手がかからないと思ったミニチュアシュナウザー スイッチ入ると大暴れで生傷絶えず 

お散歩拒否シュナ。でも家に帰ると暴走するマフィンくん(お母さん提供)

「子犬ってこんなに手がかからないの?」。お迎えしたころはおとなしかったミニチュアシュナウザーの子犬が、「あること」をきっかけに興奮のスイッチが入り、家族を困らせることに……。UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長の元に駆け込んだ。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。

「普通の子なら大丈夫なことが、強い子、ハイパーな子には逆効果なこともある!」

こんなに手がかからない子犬っているんだ!?

「ミニチュアシュナウザー、かわいいよね!」

 いつか犬を迎えたいと思っていたお父さんとお母さんの意見がピタッと合った。しかし、あちこちペットショップをのぞいてみても、なかなかシュナには出会えない。

 2年前のクリスマス。ふと足を運んだショップにシュナの子犬が! 「ほかの子たちがわちゃわちゃ遊んでいるのを横目に、ベッドを独り占めして爆睡していました」とお父さん。お母さんは「抱っこさせてもらったら、腕の中にスッポリ。暴れたりかんだりもなく、本当におとなしい子でした」

 いったん店を後にしたが、「やっぱりあの子にしよう!」とその日のうちにとんぼ返り。3日後、シュナの男の子は月齢2カ月でお家にやってきた。お父さん、お母さんとも食べることが大好き。食べ物でかわいい名前を探し、「マフィン」と命名した。

 ケージの中ではほえることもなく、おとなしく過ごせたマフィンくん。「子犬ってこんなに手がかからないんだ、と拍子抜けするほどでした」とお父さん。こう付け足す。「最初のうちは」

お父さんお母さんが一目ぼれするのも納得のかわいさ。でもすぐに「怪獣ぶり」をはっきすることに(お母さん提供)

遊びのつもりが…

 きっかけは「引っ張りっこ遊び」だった。ペットショップから「引っ張りっこして遊ぶといいですよ」と言われたのでやってみたところ、突然マフィンくんにスイッチが入ったのだ。お母さんはこう振り返る。

「引っ張りっこするおもちゃではなく、それを持っている私たちの手を狙うように。そこから、飛びつき、かみつきが始まってしまったのです」

走り回って暴れて、最後はお母さんに飛びつく!(お母さん提供)

 どんどんエスカレートし、マフィンくんはお父さんやお母さんの顔、首、耳にまでかみ付くように。お父さんはYouTubeで見たしつけ法を試してみる。問題行動をしたときには大声を出して驚かせたり、のどの奥に指を突っ込んだりするやり方だった。ところが、マフィンくんには逆効果に。

「かまれたときに思い切って口の中に指を入れたら、マフィンが逆上してしまって……。効果がないどころか、体罰的なことが僕自身しんどかったし、マフィンがかわいそうだし、1回でやめてしまいました」

散歩では震えるのに家では暴れる

 ワクチンが終わり、お散歩デビュー。しかし、マフィンくんは頑として歩かなかった。「その場から動かず置物みたいだった(笑)」とお父さん。なんとか歩かせようとすると、お母さんの足にへばりついて「ボク、怖い!」とまるで助けを求めているようなマフィンくん。

「正直、首輪とリードをつけて外に出れば、犬は歩くものだと思っていました。歩かないどころか動かないなんて……」とお父さん。お母さんは、マフィンくんが怖がりなのでは? と心配したという。

「お散歩に行こうと抱っこするとガタガタと震えるのです。あまりにもひどいときは、体調が悪いのかもと慌てて帰りました。エレベーターを待ち切れず、震えるマフィンを抱えて階段をダッシュで駆け上ったのですが、部屋に戻った途端、何事もなかったかのように暴れ始め……。一体なんなの!? って」。飛びつきや噛みつきはどんどんひどくなり、お母さんの手や腕には生傷が絶えず、精神的に追い詰められていった。

 もうひとつお父さんとお母さんを不安にさせたことがある。マフィンくんの「無表情」だ。

「食いしん坊でごはんやおやつのときには喜ぶのですが、それ以外は暴れていても表情がなかった。それがとても気になっていました」

口を真一文字で無表情(お母さん提供)

 悩み、ネットを検索する中で、お母さんは高橋店長のブログに行き着く。尻尾をかみちぎってしまった柴犬の記事にショックを受け、「その子やご家族の大変さに比べたら、マフィンはそれほどじゃない? と、UGに行くべきかちゅうちょしてしまいました」。しかし、すでにノイローゼ気味だったお母さんを見ていたお父さんは、即行動に移す。「ブログでもSNSでも『なるべく早く連れてきて』と書かれていた店長の言葉に、今すぐ行こう、すぐに店長に見てもらおう! と」

 月齢5カ月直前、UGで初のカウンセリングを受ける。緊張するお父さんとお母さん。ところが、UGの犬の群れに放たれたマフィンくんは、喜々として遊び始めた。そして、これまで見せたことがないようなキラキラの笑顔に。お父さんとお母さんは驚き、思わず声を上げた。

「わ、笑った!」

 後編へつづく(1月30日公開予定)

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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