家の敷地に現れた子猫を保護したとーさん 深夜、騒がしい物音に目覚めると…

おこってます。しゃーーーーっ。このあと見事な脱走を成し遂げるのです

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット作をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元保護猫の「とも」「もえ」と暮らしています。

 今年に入ってから、とーさんの家の敷地に再び子猫たちが現れるようになりました。前回からの続きです。

捕獲し動物病院へ

 がしゃん……

 捕獲機の扉が閉まる音がしても、ハクビシンちゃんはすぐには何が起きたのか把握できなかったようでした。なになに? 信頼してくれていた僕を見る瞳の奥に訴えかけるような光が見えたのは……気のせい?

 捕獲機に布をかけて視界を遮ると、ハクビシンちゃんはすぐにおとなしくなりました。すばやく移動して動物病院に連絡。午後から検査とオペをしてもらえることになりました。しばらく家のケージで様子をみてからという考え方もあると思うのですが、できれば過度なストレスを2度にわたって与えたくない……という気持ちもあって、僕の場合は病院と連絡をとっておいて、捕獲後すぐに直行しています。みなさんはどうしてるんですかね……。

 何度やっても、この時が一番つらいです。数カ月にわたり猫たちと築いた信頼。それを裏切るわけですから。寒くても、ひもじくても、体にメスを入れられることなく自由な生活を手に入れるほうが幸せなのかなあとか、やっぱり頭をよぎってしまうのです。

ケージにおさまった様子。おれをここからだせ

 無事、病院で手術も終わり、帰宅。用意しておいたケージに入ってもらいます。過去に猫たちを保護した時は、我が家の保護犬福と先住の猫たちのことも考えて離れた部屋に隔離していました。しかし、隔離してしまうと今度は出会わせるタイミングというか、慣らしていく時期の設定がむずかしくて、人馴れしにくくなってしまうのでは??という気もしていたので、今回はいったん、人も動物たちも出入りするリビングにケージを置いてみることにしました。これなら生活音にも慣れてくれるし、なにより先住たちの行動をみて人間を信頼してくれるのが早いのではないかと考えたのです。

それぞれの反応

 帰ってきたハクビシンちゃんは、しばらくは麻酔が残っているのかおっとりしていました。福はもう最初から興味津々で、ケージに首ったけ。いや、いや、そんな近くで、君みたいな巨大な犬が身を乗り出してたら子猫怖いから(涙)。でも、どーしても気になるみたいで、福はずーーっと子猫のことを眺めていました。

かぶりつくように福は子猫に夢中。いや、怖いからやめて

 2匹の猫たちは、興味あるのか、ないのか? 適度な距離で興味なさげに近づいてきて、すーっとケージの前を通り過ぎてみたり……反応はそれぞれでおもしろいものです。

事件が発生

 さて、そうして我が家のケージに収まってから2日目の夜のこと。深夜、ものすごく騒がしい物音で目が覚めました。家の中でなにか大運動会が始まっている予感……なんだなんだこの音は??

 ぼんやりしていた頭がすっきりしてくると、あああああ!!!!思わず声をだしてリビングにすっ飛んで行きました。

 やってもうた……。

 そうです。みごとケージは扉を開けられて(どうやって??)もぬけのから。ハクビシンちゃんはどこに……。もはやこの家のどこかに隠れてしまった猫を探すのは無理なのでは?? 

 一瞬で気持ちが萎えて諦めモードになりつつも、つぎつぎと部屋の扉をあけていくと、一番奥の部屋に気配が……。あたりをそっと見回すと、いました。小さな体を丸めて僕に気づかれないように物陰からのぞいているハクビシンちゃんの姿を確認。そーっと近づいていくと手を伸ばせば届きそうな距離まで……。しかし、ふっと気を抜いたその瞬間!!すごい勢いでジャンプ。窓の淵を駆け上がり、カーテンレールの上まで一瞬で逃げてしまったのです。なんという身体能力。「人間は素手では鶏にすら勝てない」と何かの本で読んだことがありましたが、まさに、子猫とてこのありさまです。

脱走……こんなところに……

 うーーん困った。どうやって捕まえようか。よく回っていない頭で、これだとひらめいたのは釣り用のタモ網。うまくいくかはわからないけど、まずはこれで逃げたところを空中キャッチしてみよう。いやいや、無理やろ。たぶん網を振り回した瞬間、家の中のものをガシャーンと壊して猫は逃げていくし、むちゃくちゃになるに決まってる。

 やれやれ、やっぱりもう諦めようか。家の中に野良猫がいても、まあそれはそれでいいかな。眠いせいもあって、なんかもうめちゃくちゃな思考で自分を納得させようとしたとーさんなのでした。

 しかし、このあと、びっくりするようなことが起きたのです。この2日間で、福がケージ越しにハクビシンちゃんとまさかの信頼関係を築いていたなんて……。

 ということでもっと書きたい気持ちがあふれてますが、すでにいつもより字数があふれてしまったのでまた次回。

 ではまた。

(次回は6月15日公開予定です)

【前の回】家の敷地に子猫たちが再来! 保護の計画を練るとーさん、すると1匹に変化が

小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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