(お母さん提供)

 ブリーダーからは「エネルギーの発散のためにも1時間はお散歩するように」とアドバイスされていたが、桃くんは行きたい方向に行き、あっちをクンクンこっちをクンクンとまともに歩かない。

 また、桃くんは甘がみがひどかった。興奮して本気がみになり、パンツの上からお尻にかみつかれ血が出てしまったことも。心身ともに追い詰められていったお母さんは、自分が在宅しているときも桃くんをほぼ、専用スペースで過ごさせるように。桃くんはベッドにかみつき振り回し、トイレトレーからシートを引きずり出してボロボロにかみちぎった。「メッシュ付きのトレーに変えたのですが、いつの間にかシートを引き出してかみちぎっていて。一体どうやったのか……」

 心配したブリーダーが家に来てお散歩に連れ出すと、なんと桃くんは普通に歩いた。人を見て態度を変えるのか? 「私がナメられてるのかな」。お母さんはさらに落ち込んでいった。

「これまで育てた子たち、特にうちで生まれた女の子のダックスはとても穏やかで、私の言葉を理解してくれた。犬育てでこんなに困ったことは一度もなかった」

 ブリーダーはUGとは関係がないものの、桃くんをお迎えした際に渡された資料に「困ったらUGに相談を」と記されていた。改めて相談すると「月齢6カ月を過ぎると難しくなるので早いほうがいい。カウンセリングだけでも受けてみたら?」とアドバイスされた。

「迷う中、ネットで『ダックス、かむ』と検索したら、sippoのルークくんの記事にいきつきました。読んでみたら桃とまったく同じ! これはUGに行くしかないと、すぐにカウンセリングの予約を入れました」

 お父さんとお母さんは桃くんを連れ、中目黒を目指した。

ドーム型ベッドもトレーも桃くんのストレス発散の餌食に……(お母さん提供)

 後編につづく(9月30日公開予定) 

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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