とーさん「え?なにこの展開」 脱走中の保護猫と探り当てた愛犬「福」がまさかのキス

俺の名前はヤン。陽気の陽と書いてヤンだ。よろしくな

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット作をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元保護猫の「とも」「もえ」と暮らしています。

保護した猫が家のなかで脱走

 前回までのお話。

 ベランダにやってくるハクビシン柄の野良子猫(推定6カ月)を無事保護し、去勢手術後自宅リビングに置いたケージに入れておいたところ、深夜にまさかの大脱走。家じゅうをさがしまくると、今は家を出た元娘の部屋にて発見。しかしカーテンレールの上から、今度は家具の裏側に逃げ込みもはや捕獲不能……。

 すでにとーさん、諦めモードで気がつけば深夜にひとりヘラヘラ笑うしかない状態であります。

「まあ、家のなかにはいるわけだし、よかったよかった」と自分を慰めつつ、さてどうしたものかなあと眠い頭でぼんやりと考えていると……。

「気長にいこうぜ」

 カツカツカツカツッ……。

 福の足音が!!! やばい……これは大変、この部屋に福が入ってガウガウやったらそれこそ当分ベッドの下から出てこなくなってしまいます。大急ぎでドアを閉める。

 間一髪……しかし、この元娘部屋、じつは今の住人は福なのです。だから、まあ、締め出しちゃうのは、ほんと福には申し訳ないんだけどしょうがない。できるだけ早く状況を打開しないとね。

 そこで、とにかくケージをリビングからこの部屋に移動して、ごはんやトイレがあるケージに自ら戻るのを待とう。追いかけ回すよりきっとそのほうがいいだろうと考えをまとめ、さっそくケージを大移動しました。

 ぜえ、ぜえ……年寄りにはきついぜ……とかなんとかぶつぶついいながらケージを運び込み、ドアを閉めてとーさんも退散。しばらくそっとこのままにひとりにしておくことにしました。留守番カメラだけはセットして様子をこっそり見守ります。気長にいこうぜ。

絵の裏からちょこんと顔を出す姿が愛らしい

 すると、目論見通り、ほどなくして、辺りを警戒しながらハクビシンちゃんはおずおずとベッドの下から出てくると、そのうちケージのなかへ。水を飲み、用をたし、ご飯も食べてリラックスした様子です。この調子ならなんとかなりそう。なんなら、もうこのまま家庭内野良として元気に育ってもらおうじゃないか。

MajiでKoiする5秒前?

 数時間後、部屋の様子を覗きにそっとドアを開けると、ハクビシンちゃんは、ささっとまたベッドの下へ。よいよい、少しずつ慣れていけばいいよ。

 とーさんは部屋の掃除でもしますからね。と、思った瞬間。

 あああああ!!!!やめてーーー。

 ドアの隙間から福が部屋の中に猛突進! 万事休す!!

 ぐわぐわと鼻を鳴らしながらすごい勢いでベッドの下を嗅ぎ回る福。おじさんのことはだませても、犬の嗅覚はごまかせない。すぐに特定班は居場所を探り当てる。

「やめなさーーーい!!!」あわてる俺……。

 すると、なんたることか、ベッドの下からハクビシンちゃんがきょとんとした顔で福の前に顔を出したのです。そして鼻と鼻でキス。いきなりのあいさつ。

 え??なに?この展開???ずっと前からお互いのこと好きだったの??

 MajiでKoiする5秒前?(いやもう何言ってるか意味わからん)。

 まさかの、ためらいながらもベッドの下から出てくると、くんくんと身体中を嗅ぎ回る福の前に無抵抗にごろりと体を投げ出して、なすがままのハクビシンちゃん。

 しかもですよ、今度はなんと福のあとについて、家の中をうろうろ歩き出したのですから……。新入り猫に先輩保護犬の福が我が家を案内する動画はとーさんのインスタグラムで公開されて190万回以上再生されました

福はいつも猫たちを見守ってくれています

 どうぶつって本当に不思議です。僕の浅はかな心配なんてなんのその。彼らは彼らのルールにしたがって、コミュニティをつくり共存関係を構築していきます。

 そういえば、ハクビシンちゃんがうちに来てからというもの、気になって気になってしょうがない福は、ずっとケージの前に陣取って動かず、ふたりはずっとお互いを意識し続けていたのよな。親子なのか親友なのか恋人なのか、そっと寄り添って眠る2匹の姿をずっと眺めながら感慨深いとーさんなのでした。

 そうそうハクビシンちゃんは、正式にとーさん一家の一員に。ベランダ時代からの奔放な振る舞い、陽気な性格から「陽(やん)」と名付けました。このときすでにその後もう一匹「陰」がやってくることを予見していたのかもしれません(笑)

(次回は7月20日公開予定です)

【前の回】家の敷地に現れた子猫を保護したとーさん 深夜、騒がしい物音に目覚めると…

小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

sippoのおすすめ企画

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!

この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。