飼い主も怖がるほどの強すぎるマルプー ありのままを受けいれて一緒に成長!
興奮して飛びつき、かみつき、お母さんの服にもお父さんの腕にも穴をあけまくる。まともにお散歩もできず、拾い食いではタバコの吸い殻を食べてしまい……。そんな困りごとだらけのマルプーの子犬と家の中で一緒にいることに苦痛を感じ「怖い」と、育犬ノイローゼに陥ってしまったお母さんを、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長はどう救ったのか?
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「純血種だろうとミックスだろうと、その子はその子。わが子をありのまま受け止めて!」
今年一ヤバい子犬!?
「フルコースですね。月齢4カ月でこれはすごい。今年来た子犬の中で一番ヤバいかもしれない」
カウンセリングでお父さん、お母さんの話を聞いた高橋店長の口からはそんな言葉が。前日、お散歩の途中でタバコの吸い殻を拾い食いし病院で吐かされ、むぎちゃんは普段よりは元気がなかったにもかかわらず、店長の目はごまかされなかった。
「体は小さいものの、強さダダもれ。頭も抜群にいいので手ごわいと思いました」
マルチーズとトイプードルのミックス犬のマルプーは、一般的には「マルチーズの甘えん坊で朗らかさと、トイプードルの人懐っこい性格を持ち合わせる」とされている。しかし「うちに来るような超ハイパーなマルプーは、人に合わせるという感じがなく、主体性、つまり我が強いケースが多い。ガンコでわがまま。育てやすいか?と言えば、その性質を理解した上でないとなかなか厳しいかもしれません」と解説する。
むぎちゃんはこれまでUGに来たマルプーの中でも、強さが飛び抜けていた。また、カウンセリングを受けた時点でまもなく月齢5カ月。
「1週間では厳しいかもしれない」と、1カ月単位で預かってくれる別のトレーナーのところへ行くことを店長から提案されたお母さんは「UGでもダメか……」とガックリ。しかし群れに入れてみると、周りの犬たちに対して怒ってはいたものの、遊びたそうなそぶりも見せたという。店長はお父さんとお母さんにこう告げた。
「いけそうな気がします。やってみますか!」
社会化お泊まりスタート
やるなら一刻も早くと、翌日から社会化お泊まりがスタート。最初こそ戸惑っていたむぎちゃんだったが、「群れの真ん中を陣取ってました(笑)。本当に怖かったら隅っこにいきます」と店長。お父さん、お母さんとの家族関係も含めて「似てる」と感じたポメプーのルルちゃんがたまたまアフターケアでやってくると、一緒に遊び始めた。しかし、調子に乗ってからみすぎるとルル先輩から厳しい指導が入り、「え?」と固まるむぎちゃん。犬同士でルールや加減、ガマンを教えあうのがUGの流儀。まさにその洗礼を受けたのだ。
UGから送られてくる画像や動画は、激しいものの、「むぎがとにかく楽しそうで。あんな笑顔初めて見た、というぐらいイキイキ。行ってよかった! と胸をなで下ろしました」とお母さん。しかし、こう続ける。
「ホッとはしたけれど、不安がなくなったわけでなくて……。むぎは本当に変わるんだろうか、私はどう変わればいいんだろうか? みんなで一緒にごはん前にするフセ、マテもうまくできないと聞き、帰ってきたら自分たちでできるんだろうか? と」
カウンセリングの際、疲れ切ったお母さんの様子に、「このままだとつぶれてしまう。それも預かりを決めた理由の一つでした」と店長は振り返る。
懸案のお散歩は、店長から「このお泊まりでは普通に歩けるようになるのは無理かもしれない」と告げられたという。おうちに帰る前々日の時点でまだその状態で、さらに1週間の延長も考えた。しかし前日、店長からメールが。動画のむぎちゃんは、遊んだあと落ち着いてまったりと過ごしている。
「ギリギリ間に合ったかもしれません!」
お迎えに行くと、むぎちゃんはこれまで見たこともないような笑顔でお父さん、お母さんを出迎えてくれた。「やり切った、みたいなスッキリした顔をしていましたね」とお父さんもニッコリ。フセ、マテも上手にこなし、話しているうちにお父さんの腕の中でコテっと寝落ちしてしまったという。「こんな姿を見るのも初めてで、感激しました」
再び荒れ出すむぎちゃん、でも…
家に帰ってくると、飛びつきやかみつきは激減。「手をかまれることもほとんどなくなりました」とお父さん。お散歩もサクサクで「歩けてる!」と感動したという。しかし、お泊まり終了から1カ月ほど経ち、月齢半年を迎えたころから、自我が目覚めたのかむぎちゃんは再び荒れ出した。
お散歩でも「歩きたくありません」と途中で動かなくなる、人にも犬にも何か気に入らないことがあるとほえる……。「また悩み始めてしまった」とお母さん。しかし店長は「予想していた」と話し、こう語る。
「アフターケアに来ても、むぎちゃんは気に入らない相手のことをぶっ飛ばしたりほえたりしていました。完全にほえなくさせるのは無理。なぜなら、むぎちゃんは強いから。『むぎをお利口にしなければ』ではなく『それがむぎだよね』と、お母さんが納得し受け入れる。そこが着地点だと思っていました」
不安になったお母さんからは、次々と相談や不安を訴えるメールが届く。店長は一つひとつ答えながら、強めの叱咤激励!「カウンセリング前後のような心身ともにボロボロのときは控えますが、飼い主さんにそろそろ本気で意識を変えてもらわないと、というタイミングでは、ビシビシ! いきます(笑)」と店長。
お散歩が荒れている動画を送ると、「むぎちゃんのペースに合わさないで」「『一生懸命やってます』とおっしゃっていますが甘やかしてますねー。甘やかさない!」と即レス。「はっきり、厳しく言われて、ようやく目が覚めた気分でした」と、お母さんも徐々に混乱から脱却していった。
犬も人も成長する
こうして行きつ戻りつを繰り返しながら、お母さんはどんどん笑顔を取り戻していく。「むぎのことがかわいい、と心から思えるようになりました」。もちろん、むぎちゃんは相変わらず元気いっぱい! だって、それがむぎちゃんだから。
店長の叱咤激励に加え、もう一つお母さんを支え、救ってくれた存在が。同じ時期に社会化お泊まりに参加していた子犬たちのお母さんたちだ。「インスタグラムを通じてつながり、一度も会ったことはないけれど、ハイパー犬の親同士、とても仲良くなったのです」とお母さん。なんと今年の秋には、地方に住んでいる同期ワンコ一家と旅行にも出かけたという。楽しかった旅に思いをはせながら、お母さんはうれしそうにこう語る。
「むぎがうちの子になってくれたおかげで、私たちの世界が驚くほど広がっています」
そんなお母さんの姿に、「一番変わったのは、妻」とお父さん。「『ひざの上でおとなしく抱っこされ、なでなでされる。子犬とはそういうもの』という先入観が強くて、そうじゃないむぎが受け入れられなかったのだと思います。でも、今はハイパーなむぎをいとおしそうに眺めています」。そう話すお父さんは、以前趣味だったカメラをまた始めたという。
「被写体はむぎだけですが(笑)」
なぜかあまりミックス犬から好かれないという店長だが、むぎちゃんは店長ラブ。そんなモテモテぶりがまんざらでもなさそうな笑顔で店長はこう語る。
「去年ヤバさNo.1だったむぎちゃんも、後輩の相手をするなど本当に成長しました。それ以上に成長したのは、お母さんかもしれません。『常識』にとらわれたり、周りの子と比較したりすることなく、『むぎは、むぎ』と理解して受け入れ、やることをちゃんとやった。冷静かつ楽観的なお父さんの支えも大きかった」
そして、今年を締めるひとこと。
「犬だけでなく、犬と暮らすことで人も成長できる。だから犬って最高だ!」
これからUGにはどんなハイパーわんこたちと悩める家族がやってくるのだろう? 物語は続く。
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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