パーティーカラーのトイプーを迎えたが 意思疎通ができずしつけどころじゃない

嵐を越えて出会った「運命の子」ポーちゃん(お母さん提供)

「犬がほしい」というまな娘の願いをかなえようと、何年も「運命の子」を探し続けた。出会いは突然に。念願のトイプードルの子犬は、しかし、嵐とともにやってきた爆風娘だった!? 

 UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の激アツ店長こと高橋信行さんは叫ぶ。

「子犬の時間は短い。手に負えなくなる前に、1年後にみんなで笑うために、迷わず動いて!」

(末尾に写真特集があります)

「運命の子かも!」

「今年の七夕も短冊には『ワンちゃんがほしい』って書くんだ」

 幼いころからそう言い続けてきた娘さんの願いをかなえてあげたいと、お母さんは4年ほど前から子犬を探していた。ブリーダーのサイトをのぞいてみたり、ペットショップで抱っこさせてもらったり。「でも、なかなか『この子!』という出会いがありませんでした」と振り返る。

 そんなある日、お父さんが「こんな子、見つけたんだけど」とスマホの画面を見せてきた。関西のトイプードルのブリーダーのサイトで、シルバーとホワイトの毛色が混ざる、いわゆるパーティーカラーの子犬が映っている。「かわいい!」。娘さんはすっかり射抜かれた様子。「何年も私が探していたのに、思いつきで検索した夫がすぐ見つけちゃうなんてちょっと悔しかったけど(笑)、でも確かにとても愛らしくて、私も『運命の子かも!』と」

 すぐに問い合わせして、翌日、家族は新幹線で一路関西を目指した。ところが、この日は荒天で、途中で新幹線が途中で止まってしまった。「6時間缶詰め状態で、結局、目的地までは行けないことが明らかに。日付が変わるころ手前の駅で下車し、その日は近くのホテルに泊まることになりました」とお父さん。

 次の日、なんとか現地にたどり着き、子犬と念願の対面を果たす。「とにかく元気で人懐っこく、私は顔から何からなめまわされました」。お母さんは出会った日のことを思い出し目を細める。対してお父さんは「結構甘がみがあったので、もしかしたらかむ子なのかもしれないなと感じていました」。

 とはいえ、何より娘さんが「すぐに連れて帰りたい!」と大喜びだったことから、即決。が、天気はまだ荒れたままで、もう1泊足止めに。翌日、天気が回復するとともに一家と子犬は東京への帰路についた。「新幹線でもクレートの中で静かにいてくれて。ホッとしました」とお母さん。

パーティーカラーが個性的でかわいい! (お母さん提供)

しつけどころじゃない

 嵐の中で家族に迎えた女の子の子犬は「ポー」と名付けられた。家にきた時点で月齢4カ月。ほえることはあまりなかったものの、お父さんが予測したとおりかみぐせがひどく、日ごとにエスカレート。

「私が歩くと足にかみつき傷だらけに。スカートなどヒラヒラしたものにもかみついて離さず、ぶら下がっていました」とお母さんは苦笑い。手はもちろん、体からよじ上ってきて耳にもガブっ! 娘さんの手には歯形が残るほどかみついた。お父さんは、「子犬ってこんなものなのかな、と。でも、今思えば僕は仕事で家を空けることも多く、そこまでかまれなかったので、気にならなかっただけかもしれません」。

 ポーちゃんをお迎えしたのが8月。まもなくお父さんの仕事が忙しくなり、娘さんは新学期が始まった。ポーちゃんのお世話はもちろん、最初が肝心のしつけもほとんどお母さんのワンオペに。

「インターネットでしつけのやり方を見てやってみようとしても、落ち着きがなくてまるで目が合わない。意思の疎通ができないので、しつけどころじゃなくて……。フリーにするとかまれるので、ケージの中で過ごさせる時間が長くなっていきました」。

 ポーちゃんにはそれがストレスなのかトイレトレーやケージをガジガジかみまくり、ボロボロに。当然、ケージから出せばそのストレスが爆発し、お母さんをかみまくる。

ガブガブ家族襲撃がエスカレートし、ケージで過ごす時間が増えていった(お母さん提供)

今すぐトレーニングした方がいい?

 ポーちゃんが来てわずか1週間。はじめての子犬育てに途方に暮れ、心身ともに疲れ果てたお母さんは、食事ものどを通らなくなっていた。さらにある夜、普段あまりほえないポーちゃんが、激しくほえたことがあった。

「ネットのしつけ法などを見ると、ほえたときにかまってしまうと、『ほえれば相手にしてもらえる』とさらに要求ぼえするようになるから無視する、と。でも、もしもこのままポーが毎晩ほえるようになったら、うちは集合住宅なのでご近所迷惑にもなってしまいます。どうしよう、どうしたらいいんだろう……と不安でいっぱいになり、その日から眠れなくなりました」

 食べられない、眠れない。お母さんは完全に育犬ノイローゼに陥っていた。

 子犬のしつけについて探していたころ、お母さんはUGの高橋店長のブログを目にしていた。「ポーはまもなく月齢5カ月。ブログには『トレーニングはなるべく早くしたほうがいい。できれば月齢6カ月までに』と書かれていて、カウンセリングをお願いするならすぐに行ったほうがいいのかと焦りました。でも一方で、店長のブログに出てくる子犬に比べたらポーはそこまでかみ犬でもないのかな、とも。家から近い犬の幼稚園に通えばいいか……とも思っていました」

 しかし、お母さんは自分が感じている以上に追い詰められていた。「妻がポロポロと涙を流しながら『やっぱりUGに行きたい』と訴えてきたのです。そこまで悩んでいたとは……」。ことの深刻さに気づいたお父さんはすぐに予約の電話を入れ、夫婦はポーちゃんを連れカウンセリングに。真夏の暑い日のことだった。

ストレスはトイレトレーをかみまくって発散!?トレーもケージもボロボロにするハカイダー(お母さん提供)

後編につづく(7月29日公開予定) 

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高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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