バブルス君(左)が病気になる前までいつも2匹は一緒。ミルクちゃんはいつもバブルス君の後について遊んでいた(徹也さん提供)
バブルス君(左)が病気になる前までいつも2匹は一緒。ミルクちゃんはいつもバブルス君の後について遊んでいた(徹也さん提供)

犬も人間も死の重さは同じ 深い喪失感と向きあっても「二度と飼いたくない」はない

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2021年4月にボストンテリアのバブルス君(享年13歳)、同年9月にドゴアルヘンティーノのミルクちゃん(享年12歳)のみとりをした飼い主の徹也さん。パピーの頃から飼っていたバブルス君と6歳でお迎えした元保護犬のミルクちゃんについてお話をお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

先住犬と元保護犬の濃密な6年間

――2匹の犬をみとられたとのことですが、2匹を飼った経緯は?

 ボストンテリアのバブルスはパピーの時に迎え入れ、そのバブルスが7歳のときに、保護団体を通して保護犬のドゴアルヘンティーノのミルクが来ました。ミルクは、ブリーダーの元で繫殖犬として小さなケージの中に閉じ込められて飼育されていたそうで、暴力も受けていたと聞きました。

――バブルス君とミルクちゃんの暮らしはいかがでしたか?

 ミルクは警戒心がとても強く、生活音を怖がり、人にも犬にもおびえている状態で、迎え入れてすぐはバブルスでも一緒にいられませんでした。柵を隔てて生活させていたのですが、1週間くらいしたとき、いきなりミルクからバブルスに近づいたので、それを機に柵をなくしたところ仲良くなって、2匹いつもぴったりくっつくようになりました。

 それからはバブルスがいろいろ教えてあげていましたね。でもミルクは過去の記憶からか人間の男性の声はずっと怖がっていました。ハウスやおしっこなどはきちんとしてくれたし、喜ぶ表現はしていたけれど、最期まで自分には懐いてくれなかったと思います。なでることは許してくれましたが、抱きしめたりすることはできませんでした。バブルスがいたからこそ、ミルクは新しい環境になじめたのだと思います。

いつでもどこでも一緒の2匹。プロサーファーである徹也さんと一緒に海へ行くこともしばしば(徹也さん提供)

バブルス君の死後、わずか5カ月でミルクちゃんも…

――2匹を続けて亡くされたとお聞きしました。

 そうですね。バブルスが2021年の4月に亡くなり、そのわずか5カ月後にミルクが亡くなりました。

――2匹はなぜ亡くなったのでしょうか?

 バブルスは脳腫瘍(しゅよう)で亡くなりました。普通に生活をしていたのですが、なんの兆候もなく、食事を終えて10分くらいしたら、いきなりてんかん発作を起こしたんです。過去に一度もそのようなことはなかったので、すぐにかかりつけの動物病院へ連れて行きました。

 注射を打ってもらったらけいれんは止まったのですが原因はわからないとのことで、翌日大きな動物病院へ連れて行きました。CT、MR、レントゲン、血液などすべての検査をした結果、脳腫瘍だと判明したのですが、そのときすでに脳の3分の2に腫瘍があり、脳を圧迫している状態でした。

 治療方法は抗がん剤か放射線しかないと。「それらの治療は犬も飼い主も大変、経済的にも負担が大きい、症例も少ないうえ治るかどうか保証はできないからよく考えてください」と言われましたね。

「すぐに安楽死を」という状態ではなかったので、そこから介護生活が始まりました。てんかんの薬を飲ませ始めましたが、1日に数回のてんかん発作、歩行困難、はいかいなどもあり、落ち着かせるためにずっと抱っこしていたり。そんな介護生活を3カ月経て亡くなりました。

――ミルクちゃんはなぜ?

 老衰だったのだと思います。バブルスが亡くなったことで活気がなくなり、徐々に弱っていきました。ある日、昼間は普通にしていてなんともなかったのに、3時間後に帰宅したら寝ている状態で冷たくなっていました。誰にも何も迷惑をかけず、静かにミルクらしく亡くなっていました。

てんかん発作を起こした後のバブルス君を気づかっているミルクちゃん(徹也さん提供)

飼った年数は関係ない、亡くした悲しみは同じ

――パピーのころから飼っていたバブルスくんと元保護犬のミルクちゃんの死に違いはありますか?

 ないですね。悲しみの最高レベルが10だとしたら、2匹とも10です。飼っていた期間は違うし、迎い入れた経緯も違いますが悲しみは同じです。ただ思い出の数が違うだけです。

――徹也さんにとって「ペットの死に向き合う」とはどういうことだと考えますか?

 人間の死と向き合うのと同じだと思います。過去に2匹のラブラドル・レトリバー、一昨年はバブルス、ミルクをみとって思うのですが、犬ってペットの中でも人間に一番近い存在だと思うんですよね。人間と共存し、人間のために働いていますよね。なので、犬の死は人間と同等に重いものです。

 人間でも犬でも死は死。ただ「悲しいから二度と飼いたくない」とは言いません。自分の年齢を考えて、人に責任を押し付けずに飼える間は、犬とともに暮らしたいですし、これからも何度でも死に向き合っていくと思います。

バブルス君との最後に外出したときの1枚(徹也さん提供)

〈取材を終えて〉
 2匹の死に際について話されたとき、しっかりと向き合いながらも、言葉の端々から悲しみが垣間見えました。また、2匹が元気だったときの話は、まるで宝物を懐かしむようで、徹也さんの犬たちへの深い愛情が伝わってくる取材でした。

【前の回】手術をせずに快適に過ごせるように 愛情いっぱいに向き合ってきた愛犬のみとり

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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